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破滅ヒロインの幼馴染に転生した俺、バッドエンドの巻き添えは嫌なので幸せにしてやろうと思います  作者: 瓜嶋 海
第2章

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第49話 暴走少女の恋愛アプローチ作戦会議

 雨音が窓の外で響く深夜。

 白城桜花は自室の机の前で、ニンマリと笑みを漏らしていた。


 その手にあるのはメモアプリが開かれたスマホ。

 画面には、ずらーっとチェックリストが作成されていた。


———

✓学校で話しかける

✓一緒に下校する

✓放課後に一緒に寄り道をする

・学校で何かを借りる

・一緒にお弁当を食べる

・連絡先を交換する

✓モデルをやってることを伝える

✓モデルの撮影現場に招待する

・告白する

・キスする

・えっちする

———


 既に達成した項目にはチェックを入れつつ、桜花は悶える。

 じたばた脚を動かしながら唸った。


「あーもう、どうしよう! 勢いでモデルやってることも言っちゃったけど、流石に急過ぎたかしらッ? そもそもよく考えたら、今までも少し話すくらいだったし……はぁ、自分のコミュ障さに嫌気が差すわ」


 幼少期からコンプレックスだった。

 自身の空気の読めない言動で人間関係が荒れたり、距離感が掴めないせいで人から避けられたり。

 少し思い返すだけで、小中学校時代から山ほど似たようなエピソードが思い起こされた。

 それにまた悶え、暴れ、別室に居る父親から『静かにしなさい』という連絡をもらって、また無言で頭を抱えた。


 何を隠そう、桜花が学園で極端に目立つことを嫌ったのは、この過去が故である。

 学校の人間関係だけでなく、家族にすら亀裂をもたらした自身の悪癖。

 中学時代にはそれがきっかけで両親が離婚した。

 母親との決別や新天地でのリスタートを機に、桜花は変わったのだ。


 自分の言動で他者が離れていくのを嫌い、自我を出すことを辞めた。

 容姿で疎まれるのも鬱陶しいから、ノーメイクがデフォルト。

 そのおかげで最近ではめっきりトラブルになる事はなくなった。


「……」


 鏡を見て、桜花は自身の口元のほくろを無言でなぞる。

 絶縁状態の母親から譲り受けた、忌々しい()()()()()()()()だ。

 しかし、実際この特徴はマネージャーやカメラマン、ファンからも好評。

 こんなものの何が良いのかわからないが、得しているのは事実で複雑な心境である。


「って、そんな事より問題はこっちよ……!」


 桜花は再びチェックリストに目を落とした。

 そしてまた、首を傾げ、唸る。


「き、キスと告白は逆かしら? いやでも、そんな痴女みたいな……。でもでも、付き合う前にえっちまでするのが普通とかって聞いたこともあるし……! で、でもおかしくない? そんなの、そもそもどうやって誘うのよ? あたしから口に出したら欲求不満だと思われそうだし。うわー、それは絶対無理。死ぬ。あり得なさ過ぎるって」


 項目の下部にある、ゴール地点を見据えて絶望した。

 とてもじゃないが、スムーズにそこまで進められるとは思えない。

 なにせ、こんな感情を男の子に抱くのは生まれて初めてなのだから——。


 言わずもがな、このチェックリストは響太と付き合うための順序のメモだった。


「ってかそもそも、えっちとか気が早過ぎ……」


 焦りながら、その項目を消す。

 だがしかし、やはり思い直して付け足し、そしてまた消す。

 およそ無駄な行為に小一時間かけ、時刻は深夜の3時を回っていた。

 気づけば父親からの苦情連絡も来なくなっている。

 どうやら寝たらしい。

 というか、自分も寝なくては翌日の授業に響く。


 響太とは決して多くの接点があったわけではない。

 とは言え、桜花にとっては特別だった。

 素の自分を見せられる存在は彼だけだし、地味モードに擬態している自分の事を鼻で笑って『可愛い』と評価したのも、響太だけだったのだから。

 

 一度気になればその後は暴走機関車。

 話せば話すほど、響太の事しか考えられなくなっていった。


「はぁぁ、あたし、こんなにちょろかったっけ……」


 流石に自分でも都合のよさには気付いており、だからこそバツが悪いわけだ。

 

 と、ここにきてだが。

 響太と付き合おうとする際、その高いハードルは何も本人だけではない。

 なんなら、それよりも高い壁が彼を覆うように聳え立っている。


 桜花はシャーペンを回しながら呟いた。


「まず第一に、羽崎梓乃李は100%邪魔ね。あーれは絶対に狙ってる。っていうか、なんなら彼女感すら漂わせてる。普通にムカつくのよねー、あの顔」


 桜花は既に、梓乃李が強かな女だと確信していた。

 学校で響太に話しかけようとした時に、さり気なく体で割り込んで遮ってきたり、彼を強引に引っ張って行ったり。

 確実にあれは、桜花を敵と見なして警戒している。


 もっとも、これは響太には全く知り得ない部分での探り合いである。

 女の戦いは既に水面下で進んでいた。


「まぁ勝算は、豊野君自体が流してるって事ね。付き合う気はないみたいでそこは安心……とも言えないか。二人は聞くところによれば幼馴染らしいし? そんなの、ラブコメの正妻ど真ん中過ぎるじゃないっ!」


 オタクならではの視点で苛立つ桜花。

 しかも、問題はまだある。


「次に七ヶ条雪海ね。あっちも中々手強いわ。羽崎さんほど露骨ではないけど、あの人が豊野君を特別視しているのは事実。性格の悪さは噂と豊野君の証言から確実だし、それに加えて手の速さとあの頭の良さ……。羽崎梓乃李に気を取られてたら、ぬるっと横から盗られそうだわ」


 梓乃李と雪海。

 ここ最近、少しずつ情報を集めた桜花にとって、この二人は要注意人物であった。

 そして、彼女は思う。


 ――ならば、出し抜くしかない、と。


 夕方、彼を撮影現場に招待したが、それだけではダメだ。

 予定までにはまだ三日ほどあるし、黙って待っていたら状況が変化しかねない。

 いつ彼が魔の手にかかるかわからない以上、今が危険な状態であるのは変わらないのである。


「ふ、ふふ……。そうよ。受け身に回るからダメなんだわ」


 今までは彼から話しかけてきたり、偶然廊下ですれ違った時に話をしていた。

 だけど、このままではダメだ。

 あの二人の美少女から彼を奪うには、一歩自分から進むしかないのだから。


「待っておきなさい、豊野君。……あは、あははははは」


 目の下にクマを作りつつ、桜花はシャーペンを握り締めるのであった。



―◇―


【白城桜花】

暁斗への好感度:60%(→)

響太への好感度:100%(♡)

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― 新着の感想 ―
チョロ過ぎというか、普通にやべぇ奴だった……
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