メルメスからの護衛依頼?
「む、無駄に疲れた……」
冒険者ギルドにてあらぬ誤解を受けたが、何とか勘違いだと理解してもらう事が出来た。(まぁギルドに居た周りの冒険者達には誤解されたままだけど…)
別に誤解をされたままでも犯罪者として捕まる訳じゃないので放置でもよかったんだけど、流石に性犯罪者予備軍を見るような目で見られるのは心情的に辛いし、今後のガトラー業で支障が出かねないので、冒険者ギルドの方々には是非とも先程の件は誤解だと流布して欲しいものだ。
「ふふふ。ご苦労様ですコナー様」
「まぁ【アイテムボックス】に人を招く事はそういった誤解も受けやすいからな。今後は気を付ける事だ」
そして、今はギルドからメルメスの屋敷に戻って来てちょうど執務室にいたメルメスとバルトファルトに帰還とギルドで話した内容を報告に来ていた。
「…しかし、特殊個体ですか……次々と魔物関係で問題が発生はしていましたが、ついにですか…」
「あまり詳しくは知らないですが、やっぱり特殊個体の魔物は危険なんですか?」
「危険……というより、厄介と言った方が適切かもしれんな」
俺の質問に答えたのはフルフェイスの兜をかぶったままのバルトファルト。
「バルトファルトさんはもしかして30年前の特殊個体の事知ってるんですか?」
「文献と資料に載っている部分に関してはな。お前は特殊個体とはどういった魔物だと聞いた?」
どういった魔物?そういえば特殊個体と言われて、何となく見た目がデカい!とか真っ黒で他に類を見ない魔物!みたいな認識でフォルンの話を聞いていたが、どうやらバルトファルトの話し方的に特殊個体と呼ばれる魔物には何かしらの特徴があるらしい。
「見た目や普通の魔物には見られない行動をしているのはもちろんとして、特殊個体と呼ばれる魔物は総じて特殊な“能力”を有している」
「能力…」
あれか?もしや人間の様にスキルの様な力を使える魔物という事なのか?
「例に出すなら30年前のサル型の特殊個体…資料には【魔猿】と名称された魔物には大地を隆起させる能力を持っていた。……山を一つ生み出すほどのな」
「山ッ!?」
いやいやいやいや。山を作りだすなんてスキルとかそんなレベルじゃないぞ?
寧ろよく昔の人間達はそんな化け物を討伐する事が出来たな。
「……聞いた話だと討伐するのに数千人の犠牲が出たって…」
「特殊個体を討伐しようと騎士団が隊列を作って攻め入った所を地割れで一網打尽にされたと聞いたな。その失敗を学んで少数精鋭で討伐したらしい」
そうか、最初から少数精鋭で戦っていれば数千人の犠牲は無かった可能性があるが、強力な魔物相手に出し惜しみする意味はないのだし、当時の騎士団の作戦は何も間違ってはいない。
ただ、特殊個体故の【能力】を加味すると騎士団の『騎士団総出で一気に討伐する』という行動は自殺行為に早変わりする。
だからバルトファルトは『危険では無く厄介』と表現したのだろう。
能力がわからねば対処の仕方もわからず、下手に多くの人間を討伐に向かわせれば逆効果の可能性もあるからだ。
「元々【魔の森】攻略に消極的だった軍部ですが、特殊個体の発生で余計に騎士団の出兵を渋るでしょうね……せめてその特殊個体の能力だけでも解れば軍部の説得に使えるかしら?……ブツブツ…」
メルメスは様々な理由で未だ動かない軍部に対しての不満を漏らすが、俺はその軍部に関してや騎士団のしがらみなどはよくわからないのでメルメスの言葉の半分の理解出来ない。
だが、メルメスは独り言を暫く続けていると、突然『よし』と何か思いついたのかすぐさま紙とペンを取り出し何かを書き始める。
「コナー様は近日中にまた【ブラウの街】に向かわれるのでしたよね?」
「え?はい。特殊個体の黒い獣には注意が必要だけど、俺は【アイテムボックス】で黒い獣を安全にやり過ごせるから出来るだけ王都と【ブラウの街】を行き来して情報交換と冒険者達の移動のお手伝いをするつもりです。…それに特殊個体がそんな危険な存在だって知らなかったので、急いで黒い獣の事を伝えに行きたいんです」
俺が行かなければ黒い獣の所為で冒険者達は王都へ帰って来れないかもしれないし、何より【ブラウの街】には魔物の侵入を防ぐ頑丈な外壁があって大丈夫だと思っていたが、山を一つ生み出すような化け物であれば頑丈な外壁だろうとペラペラの紙同然。
知らせに行った所であまり変わらないかもしれないけれど、動かないよりはましだ。
その思いをメルメスに伝えると、少しだけ俯いた後にバッと顔を上げ口を開く。
「―――ではコナー様。護衛依頼を一つお受けしてくれませんか?」
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「いやぁ素晴らしきかな我が人生!この目で特殊個体を目の当たりにする機会があるとは!!実に行幸ッッッ!!!我が一生に一片の悔いなしッ!!!」
「……………」
「……………」
「………えぇと……こちらが護衛対象の」
「我は国立魔道研究所の数ある研究所の一つ。魔物生態研究所に所属するエルデン・ビフォクス・ペンテゴンなりッ!!!!此度は麗しのフィッシュナート嬢からのご提案にてコナー殿の護衛を受ける事になった!!我は貴族だが気にせずエル君と呼びたまえ!」
えぇ………えぇぇぇぇ…?
……メルメスと話をした翌日、屋敷の前に連れて来られた俺の前には、まるで暴走機関車の様な男と無理やり握手をさせられていた。
あれ?可笑しいな…?昨日までは結構シリアスな感じだったはずなのに…。
「ハーハッハッハッハッ!!!うむッ!今日はいい天気じゃぁーないかッ!!」
…昨日のメルメスの護衛依頼…断っておけばよかったかも……
そんな後悔の念も隣から聞こえてくる『ハーハッハッハッ!!』というエルデンの笑い声に消し飛ばされるのであった。




