海賊退治に行っちゃいますか
ベティーナは警備隊に戻って来ると、廊下で副隊長が声をかけてきた。
「隊長、いかがでしたか?」
「な、何の事だ?」
「いえ、街中を暴走している馬車を追ったと聞いていましたが」
「あぁ、その事か。その件は厳重注意に留めておいた」
「……そうですか」
一矢とクレアが本部を物凄いスピードで飛び出して行ったのを副隊長は部下から聞いていた。
だからベティーナの態度が妙に余所余所しく感じた。
『一矢殿達ではなかったのか?』
取り敢えず副隊長は報告を続ける。
「もう一つ、奴隷商人の件ですがとうとう捕まえました! やはりまだ街で足留めされており、リザードマンが逃げ込んだ屋敷に滞在していたようです」
「リザードマン? もしかしてサーカスから逃げた奴か?」
「そうなんです! 黒幕は商人協会のナンバーツーで、魔族が逃げ込まなければ踏み込めなかったでしょう。皮肉なもんですね」
「そうだな。……ところで見付けた魔族はどうした?」
「勿論、全て処分しました」
「……そうか。私もそうしたよ」
「はぁ……。相手は魔族ですから。流石にサーカス団からも苦情は来ないと思いますよ」
『〈可哀想だと思わないの〉か……』
「連れていた奴隷については、何人かの護衛を付けて村まで送る予定です。ですので人員を調整をさせて頂きます」
「任せるよ」
「海の魔族退治は中央本部に依頼しようと思います」
ベティーナはハッとした。
「いや、今回は私が出よう」
ベティーナの言葉に副隊長は驚く。
「隊長自らですか? それは危険です!」
「私では力不足か?」
副隊長は大袈裟に手を振り、否定する。
「と、とんでもない! 我が隊で隊長に勝る者は居ませんよ!」
問題なのは東方警備隊から船を出すこと。
ベティーナの他に適した人材が乏しい。
中央本部から討伐隊を出してもらった方が良い。
「なら良いな? それに私の槍術も森の中よりは役に立つハズだ」
迷う副隊長をベティーナは押し切る。
「……分かりました。それでは私が村人の護衛部隊と海上調査部隊の人員を調整致します」
「うむ、私に三名心当たりがある。三名分は空けといてくれ」
「まさか、その三名と言うのは……」
「あぁ、また一矢殿達にご助力をお願いしようと思う」
「一矢殿達も一緒なら安心ですね。了解しました。そのように調整致します」
ベティーナは足早に去る副隊長を見送り、自分の部屋へと戻った。
椅子に座ると深い溜め息をついた。
『これでもう少し考える時間が出来る』
海上の魔族討伐に一矢達も参加して貰い、そのまま王都へ向かうか、この街に戻るか決めれば良い。
ベティーナは窓の外を眺める。
ふと、馬車で過ごした時の事を思い出した。
『あの時は本当に楽しかった』
窓に映るベティーナはまだ鎧姿のままだった。
『しかし本当に魔族と仲良く出来るのだろうか。今まで散々魔族と戦ってきたのに』




