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異世界での反撃4


王城の庭先に、近衛兵が配置された。

きんと張りつめた空気の中、近衛兵に囲まれるようにアヅマが仁王立ちしていた。


その視線は迷わず地下に向けられている。


いわばおとりだった。


「来るぞ!」


アヅマが叫ぶ。

それに呼応し、ユーキが片手をあげた。

兵たちが一斉にアヅマの足元に向け剣を抜く。


ぼこり、と。

庭の地面に隆起と亀裂が起きる。

それに反応してアヅマが跳躍した。

まるでアヅマが大地を引き連れていったかのように、土がうねりながら立ち上がる。


「打て!」


ユーキの命令に、近衛兵たちの剣先が振り下ろされる。


盛り上がった土の先頭が、見えない天井に打ち当たったかのように平らに押しつぶされる。


「叩きつぶせ!」


次の号令で、一気に盛り上がった土が押し戻された。


空気密度の濃い大気の壁。

光元素属の能力の一つだ。

空気の壁が土を押し返す。


すると、アヅマが飛びのいた先に再び隆起が起こった。


「次!」


ユーキが続けて命令を下す。


それが、5度繰り返された。



王城内からそれを見ていたラフテルは、嘆息する。

あまりに美しい芸術を見ているかのような動きだったからだ。



しばらく大地の揺らぎが止まった。


アヅマは地下の動きに集中する。


ぷつりとデュラの気配が消える。


と、庭先の地面が大きく陥没し始めた。


「逃げろ!」


崩れ始める足元を強く蹴り、隆起したあとのある範囲内から外へと身を翻す。

反応が遅れた何人かの近衛兵が陥没に巻き込まれた。


「ちっ」


ユーキも舌打ちする。


眼前に大きなクレーターが出来上がった。


地下水路の天井が落とされたのだとすぐにわかった。


「おい、どうする」

ユーキの問いかけに、

「うーん、戦い慣れてるなぁ」

アヅマは頼りない声を上げるしかできなかった。





:::::::::::::::::::



「では参りましょうか」


食事を下げに来たサラへが、おもむろに配膳カートのクロスをめくった。


「……」


まさか、これに入れということか。


「さ、お早く」

サラへに促されて、キクカは身をかがめた。



ゴロゴロと、軽いはずのカートが重量のある音を立てる。

息を殺し、少しでも身を小さくしようと体中に力が入る。


左に一度。

右に二度曲がった。


「もうよろしくてよ」


サラへが声をかけながらクロスを上げた。

はぁぁぁぁぁ、と深く長く息をつく。


もぞもぞと這い出すと、そこは倉庫のようだった。

保存食と、消耗品のようなものが積みあがっている。


「えっと……」


キクカは外につながっているとは思えないその部屋を見回し、サラへに問いかけた。


「これからどうするんですか」


「少しお待ちになって。私、あまり機械にはくわしくないの」


そう言いながら、サラへが部屋の奥から何かを持ち出してきた。

女性には少し重いのか、引きずっている。


この時、言葉が通じるので安心しきっていたことは間違いはない。

だから、今後身に起こる事態が罠だったと気づいたころには、キクカにはどうすることもできなかった。



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