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18/22

リリアーナ様は誰のものでもありません!

最近、面白くない。

とても面白くない。

ものすごく面白くない。

私は食堂のテーブルへ突っ伏しながら、深いため息を吐いた。

すると向かいに座っていたリリアーナ様が心配そうに首を傾げる。

「アイリス、どうかなさいましたの?」

その優しい声を聞くだけで少し元気になりそうになる。

けれど今は駄目だった。

問題はそのリリアーナ様自身なのだから。

「リリアーナ様は最近お忙しいですね」

私がそう言うと、リリアーナ様はきょとんとした顔をした。

「そうかしら?」

「そうです」

「そうですの?」

全く自覚がないらしい。

私はさらに深いため息を吐いた。

昔はよかった。

朝は一緒に登校して。

授業の合間にお話をして。

昼食も一緒。

放課後も一緒。

それが当たり前だった。

なのに最近。

本当に最近。

邪魔者が増えた。

まずレオニス殿下。

この人は以前からいた。

いたのだけれど。

最近明らかに距離が近い。

近すぎる。

リリアーナ様が髪を乱せば直す。

転びそうになれば支える。

寒そうにしていれば上着を貸す。

何なのだろう。

保護者だろうか。

そしてアシュレイ様。

こちらも問題だった。

生徒会の仕事を理由に、何かとリリアーナ様を呼び出している。

最初は偶然だと思った。

でも最近は確信している。

絶対に偶然じゃない。

先日もそうだった。

せっかくリリアーナ様と二人でお茶を飲んでいたのに。

「リリアーナ様」

突然アシュレイ様が現れた。

「少し相談がありまして」

「まあ!」

リリアーナ様は嬉しそうに立ち上がる。

私は知っている。

相談など半分嘘だ。

いや、嘘ではないのだろう。

でも絶対に会う口実にもしている。

私は知っている。

「アイリス?」

いつの間にかリリアーナ様が不思議そうな顔でこちらを見ていた。

いけない。

考え込んでいたらしい。

「何でもありません」

「本当ですの?」

「本当です」

「でも元気がありませんわ」

優しい。

本当に優しい。

だから困るのだ。

リリアーナ様は誰にでも優しい。

レオニス殿下にも。

アシュレイ様にも。

先生にも。

使用人にも。

平民にも。

誰にでも。

だから。

私だけ特別じゃない。

そんな当たり前のことを考えてしまう日がある。

もちろん分かっている。

私は親友だ。

十分恵まれている。

それでも。

少しだけ。

ほんの少しだけ。

寂しくなることがあった。

「リリアーナ様」

「はいな?」

私は少しだけ唇を尖らせた。

「最近、私といる時間が減りました」

言った。

ついに言ってしまった。

リリアーナ様は数秒固まった。

そして。

「えええええっ!?」

食堂中に響き渡る声を上げた。

「そ、そんなことありませんわ!」

「あります」

「ありません!」

「あります」

「ありませんわ!」

「あります」

しばらく言い合った後。

リリアーナ様は真剣な顔になった。

そして。

「ごめんなさい」

小さくそう言った。

私は慌てた。

違う。

そうじゃない。

謝ってほしかったわけじゃない。

「違うんです!」

「アイリス?」

「その、別に怒っているわけではなくて……」

言葉がうまく出てこない。

恥ずかしい。

ものすごく恥ずかしい。

だけど。

言わなければ伝わらない。

「寂しかっただけです」

そう言った瞬間。

リリアーナ様の目が丸くなった。

数秒後。

突然。

ぎゅうっと抱きしめられた。

「り、リリアーナ様!?」

「アイリス!」

「はい!?」

「そんなことならもっと早く仰ってくださいませ!」

近い。

顔が近い。

「アイリスはわたくしの大切なお友達ですわ!」

「リリアーナ様……」

「誰より大切ですわ!」

「誰より?」

「もちろんですわ!」

私は少しだけ笑った。

たぶん。

レオニス殿下が聞いたら怒る。

アシュレイ様が聞いても怒る。

でも今だけは。

私だけの言葉にしておこう。

その時だった。

「へえ」

聞き慣れた声がした。

振り返る。

そこには。

笑顔なのに全く笑っていないレオニス殿下と。

穏やかな顔なのに何だか怖いアシュレイ様が立っていた。

「誰より大切?」

レオニス殿下が微笑む。

怖い。

とても怖い。

「僕も気になりますね」

アシュレイ様まで微笑む。

もっと怖い。

そして。

「まあ、お二人とも!」

当の本人だけが何も分かっていない笑顔を浮かべるのだった

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