船上の戦い
先程より距離が近付いたからか、今回は一矢達にも光の壁が海賊船を覆うのがハッキリと見えた。
防御魔法は爆風は防げても、そこから生じる波までは防げなかった。
一矢達からでも船が大きく揺れているのが分かる。
「もうっ! 中々強い防御壁ッスね~」
クレアは地団駄を踏む。
「いえ、十分です! 奴等は体制を崩している! もう一斉射、構え! ……放てーッ!」
今度も防御壁が現れるがいびつな形で小さく、全ての矢を防ぐ事は出来なかった。
海賊も弓矢で応じるが警備隊の盾で弾かれる。
海賊船はもうすぐそこまで近付いて来た。
「一矢殿達は中へ! 奴等が乗り込んで来るぞ! 容赦するなッ!」
一矢達は指示通り船内へ入り、ドアに取り付けられた小さな窓から様子を伺う。
すれ違い様に海賊達がロープを投げて、乗り込もうとする。
だが隊員達によって次々と射落とされていく。
海賊船は一矢達の後ろを回って追いかけてくる形になった。
「速度落とせ! 接舷し、白兵戦に持ち込む!」
海賊船がどんどん近付いて来た時、また見張りが叫んだ。
「たっ、隊長! 魔族です! 奴等の中に魔族が居ます!」
海賊船はもうすぐ乗り込める位置まで並ぼうとしている。
人間の海賊達が並ぶ向こう側、一回り大きな魔族の姿がベティーナにも見えた。
流線型の顔に丸く大きな目、逆に小さい口からは鋭い歯が覗いており、全身鱗で覆われた体には鎖帷子を巻いている。
半魚人だ。
『魔族も含めてこの人数、ヤバイ!』
だがベティーナには今から一矢に助力を求める時間はない。
海賊達は直ぐに乗り込んで来る。
「私に続け!」
せめて自分で活路を開こうとベティーナは隊員達の前に出る。
船が隣接すると先ずは人間の海賊達が乗り込んできた。
だが、ベティーナの一振りで一気に四人が吹っ飛んだ。
他の隊員も弓矢を槍に持ち換えて応戦する。
だが今度は四体の魔族も乗り込んできた。
半魚人達は鎖付きの大きな鉄球を振り回し、投げてきた。
ベティーナは巧みに槍で受け流すと半魚人の一体を一突きで仕留める。
隊員達の中にも鉄球を巧くかわす者もいれば、盾で防ごうとして吹き飛ばされる者もいた。
魔族によって突破口を開かれると、海賊達の勢いが増す。
それでも隊員達は人間相手に後れを取らない。
だが魔族が居る分、押され気味だ。
ベティーナも魔族に狙いを絞って戦うが、魔族も次々と乗り込んでくる。
「クッ! 流石に魔族の数が多い!」
気が付けばベティーナは魔族に囲まれていた。
小さな窓から様子を伺っていた一矢が、魔族が混じっているのにようやく気が付いた。
「ヤバい! 海賊の中に魔族も居るぞ! ……俺も行くから二人はココで待っててくれ」
「わたしも一緒に戦うッス!」
クレアの申し出に一矢は考え込む。
「……爆発も火も無しだぞ?」
「えぇ? で、でも海賊船になら良いッスよね?」
「う~ん……やっぱり待ってて。エイミー、クレアの事頼むぞ」
一矢は船外に続く扉を開けると飛び出していった。
「自分だけズルいッス! わたしも活躍したいのに!」
「遊びじゃないんだから! 魔術師は接近戦は苦手でしょ?」
「そ、それは……」
「じゃあ今回は我慢しなさい」
「え~ん! 防御魔法の奴が居なければMVP確実だったッスのに! ……見付けたら花火見たいに吹き飛ばしてやるッス」
『……本当にやりそう』
地団駄を踏むクレアを見て、エイミーはそう思った。




