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異世界平定奇譚   作者: 新樹 百佑
第四章 船出
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船上の戦い

 先程より距離が近付いたからか、今回は一矢達にも光の壁が海賊船を覆うのがハッキリと見えた。


 防御魔法は爆風は防げても、そこから生じる波までは防げなかった。


 一矢達からでも船が大きく揺れているのが分かる。


「もうっ! 中々強い防御壁ッスね~」


 クレアは地団駄を踏む。


「いえ、十分です! 奴等は体制を崩している! もう一斉射、構え! ……放てーッ!」


 今度も防御壁が現れるがいびつな形で小さく、全ての矢を防ぐ事は出来なかった。


 海賊も弓矢で応じるが警備隊の盾で弾かれる。


 海賊船はもうすぐそこまで近付いて来た。


「一矢殿達は中へ! 奴等が乗り込んで来るぞ! 容赦するなッ!」


 一矢達は指示通り船内へ入り、ドアに取り付けられた小さな窓から様子を伺う。


 すれ違い様に海賊達がロープを投げて、乗り込もうとする。


 だが隊員達によって次々と射落とされていく。


 海賊船は一矢達の後ろを回って追いかけてくる形になった。


「速度落とせ! 接舷し、白兵戦に持ち込む!」


 海賊船がどんどん近付いて来た時、また見張りが叫んだ。


「たっ、隊長! 魔族です! 奴等の中に魔族が居ます!」


 海賊船はもうすぐ乗り込める位置まで並ぼうとしている。


 人間の海賊達が並ぶ向こう側、一回り大きな魔族の姿がベティーナにも見えた。


 流線型の顔に丸く大きな目、逆に小さい口からは鋭い歯が覗いており、全身鱗で覆われた体には鎖帷子を巻いている。


 半魚人だ。


『魔族も含めてこの人数、ヤバイ!』


 だがベティーナには今から一矢に助力を求める時間はない。


 海賊達は直ぐに乗り込んで来る。


「私に続け!」


 せめて自分で活路を開こうとベティーナは隊員達の前に出る。


 船が隣接すると先ずは人間の海賊達が乗り込んできた。


 だが、ベティーナの一振りで一気に四人が吹っ飛んだ。


 他の隊員も弓矢を槍に持ち換えて応戦する。


 だが今度は四体の魔族も乗り込んできた。


 半魚人達は鎖付きの大きな鉄球を振り回し、投げてきた。


 ベティーナは巧みに槍で受け流すと半魚人の一体を一突きで仕留める。


 隊員達の中にも鉄球を巧くかわす者もいれば、盾で防ごうとして吹き飛ばされる者もいた。


 魔族によって突破口を開かれると、海賊達の勢いが増す。


 それでも隊員達は人間相手に後れを取らない。


 だが魔族が居る分、押され気味だ。


 ベティーナも魔族に狙いを絞って戦うが、魔族も次々と乗り込んでくる。


「クッ! 流石に魔族の数が多い!」


 気が付けばベティーナは魔族に囲まれていた。




 小さな窓から様子を伺っていた一矢が、魔族が混じっているのにようやく気が付いた。


「ヤバい! 海賊の中に魔族も居るぞ! ……俺も行くから二人はココで待っててくれ」


「わたしも一緒に戦うッス!」


 クレアの申し出に一矢は考え込む。


「……爆発も火も無しだぞ?」


「えぇ? で、でも海賊船になら良いッスよね?」


「う~ん……やっぱり待ってて。エイミー、クレアの事頼むぞ」


 一矢は船外に続く扉を開けると飛び出していった。


「自分だけズルいッス! わたしも活躍したいのに!」


「遊びじゃないんだから! 魔術師は接近戦は苦手でしょ?」


「そ、それは……」


「じゃあ今回は我慢しなさい」


「え~ん! 防御魔法の奴が居なければMVP確実だったッスのに! ……見付けたら花火見たいに吹き飛ばしてやるッス」


『……本当にやりそう』


 地団駄を踏むクレアを見て、エイミーはそう思った。

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