海へ出ちゃいました
次の日、一矢達は港へ集まった。
「あれ? 水着の人居ないッスね?」
フリル付きの黒いビキニ姿でクレアが辺りを見回す。
「だから言ったじゃない! 海は海でも違うって!」
「えぇ~、でも一矢さんも水着で良いって言いましたよ?」
二人は一矢の方を見る。
一矢はクレアの水着姿を見て鼻の下を伸ばしている。
そんな一矢にエイミーは呆れた。
「そりゃ変態だからね」
そこへ警備隊が到着した。
ベティーナが一矢達の元へとやって来る。
「皆さん、ご協力ありがとうございます。……ところで、クレア殿は何故水着なのでしょうか?」
「母に海では水着で過ごすと聞いていたんスけど」
「そう……だったんですね。海は初めてですか?」
「そうなんです! 一矢さんも『間違ってない、むしろアリだ』って言ってたのに」
一矢はエイミーとベティーナから非難の視線を浴びる。
「イヤ、良いものは良い! なぁ?」
一矢はベティーナの後ろに控えている警備隊員に同意を求める。
ベティーナが振り返ると隊員達は一斉に視線をそらした。
「クソッ、お前等は漢じゃないのか!」
「変態はあんただけで十分よ。クレアもいい加減に何か羽織りなさい」
「……ハ~イ」
一矢達はベティーナに連れられ船へと乗り込んだ。
船は帆船の二本マストトップスル・スクーナー。
一矢に一部屋、エイミーとクレアに一部屋割り与えられた。
ここから王都に一番近い港町まで約一週間。
初日、二日目と一矢達の船旅は順調に進み、同行している警備隊員達とも一矢達は仲良くなった。
だがエイミーとベティーナが話している所は未だに誰も見ていない。
エイミーに対するベティーナと隊員達の温度差を見ると、ベティーナはエイミーが魔族である事を秘密にしてくれているようだった。
そんなベティーナの気遣いは嬉しいが、出来ればベティーナとエイミーにも仲直りして欲しかった。
『このままでは、ハーレムが内部分裂してしまう……』
一矢が甲板でどうしたものかと思案していると、エイミーが声をかけてきた。
「ねぇ。今チョット良い?」
「勿論良いぞ! 俺は女性の誘いは断らないからな」
「誘ってるわけじゃないわよ。 ……まぁ、良いわ。それより本当に争いを止められると思うの?」
一矢は肩をすくめて見せる。
「さぁ? 俺も戦争止めるのは初めてだから。出たとこ勝負かな?」
「はぁ。やっぱりついて来たのは失敗だったかしら」
エイミーは一矢の隣で溜め息をつく。
「もう乗り込んだ船だろ? それに誰かがやらないと」
「でも何であんたなの? 世のため人のためってタイプじゃないでしょ?」
一矢はニヤリと笑うと、前髪を掻き上げる。
「そりゃあ、人間と魔族の確執? そう言うのを目の当たりにしたら黙ってられないだろ」
「わたしとベティーナの事? 別に珍しくもないと思うけど」
「そうなのか?」
「やっぱりあんたって他の人と違うわね」
「まぁ、元々違う世界に居たからかな?」
「それも何か本当っぽくなってきたわね」
「なんだよ、信じてなかったのか?」
不貞腐れる一矢をエイミーは笑う。
「あははっ、そう簡単に信じるわけ無いじゃん」
「確かに、俺も最初は驚いたよ。でも来たからには俺のやりたいようにやるさ」
「それで争いを止めてやるってわけ?」
「それはついでさ。目的はハーレムを作る事! 人間も魔族も関係無い、俺のハーレムを作る!」
一矢は拳を力強く握り、遠くを見ながら言う。
「あんたが変態だって忘れるところだったわ」
蔑むような口調ではあったが、エイミーは思わず吹き出した。
「まったく、あんたの頭ん中を一度見てみたいわね」
「頭だけじゃなく、何でも見せてやるぞ! 二人っきりの時にな」
「結構。変な物見せられる前にもう行くわね」
エイミーは微笑みながら一矢の側を離れる。
「後で見たいって言っても知らんからな〜」
一矢の言葉に吹き出しながら、エイミーは船内へと戻って行った。




