婚約者の顔を見られません!
これでは面白くないと思ったので、(展開が早すぎて)12話の内容を、大幅に変更しました。
そちらを読んでからこちらをお読みください。
変更が多くてすみません。
殿下とアイリスを応援すると決めてからというもの、わたくしは大変困っていた。
「リリアーナ様?」
「ひゃあっ!?」
突然声をかけられ、思わず飛び上がる。
サラが目をぱちぱちさせた。
「どうなさいました?」
「な、なんでもありませんわ!」
あります。
大ありです。
だって、最近、レオニス殿下のお顔が見られないのですもの。
「重症ですわ……」
思わず机に突っ伏した。
この気持ち、恐ろしいものだわ。
苦しいし恥ずかしいし落ち着かないし。
全然平和じゃありませんわ!
すると。
コンコン。
扉が叩かれた。
「お嬢様。」
「何かしら?」
「王太子殿下がお見えです。」
「え?」
固まった。
「……今、何と?」
「王太子殿下がお見えです。」
終わりましたわ。
わたくしの人生。
数分後。
応接室。
レオニス殿下は優雅に紅茶を飲んでいた。
今日もお美しい。
いえ違う。
見てはいけない。
ヒロインのお相手を直視してはいけませんわ。
心臓に悪いのです。
「ごきげんよう、殿下。」
わたくしは視線を逸らしたまま挨拶した。
「ごきげんよう、リリアーナ。」
どきん。
「……?」
殿下が少し首を傾げる。
「顔色が悪いですね。」
「元気ですわ。」
「目も合わせていただけません。」
「気のせいですわ。」
「そうでしょうか。」
「そうですわ。」
完璧です。
公爵令嬢らしい受け答えですわ。
そう思った瞬間。
「では。」
殿下が立ち上がった。
「失礼します。」
「え?」
思わず顔を上げる。
帰るの?
もう?
なぜか胸がきゅっとなった。
すると。
レオニス殿下が小さく笑った。
「ようやくこちらを見てくださいました。」
「…………。」
しまった。
罠でしたわ。
庭園。
気付けば殿下に連れ出されていた。
春の花が咲いている。
風が心地良い。
けれど、わたくしは全然落ち着かなかった。
隣に好きな人がいるからです。
「リリアーナ。」
「は、はい。」
「最近、私を避けていますね。」
「避けておりませんわ。」
「本当に?」
「本当ですわ。」
「では。」
殿下が少しだけ身を屈める。
距離が近い。
近いですわ!
「今、なぜ後ろへ下がったのですか?」
「気のせいですわ!」
「三歩も。」
「気のせいですわ!」
「なるほど。」
全然納得していないお顔だった。
しばらく歩いていると。
突然。
石畳の段差に足を取られた。
「あっ――」
転ぶ。
そう思った瞬間。
ぐい。
腕を引かれた。
気付けば。
レオニス殿下の胸に収まっていた。
「…………。」
「…………。」
近い。
近すぎる。
心臓が止まりますわ。
「お怪我はありませんか?」
耳元で優しい声が響く。
「だ、大丈夫ですわ……」
「それは良かった。」
そう言うのに。
なかなか離してくださらない。
最近のリリアーナはおかしい。
私、レオニスは、そのことに申告に悩まされていた。
私の頭を悩ませてくれるものなど、彼女しかいないので、退屈しないからいいのだけど。
目が合うと逃げる。
話しかけると赤くなる。
私が近づくと固まる。
最初は嫌われたのかと思った。
だが違う。
今もそうだ。
腕の中の彼女は真っ赤だった。
耳まで。
首筋まで。
まるで熟れた林檎のように。
「……可愛い。」
思わず漏れた。
「え?」
リリアーナが固まる。
しまった。
声に出ていたらしい。
だが。
もう遅い。
彼女の顔はさらに赤くなった。
「~~~~っ!!」
次の瞬間。
リリアーナは脱兎の如く走り去った。
「リリアーナ!?」
「ご、ごきげんようですわああああ!!」
遠ざかる背中。
私は思わず笑ってしまった。
「本当に。」
「退屈しませんね。」
その日の夜。
リリアーナは枕に顔を埋めていた。
「可愛いって言われましたわあああ!!」
ばたばた。
ばたばた。
この気持ちに、気づきたくないのに。
心臓は、驚くほど素直だった。
一方その頃。
レオニスは今日の出来事を思い出しながら、珍しく機嫌よく紅茶を飲んでいた。
セドリックは思う。
(殿下。)
(あと少しでございます。)
(その天然婚約者様は、そろそろ気持ちに気づくと思います。)




