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エルデン・ビフォクス・ペンテゴン









「なるほどなるほど?この中ならば魔物の侵入を拒む事が出来、我らの安全を確保しながら魔物の観察を行えるという事であるな?……素晴らしいッ!!」



 今回、メルメスにお願いされたのは護衛依頼…特殊個体が発見された場所までこのエルデンという白衣を男を連れて行くというモノだ。


 エルデンは王都に住むかなり高位の貴族の出らしいが、上に4人の兄を持つ五男坊で後継者争いに巻き込まれたくないと小さい頃に家を出て研究者の道を歩みだした変わり者…と呼ばれているらしい。



「なにッ!?別の部屋にスライムだと…?見たい!!ぜひ我にも見せてくれ!…いや、もういっそ住まわせてくれないか!?」



「すいません、そういったサービスはしてないんですよ」




 ……そして、その研究者としての道はどうやらエルデンにとって天職だったらしく、こと魔物研究においては第一人者と呼ばれる程の人物なのだとか。


 というのにも理由はある。



「くぅ……ならばせめて直に見させてくれ!研究所では弱い魔物やすでに死体になった物しか見れず、満足に私の【鑑定】を試せていないのだッ!!」



 そう、実はこの人。異世界ファンタジー物語で一番有名と言ってもいいスキル、【鑑定】スキル所持者らしい。


 この世界において【鑑定】スキルの扱いはかなり希少な物で、10年に1人【鑑定】所持者が生まれればいい方と言われる程数は少ないとの事。



(意外だよなぁ…普通5歳までの小さい子なんてなんでも興味深々に両親に聞きたがる探求心の塊だと思っていたけど……余程知識欲が強くないと発現しないのかな?)



 この世のスキルはひとえに、生まれてから5歳までの間で考えた事や行った行動を元にスキルを授けられる可能性がある。


 もちろん絶対という訳では無いのだが、それでも5歳未満の生活を考えれば『あ、この子がこのスキルを授かったのは納得出来るかも』と、納得の声が世間一般的には多いのは事実。



 なので、個人的に幼少期の『なぜなぜ期』によって【鑑定】や知識系のスキルが多いと勝手に思っていたが……そういえば【ブルスの街】でも王都でも見た事も聞いた事も無かったな。




 閑話休題(話を戻そう)




 そんな珍しい【鑑定】スキルを持つエルデンなのだが、実はこの世界において【鑑定】のスキルはそれほど重宝されていない。


 何故なら人にはそれぞれ、自身のステータスを視認できる力を持っているから。



 初見の魔物や動植物と遭遇した際には毒の有無や人にとって有益な存在かを判別するのに役には立つのだが、ぶっちゃけて言ってしまえば動植物に関しては今までの歴史の中で大体の物が【鑑定】済みの物ばかり。



 10年に1人の割合のスキルだとしても、10年前にはすでに【鑑定】を持った人間が存在したのだ。


 であれば初見の動植物の【鑑定】はその時代で行われている為、もうどの植物が有益でどの動物が有害なのかなど、資料として残っているのだ。



 なので、【鑑定】のスキルは希少ではあるのだが、現代ではあまり役に立たないスキルとして見られがちなのだとか。



 だが例外はある。



「我の【鑑定】は魔物特化のスキルなのだッ!!弱い魔物だろうと隠れた特性を見極め、仮に死体になっていようと生前のステータスぐらいは看破できる!…だが、魔物が生きている状況では無ければ見通せないステータスも存在するのだ!!だから出来るだけ生きた魔物を見たいというのに研究所の者達は『獰猛な魔物を生きたまま捕らえるなど無理』だの『死体でも生前のステータスがわかるのなら十分役に立つだろう?』と腑抜けた事を言う……我は生きた魔物を鑑定し()たいのだッ!!」



 動植物は歴史の中で殆どのモノを【鑑定】しつくした。


 だが、魔物に関しては未だ知られざる部分が多々存在している。



 何故なら【鑑定】持ちは己で戦う術など一切持ち合わせていない為、誰も魔物の出る場所に出向かなかったから。



 故にエルデンの言う“魔物特化”の【鑑定】がこの時代において、エルデン自身を『魔物研究においての第一人者』と呼ばれる所以なのだ。



 普通の【鑑定】がどんな物かは知らないが、少なくとも魔物の死体を【鑑定】して生前のステータスを見出す事は出来ないらしいし、弱い魔物だろうとステータス以外の特性?を見抜く力は他の【鑑定】スキル持ちでも持ち合わせていなかったらしい。



 まぁその所為で魔物以外を【鑑定】しても精々名前ぐらいしかわからないとの事なので、本当に魔物を【鑑定】する事に特化しているみたいだけど。




「ちょ、わ、わかりましたから!≪ゲート≫!ほら、ここからスライムを観察できるように小さい≪ゲート≫の小窓を作りましたからここから覗いて見てください!小窓は生き物全部通り抜けれない設定にしてるので中に入ろうとしないでくださいよ!」



 メルメスに預けれらたエルデンに【アイテムボックス】の中を案内していたが、途中でスライムを監禁している事を話したらもうそこにしか目が行かなくなったようで、俺の案内そっちのけでスライムを探し回る始末。


 このままだと暴れだしそうだったので、エルデンに用意した≪シングル≫の部屋に一時的にスライムの監禁している≪ゴミ箱≫へ≪ゲート≫を繋ぎ、『詳細設定』でスライムも人間も通れない様に設定する。



「えと、それじゃ俺は王都を出発するので、ここで数時間過ごしてもらいますからね?いいですか?」



「うむッ!!うむッ!!!構わぬ構わぬ!!スライムは研究所でも何度か見ているが、捕まえて連れてくる関係上弱っている場合が多いが、このスライムは―――」



「……はぁ……」



 スライムに夢中なエルデンは放って置いても数時間……いや、下手をすれば数日でもあの小窓からスライムを観察し続けるな。と判断した俺は、妙に疲れた心に鞭を打ちながら【アイテムボックス】の外に出る。



「――あら?もういいのかしら」



「あ、メルメス……まだ残ってくれてたんですね。すいません、時間が掛かって」



「いいのよ、ルイちゃんとも話したかったから」



 どうやらエルデンを【アイテムボックス】の中に案内している間にルイとメルメスは何かをお話していたらしい。



「あ、ご主人!!」



「お待たせルイ、いい子で待ってた?」



 メルメスと顔を見合わせていたルイがこちらを向くと、満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。


 なんだ?いい事でもあったのかな?



「ご主人!メルメス様に聞いたんだけど男の人って朝一番に起きた時だけ元気になる現象があるって聞いたけど本当!?」



「―――メルメスさんッ!!??」



 一体貴女は何を話してるんですかッ!!





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 ルイの質問に『み、みんな朝一番は元気な物だろう?』と苦し紛れの答えで逃げた俺は、再び【ブラウの街】に向かおうと王都玄関口の広場まで来ていた。



「……ってそうだ、また忘れる所だった…≪ゲート≫……フォルン、起きて。また俺達【ブラウの街】に行くけどフォルンは王都に残る?」



 本来フォルンは先日のオレンスに頼まれた護衛依頼が完了した時点で俺達に付いてくる意味はない。


 本当なら昨日のうちに王都で別れればよかったのだが、【アイテムボックス】にフォルンが居る事を忘れていた俺の過失だ。


 出来れば特殊個体という化け物に会いに行くのだから少しでも手札は多い方がいいのでフォルンに付いてきてもらう方が安心はするが、フォルンにも予定があるかもしれないのだ。無理強いはダメだろう。



『……うぇ…?…やぁぁ……まだ寝るぅぅ……』



「いや、予定とか無いのか?ここを出たら多分向こうの【魔の森】攻略が終わるまで王都に帰って来れないぞ?アーデリアさんとか心配しないか?」



『……んー……多分大丈夫……私が居なかったらその分ギルドで仕事出来るって喜ぶ……から……すぴー……』



「そうなの?……ん?それってフォルンがいたらフォルンの世話で仕事が進まないって事…?」



 あれ?もしかして俺ってアーデリアからお荷物を渡されたのか…?いや、俺なら【アイテムボックス】があってフォルンを“おてて魔法”という利用法もあるから有効活用できると信頼して預けたんだろう……そう思っておこうッ!



「ま、まぁわかったよ……さて、と……これで3度目だ。次に王都に戻る時は全部問題が解決してるといいけど」



 3度目の正直…という訳じゃないけど、出来る事なら大きな被害が出る前に問題解決したいものだと、軽くため息を吐きながら、すでに見慣れ始めた王都の門を潜り抜け【ブラウの街】へ向けて出発するのだった。






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