魔族? 海賊?
『良かった、エイミーは元気そうだ。後はベティだな』
エイミーを見送りながら一矢はそう思った。
『ベティとも話してみるか。……部屋に居るのかな?』
一矢がベティーナを探しに行こうとした時、突然甲板が慌ただしくなった。
副隊長と一緒にベティーナも甲板へ出てくる。
「隊長! 海賊船です!」
「海賊船だと? 魔族のか?」
「……いえっ! 人間が乗っています!」
「クソッ、間が悪い時に。迎撃体制をとれ!」
ベティーナは隊員達に指示を飛ばす。
装備を整えた隊員達が続々とやってくる。隊員達と一緒にエイミーとクレアもやって来た。
「何? 海賊ッ? 魔族じゃなくて?」
「イヤ、人間らしい」
驚くエイミーに一矢が答える。
徐々に海賊船との距離が縮まってくると、ハッキリ船の輪郭も見えてきた。
『……海賊船と言うよりも幽霊船だな』
ボロボロのその船を見て、一矢はそう思った。
隊員達が弓を持って整列すると、ベティーナは一矢達の所にやって来る。
「先ずは弓矢の一斉射撃を行います。その後、クレア殿に魔法の援護をお願いしたい!」
「ヤッターーッ! もう魔法を使いたくて使いたくて。良いッスよね? 海賊ならやッちゃって良いんスよね?」
クレアは表情を輝かせ、杖を持った腕をまくる。
そんなクレアにベティーナは真剣な眼差しで頷いた。
「存分に。その後、白兵戦になるかと思います。その時は船内へと避難して下さい。一矢殿達はクレア殿の護衛をお願いします」
「なんだ、俺もカッコ良いとこ見せたかったのに」
不満そうな一矢にベティーナは微笑む。
「人間相手なら我々だけで十分です。一矢殿は魔族と戦う時にご助力お願いします」
「分かった。それじゃあ中から愛の熱視線、送ってるぜ!」
「あぁ……はい。有難うございます」
「チョッ! キモイですって一矢さん! ヤバイッス。わたし今ので萎えてきたッス」
ベティーナは一矢に苦笑いを見せ、クレアは杖にもたれ掛かる。
ベティーナは隊員達に振り返る時には真剣な顔に戻っていた。
「良し、全員準備は良いか!」
「ハッ!」
ベティーナは海賊船との距離を見定める。
「構え!」
ベティーナは右手を挙げ、隊員達は弓を構える。甲板に緊張感が走った。
「あぁ、早く。早くブッ飛ばしたいッス」
その中でクレアはウズウズしている。
「放て!」
ベティーナの右手が振り落とされると、矢は放たれた。沢山の矢が海賊船に向かって飛んでいく。
海賊船までまだ遠く、どうなったか一矢には分からない。
「隊長! 矢が弾かれました! 防御魔法です!」
見張り台から隊員が声をあげる。
「防御魔法……フフフッ。腕がなるッスね」
クレアが前に進み出ようとした時、再度見張りが叫んだ。
「矢が来ます!」
「防御姿勢!」
ベティーナがクレアを庇うように盾を構えた。
一矢とエイミーも、近くの隊員が盾で庇ってくれた。
一矢達が戸惑っていると盾に金属がぶつかり合う音が聞こえ、甲板に何本もの矢が刺さった。
『そうか。こちらの弓矢が届くと言うことは、向こうの弓矢も届くと言う事か』
接近戦しか知らない一矢は完全に油断していた。
「次の矢が来るまで少し時間があります。その間にクレア殿、お願いします!」
「お任せッス!」
クレアは杖を放り投げて両手をかざす。
「杖は? 杖は使わないの?」
「杖なんて飾りなんス!」
そうエイミーに言うとクレアは両手を海賊船に向ける。
「ブッ飛べーーーッ!」
クレアの両手から閃光が走る。
閃光は海賊船に向かって飛んでいく。
少しズレはしたが海賊船近くで爆発した。




