レベル10
――冒険者ギルドへ冒険者達を送り届けルイと食事を済ませた後、俺達は馬を預けている馬小屋の近くにて【アイテムボックス】を展開し、≪自室≫の中で寛いでいた。
「はぁぁ~……食ったなぁ」
「お腹いっぱい…ご主人見てみて!オレの腹めっちゃポッコリしてる!」
“ほらッ”と勢いよく服を捲るルイのお腹は見事に大きく膨れており、ルイの細い身体がより目立つ。
「……こら、女の子がそんな風に服を捲るんじゃないぞ?……でも満足してるようで良かったよ」
【エココ村】ではかなり質素な生活をしていた所為もあってルイの身体はやせ細っているので、出来るだけきちんとした食事を与えたい。
身体の汚れはルイの万能石鹼で綺麗にはなったが、やせ細った身体を元の戻すのはどうしても時間が掛かってしまう。
「さて、腹も膨れた事だし、お風呂を入れてスッキリ爽快……と行く前に少し今日の反省と復習をしておこうか」
「お風呂!……ん?反省と…復習?」
お風呂というワードにルイが目を輝かせて立ち上がるが、続いた俺の言葉に?を浮かべる。
…一応道中で他の人達と一緒にシャンプーはしているはずだが、それでもお湯に浸かるお風呂はルイにとって別腹なのだろう。
「昨日今日とオレンスさん達と冒険者達30人を運んだ訳だけど、何が足りてて何が足りなかったのか。それを鑑みて、今後どんな感じでガトラーをしていくかを考えたいんだ」
本当は今日オレンス達を王都に送った後、その夜に反省会を開こうと思っていたが【魔の森】やらのゴタゴタで出来ずにいたので、今やってしまおうと思いついたんだ。
「部屋数が足りないとか、部屋が狭いなんて言う俺のスキルレベルをどうにかしないといけない問題は置いておいて、お金や努力で解決出来そうな問題は積極的に直したいんだ。ルイは今日1日冒険者達の相手をして何か思う所は無かった?」
「思う所?」
「うん。もしくは冒険者達が何か『此処がこうだったら良かった』とか『これがあればもっと良かった』とかって意見を言ってる冒険者はいなかった?」
「んー?……そういえば『部屋が広すぎて落ち着かない』って言うのは聞いたかも」
おぉ…まさか“部屋が狭い”では無く、“部屋が広い”で苦情が入るとは…まぁ確かに≪ダブル≫の部屋は家具を置いた状態でも数十人は余裕で入れるだけの広さはあるので、広くて落ち着かないという意見は納得っちゃ納得かも?
「うーん……最悪≪ダブル≫は裕福層用のVIPルームにして、冒険者達には≪シングル≫を割り振った方がいいのかな?その場合はベットを2段ベットを2つ用意しておけば4人で使えるし」
「広いって言ってたの2人で使ってた≪シングル≫の方の人だよ?」
「そっち!?そっちで広いって言われるのは想定外すぎるんだけど」
≪シングル≫以上に狭くするなんて考えた事も無かった…前世じゃカプセルホテルの様に寝る所だけ用意する施設もあったが、俺の【アイテムボックス】でそれだけ小さい空間を作れるのか…?
仮に作れたとしてもそんな狭い空間に6時間とかそれ以上の時間を過ごすのはかなりの苦痛じゃないか?前世の様娯楽の物は殆ど無いし、携帯だってない状態でただひたすら寝る事しか出来ない状態で6時間……俺は無理だな。
「寝るだけしか出来ない部屋ってのは流石にきつくないか?」
「うーん……夜の眠い時間に移動するならアリ…かなぁ?」
「―――寝る為だけの部屋…そんなの天国と呼ばずになんて呼ぶの」
と、いきなり俺達の会話に入り込んできた寝ぼけ娘のフォルン(ちなみにずっと≪自室≫のルイのベットで寝ていた)
「…おはようフォルン。確かにフォルンには天国みたいな部屋かもね……でも世の中にフォルンみたいな人間なんて殆ど………いや、いるのか?」
世の中は広いというし、もしかすればこんなだらけ切った堕落娘の様な人間も探せば他にいるのではないか?と僅かな可能性を考慮する。
「なんか失礼な事考えられてる気がする……まぁいいけど」
「……まぁそもそも作れるかわからないんだし、試しに出来るかの確認をしようか?“ステータスオープン”……って、お!?」
物は試しと≪シングル≫5×5の部屋を更に分割出来ないかを試そうとステータスを開くと待ちに待った情報が俺の目に映り込んでくる。
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【名前】 コナー
【年齢】 15歳
【スキル】 アイテムボックス:Lv10
【SP】 26/28
★アイテムボックス★
【ルーム操作】【詳細設定】
≪自室≫ 10×10
【フォルン♀】【ルイ♀】【コナー♂】【その他▼】
≪メルメス≫ 10×10
【その他▼】
≪シングル≫5×5
【その他▼】
≪シングル≫5×5
【その他▼】
≪シングル≫5×5
【その他▼】
≪シングル≫5×5
【その他▼】
≪シングル≫5×5
【その他▼】
≪シングル≫5×5
【その他▼】
≪ダブル≫10×10
【その他▼】
≪ダブル≫10×10
【その他▼】
≪ダブル≫10×10
【その他▼】
≪ダブル≫ 10×10
【その他▼】
≪トイレ≫5×5
【その他▼】
≪水場≫5×5
【その他▼】
≪ゴミ箱≫10×10
【その他▼】
≪ルーム10≫10×10
【装備】
≪頭≫ :無し
≪胴体≫ :普通のシャツ
≪腕≫ :無し
≪足≫ :普通のズボン
≪武器≫ :無し
≪アクセサリー≫:無し
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「レベルが上がった!!しかもスキルの機能が増えてる!」
「おぉ!おめでとうご主人!」
「おぉ~おめっとさ~ん」
俺の喜びの声に2人とも祝福の声をくれる。
俺の予想だともう少し先に…なんだったら【ブルスの街】に戻ってからレベルが上がるんじゃないかと思っていたので、かなりの速さでレベルが上がってくれた。
『物を入れた状態で長距離』移動するというのが俺のスキルの経験値取得方だと思っていたが、これほど一気に経験値が入ってくるのなら“無機物の物<人間”の方が俺のスキルは経験値が多く入るのかもしれない。
「どんな事出来るようになったのご主人?」
「えと…【詳細設定】…お?」
何が出来るのかと【詳細設定】というワードを口に出すと、目の前の空間にステータスウインドウと似た薄透明の画面がいきなり現れ、何やら色々と書かれているのがわかる。
「え、ステータスみたいなの出て来た!」
「へぇ?私達にも見えるタイプなんて聞いた事ないね?」
「あれ?2人ともこの画面が見えてるの?」
この世界でステータス画面は自分1人にしか視認できないものとされているので、似た見た目のこの画面もステータス画面と同じく他の人には見えない物かと思ったが、どうやら他の2人も見えているようだ。
「えーと…何々?『空調温度』、『室内照度』……へぇ?もしかしてこれ、私達も弄れる感じ?」
「『模様替え』『入室管理』…『呼出ボタン』?どういう意味なんだこれ?」
ざっと【詳細設定】の画面に出ている項目は全部で6個。
『空調温度』部屋の温度を変更出来る。
『室内照度』部屋の明るさを変えられる。(なお通常時以上の明るさには出来ないっぽい)
『模様替え』部屋の家具を自由に動かしたり、仕切りの壁を生み出せる?っぽい。
『入室管理』その部屋に入る物や人物を制限出来る。
『呼出ボタン』押せば俺の脳内に『ピコーン』と連絡が来る。
『管理者権限』俺のみが設定出来る機能で、この上記5つの設定を他者にどこまで弄れるようにするのかを変えられるようだ。
「おぉぉぉ!!!壁出来た!ベットも画面を操作するだけで簡単に移動しちゃうよご主人!!」
「ほぉん?この『入室管理』で設定すれば≪ゲート≫を開いてても設定した人間しか中に入って来れないってことね?」
「ちょッ!フォルン!何度も何度も『呼出ボタン』押さないで!?頭の中でずっと『ピコーンピコーン』煩くて集中できない!」
物珍しいスキルの機能に興奮しているルイとフォルンは俺が出した【詳細設定】を弄り回しながらキャッキャッと遊び回す。
どうやら【詳細設定】の画面は幾つでも出す事は出来るようだし、俺が離れていても【アイテムボックス】内であれば消える事は無さそう。
ひとまず、フォルンが『呼出ボタン』連打で煩いので、『管理者権限』で一旦フォルンの操作を一切受け付けなくする設定をする。
「あ!操作できなくなったんだけどー?」
「あー煩かった…これ連打されると結構煩いよ。音量を下げたり出来ないのかな?」
「『呼出ボタン』の下に設定出来る所あったから最大音量にしてみた」
「おいこら」
通りでかなり煩い訳だ…。
「まぁ色々と優良な機能なのはわかったし、これならさっきルイの言ってた『広すぎ』って問題も解決出来そうだね」
「この『模様替え』だよねご主人?壁で部屋を狭くすれば問題ないもんね!」
「うん、それに部屋を仕切れば相部屋になった人達も個別の空間を作る事は出来るし、男女混合の冒険者パーティーとかが来たら着替えの為の仕切りに使えるしね」
はっきり言ってこの『模様替え』はかなり有能だ。
これさえ使えば先程の相部屋になった『ソロのユリとユウ&ユイの2姉妹』の3人だって部屋を仕切ればお互いに干渉せずに過ごす事だって出来たはずなんだ。
…まぁ結果的には何故か3人は仲良くなることが出来たみたいだけど。
それに、軽く試したがこの『模様替え』、家具を他の部屋に移す事も可能らしい。
≪自室≫に置いてある大きなベットを手を使わずに≪メルメス≫の部屋に瞬間移動させる事が出来たので、一度大きな家具を【アイテムボックス】に入れてしまえば配置や移動は自由自在。
何気にお風呂で苦労していた樽の水を湯船に移す作業もこれを使えばほぼ一瞬で終わらせる事が出来る。
「あ、後【室内照度】!これもご主人が寝る時便利だよね!」
「確かに、これがあれば寝る時暗くできるから俺は助かるな…」
これなら今後は常に【アイテムボックス】泊でもいい気がして来たかも?どこか旅行先で有名な宿やリゾートホテルみたいな場所はそっちで宿泊するかもだけど。
「よし!これなら次冒険者達を王都に送る際にはもっと快適に出来るね……レベルアップで部屋も一つ増えたし、明日から部屋の内装とか『模様替え』を使って整えて行こうか!今日はもうそろそろ遅いし、お風呂入って寝よう」
「「お風呂ッ!!」」
ずっと【詳細設定】を弄っていた2人もお風呂の誘惑には勝てないようで、半透明の【詳細設定】の板を宙に放り投げる。(ちなみに浮くので少し投げ出された方向に進んでから宙で静止する)
「フォルンには悪いけど、またお湯にするの手伝ってね」
「まかせんしゃい!お風呂の為なら多少の苦労は引き受けよう」
「ルイは着替えとか用意しておいてね」
「はーい!」
そんなこんなで、今日一日の疲れを癒す為にお風呂の準備を進める俺達だった。
「んお?どしたんコナー?ほら入ろ?」
「ご主人どうしたの?いつも一緒に入ってるじゃん?早く早くー!」
なお、お風呂はフォルンとルイに強引に手を引かれ、3人一緒にお風呂を入る事になった俺は、これがこの世界の普通(?)なのだと己に言い聞かせつつ、色々と反応しない様に心を無にしていたのは余談である。




