10話
「いい感じのスピードだ。これなら。」
俺は突進中のイノシシのモンスターの正面に結界を作り出した。それだけでイノシシのモンスターは倒せるだろう。
結界に衝突したイノシシのモンスターのところまで移動する。
「あれ?」
まだイノシシのモンスターは倒せていなかった様で、イノシシのモンスターは呼吸をしているが動いていない。
イノシシのモンスターは気絶状態の様だ。
もうこれならあとは簡単にイノシシのモンスターを倒せるだろう。
「一応固定しておくか。」
気絶から覚醒して起き上がって来ない様に結界で全身を拘束する。この時に頭部の一部だけ空間を空けて置くのを忘れない。
あとは空いた頭部の空間を思い切り錫杖を振り下ろしてイノシシのモンスターの頭を殴りまくる。
「起きたか。」
何度か叩いていたら痛みで気絶していたイノシシのモンスターが目を覚ましてしまった。
それでもイノシシのモンスターは暴れられるほどの元気はもうない様だ。
そのまま数回錫杖で全力で殴ってイノシシのモンスターは完全に動かなくなる。
「呼吸もしてない。死んだね。」
イノシシのモンスターが完全に呼吸を止めたのを確認した俺は周囲を確認する。
周りからイノシシのモンスターが追加で来ている様子はないし、それよりも周りを見回した時にある物を発見した。
イノシシのモンスターがドロップアイテムに変わったら、さっき見つけた物のところに向かおうと思う。
「あ、肉が落ちた。」
ドロップアイテムの中にイノシシのモンスターの肉がドロップしていた。
重さが2キログラムもあってなかなかの重さでダンジョン探索の邪魔になるがお金になるので回収はきちんとする。
イノシシのモンスターからドロップした肉と魔石の回収を済ませると、俺は先ほど発見した物の元へと移動を開始する。
「ここまで甘い匂いがするんだね。」
目的の物の元まで到着した俺は木に実っている桃に似ている果物を手に取って匂いを嗅いだ。
匂いも桃と酷似していてかなり美味しそうだ。
木には7個ほどの桃似の果実が実っており、俺は全ての果実の回収を行なっていく。
手の伸びる範囲に生えている果実をまず取ってリュックに入れるが、問題は木の上の方に実っている果実だ。
「俺が乗っても壊れない強度だとこれくらいか?」
結界で階段を作っていく。
一番下の階段の上に乗って強度を確かめてから階段を登って木の上の果実を一つ残らず回収する。
「ついでにここで1つ食べていくかな。美味しそうだし。」
甘い匂いに我慢も出来なくなってきた俺は果実の1つを食べる部分の薄皮を剥いて一口食べた。
口の中に瑞々しい果汁が広がっていく。口の中は桃の甘い匂いと味が広がった。
「うっま!!」
一口、また一口と止まることなく口を動かして最後には種の周りをしゃぶってしまうほど美味しかった。
「も、もう一個食べようかな?」
隣に下ろしたリュックを見ながらもう一つ食べようか悩んでしまうが……。
「はぁ、こんな時に……。」
もう一つ果物を食べようかと悩んでいる俺のところにやって来ようとしているイノシシのモンスターの姿を確認した。
それも1匹や2匹ではない。最低でも4匹はそれぞれ別の方向からイノシシのモンスターがやって来ているのが木の高さまで作った結界の上だから見て取れる。
「面倒くさい奴らだな。それにしてもなんでこんなに集まって来たんだ?」
まだイノシシのモンスターと俺との距離はあるが錫杖に魔力を集めながら考える。
「音じゃないだろうし……まさか匂い?あの甘い桃みたいな匂いでやって来ているのか?」
猪の嗅覚はすごいと言う話をテレビかどこかで聞いたことがあるがイノシシのモンスターもそうなのだろうか。
とりあえずもうそろそろイノシシのモンスターの1匹が結界を作れる範囲に入ってきたのが確認出来た。
突進してこちらに向かって来ているイノシシのモンスターの正面に結界を作り出す。
結界とイノシシのモンスターが衝突した音が響く中で続けてまた別の方向から来ているイノシシのモンスターの正面に結界を作った。
それを続けて2回行なって4匹のイノシシのモンスターを倒せたのだが、まだこちらに向かって来ているイノシシのモンスターが居るのが見えた。
追加で3匹のイノシシのモンスターが果物の木を目指して向かって来た。
「まだ追加が来ると考えて置いた方がいいか?」
追加でやって来たイノシシのモンスターの1匹を結界に衝突さて仕留め、他の2匹の正面にも結界を作ろうとしている時に更に追加で1匹のイノシシのモンスターが追加されたのを見て余力を残して置いた方がいいと判断した。
それからのことだが最終的にイノシシのモンスターを14匹も結界の上から倒すことになった。
事前にこのダンジョンを調べた中ではこんな果物を食べるとイノシシのモンスターがたくさん引き寄せられるなんて話はなかったはず。
もしかしたら俺の様に果物をその場で食べた討伐者たちは大量に押し寄せて来るイノシシのモンスターの群れに呑まれて死んでしまったから情報がなかったなんて事なのかも?
他にあるとすればこのイノシシのモンスターが現れるダンジョンで活動している討伐者たちのみで伝えられている話にあるのかもしれないな。
「まあとりあえずもうイノシシのモンスターが来ないみたいだし、ドロップアイテムの回収をやって行こうかな。」
距離が離れている場所もあるし、まずは近場のところから回っていこう。
イノシシのモンスターを倒した場所には結界が残っているから見分けるのは簡単だ。
俺は一つずつ結界のある場所を回ってイノシシのモンスターのドロップアイテムを回収して行った。
毛皮が3つ、肉が2つが今回の魔石以外のイノシシのモンスターからドロップしたアイテムだ。
「もう今日は帰るかね。」
背中に背負っているリュックも重くなったし、それよりも連続でのイノシシのモンスターを倒すことになったのには精神的にも疲れてしまったから。
俺はなるべく早く帰ろうとダンジョンの出口まで休まずに移動したのだが、この日はダンジョンに出るまでも大変だった。
やっぱり桃似の果実から発生している匂いにもイノシシのモンスターは反応している様で、そこそこの距離があるのに俺のことを発見するイノシシのモンスターの数が帰りは多かった。
でも、この日に採取した果実を売った時の値段は高かった。1つ2万円での売却だ。
それだけでも満足したが今回は帰りも含めてかなりのイノシシのモンスターを倒してドロップアイテムを回収したことで中学生としたらかなりの大金を得ることになるのだった。




