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異世界での思惑2

反王党派が一枚岩でないとするならば、理由は何か。


アヅマはしばらく考えていた。


それはやはり、この10年の内乱で世界の消耗が激しいことが原因だろう。

民衆は、救いを求めている。


問題を解決できない王に、失望している。



ムルヒは地球にまで使者を差し向け、アヅマを殺そうとした。

時空転移装置はいまだ地球とつながっていることも確認するために。


ムルヒは統治者になり替わろうとしている。


後継者のいない王は、その力を他の血族に譲るしかない。


新たに統治者となり、世界を救う。

新世界をひっさげて。




「侵略はさせない……」



では、自分は内戦を終わらせて何ができるというのだろう。

契約の内容は、内戦終結と移住計画の撤回。

内戦を終わらせることはできても、世界を救うことはできない。



「……俺も子供だな」



後についてくるユーキには聞こえないように、アヅマはそっとつぶやいた。








4日目。

昼。


キクカにはおそらくそれくらいだろうという事しかわからない。


緑に覆われた城。


サラへは木製の椅子に腰かけ、鼻歌を歌いながら爪の手入れをしている。


「あの」

「なあに?」

「あたし、これからどうなるんでしょうか」


拘束されているわけではない。

ただ、冷たい石の床に座らされているだけである。


「ここの王子、あなたの王子様を倒しに行ってるの」

「……王都に」

「そ、王子様が勝手に結んでしまった契約を履行するためにね」


サラへの声には、状況を楽しんでいるような音色がある。


「もし、ここの王子が戻らなかった場合、あなたは私たちの最終交渉手段になるわ」


5日間、逃げ切るという壮大な鬼ごっこ。

自分がその契約の楔にされたことは理解している。


「王子様は、あなたを守ってくれるかしら?」


人質、ということか。

キクカはうつむいた。

もし自分が殺されたら、契約はどうなってしまうのだろう。


「あの、サラへさんは水属の人なんですよね?」

「そうね。カルバ様から少し話は聞いたけど、あなた大地属との干渉を遮られているみたいね」

「……はい。そうらしいです」

「じゃぁ、王子様と会話できないでどうやってここまで一緒にいられたの?」

「え?えっと……?」


よくわからなかったが、契約の本人だし、日本人?だし、気にしてはいなかった。


「むしろ、あれよね。水属との言語認識は通常通りできるように設定されているのかしら?」

「契約の事はよくわかりません。大地と水の干渉がどうとかも」

「そうなの?統治者の血統は、ここの家もそうだけど、大地属しかなれないの。だから、私の家なんて、中枢で権力を握ることはできるけれど、統治者にはどうしてもなれないのよ」

「統治者って、王様ですよね。王様って、何するんですか」

「言ってしまえば、いるだけでもいい存在ね」

「え」

「でも、いないと世界のバランスは崩れてしまうしなぜか悪いことばかり起こるらしいわ。それは私も歴史でしか知らない」

「……サラへさんは、なぜこんな事をしているの?」

「私?そうねぇ、さっきも言ったけど、大地属なら誰が統治者になっても実際変わらないと思うの。だから私は今の内戦状態が変えられるなら、ムルヒに王をやってもらってもいいかしら、と思ってみたりしたのよ」


それに、手助けしたら国の中枢に入れてくれるっていうし。

サラへはそう加えた。


「今の王様は、ダメなんですか?」

「そりゃあねぇ?世界の崩壊は、今の王のせいだって流言があったし」


キクカには流言という言葉の意味が分からなかったが、話の流れからして良い意味で使われたのではないことだけは察した。


「世界が変わるきっかけになるのなら、なんでも挑戦してみるのは悪くないと思うわ」


サラへは真剣なまなざしでそう言った。


「世界を、変えたいんですか?」


キクカは尋ねた。


「変えなければ、私たちの世界は滅ぶだけだわ」

「……」

「あと数百年もしたら滅びると言われているのよ?誰かが変えてくれるのを待つより、自分でできる事をしたいわ」

「……ここの人たちも、そういう気持ちで動いているんですか?」

「どういう意味?」


サラへがキクカの言葉を興味深げに拾う。


「世界を変えたい、と」

「そうね。ムルヒの家は分かっていると思うけど、あなたたちには敵よ。でも、人々を救うために行動していることには変わりないわ」

「移住、するんですよね」

「世界が滅ぶんで私たちの歴史が消える前に、それも一つの手段ではあるわ。私個人的には、まず王が変わることで何か変化が起きないかと思うけどね」

「じゃぁ、サラへさんの考えと、こっち側の人の考えは少し違う?」

「まぁ、少し違うわね。ムルヒが王になるっていうのは、反王党派の考えではなくて、ムルヒ家の思惑よ」

「……」

「私はそのムルヒ家に協力しているだけ」


サラへはにこやかな笑顔を作りキクカを見つめる。


「あなたは、何を考えて生きているの?」


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