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破滅ヒロインの幼馴染に転生した俺、バッドエンドの巻き添えは嫌なので幸せにしてやろうと思います  作者: 瓜嶋 海
第2章

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第46話 事態の深刻さを悟り、またも絶望するモブ

 梓乃李と二人で、見失った暁斗と葵子を探す事数分。

 館内を歩いていると、ようやく俺達はお目当ての人を見つける事が出来た。

 ……のだが。


「えー、喜嶋ちゃん彼氏いたん?」

「いや、あきくんはただの幼馴染でっ」

「ふーん。ま、オレの気持ちは変わらないっすけど」


 引きつった笑みで固まる葵子。

 それを見て若干焦ったような顔で不快そうにする暁斗。

 二人の前にはもう一人、どこかで見た事がある男が立っていた。

 どうやら俺達がいない隙に、ひと悶着起きたらしい。


 ズカズカと無遠慮に葵子に近づく男だが。

 なんとなくチャラい印象を受ける雰囲気だった。

 とは言え、夏物の服から覗く肢体からは最低限鍛えている様子も見える。

 身長も高く、顔の造形も整っており、如何にもモテますって感じだ。

 

 と、そこまで見て気づいた。

 コイツ、アレだ。

 以前遊園地で見た、葵子に迫っているクズの後輩である。

 

 葵子は、現在進行形でこの男から猛アプローチを受けている。

 この後原作では、それがエスカレートしてレイプ未遂に発展するのだが、この世界線でもその動きが確認されていた。

 遊園地で葵子と二人でいた時、彼女から実際に聞いたから知っている。


 とは言え、これまたどうしてこんなところでエンカウントしてしまうのか。

 前回と言い今回と言い、遊びに出た先々で遭遇するのは不気味だ。

 ストーキングでもされているのかと疑いたくなる程である。

 もっとも、そんな事ができる化け物は雪海くらいしかいないだろうが。


 と、怪訝に思っている俺を他所に、現場では珍しく暁斗が健闘していた。

 葵子と男の間に割って入るようにして、話しかけている。


「君、一人で来てるの?」

「いや? 女と来てるに決まってるじゃないっすか。こんなとこ、わざわざ男が一人で来ないっすよ。連れがトイレ行って暇だった時に、たまたま本命の喜嶋ちゃん見かけたから話しかけただけっす」

「相手が居るんなら待ってなくて大丈夫なの?」

「別にいいっすよあんなの。今日だってどうしてもって言うから付き合ってやってるだけだし。でもさっき話してたら今日生理とか言われてー。ヤレると思ってわざわざ入館料奢ってやったのに、あり得なくないっすか?」

「……」


 同調を求めるような言葉に、暁斗は困惑していた。

 こういう絡み方には慣れていないのだろう。

 クズ丸出しのヤリモク発言にもドン引きしていそうだ。


 とは言え、水族館を奢る金があるとは、なかなか大したものである。

 サッカー部所属のはずだが、バイトまで並行しているのだろうか。

 目的は不純だが、努力だけは素晴らしいと思う。


「ねぇ、どうするの?」

「ん? あぁ。止めるぞ」

「え? あ、うん。そうだよね」


 つい考え込んでいたが、アイツらを変に接触させるのは好ましくない。

 梓乃李に言われて俺は頷き、彼らの前に姿を出した。


「ごめん暁斗。ぼーっとしてたら見失ってたよ」

「あ、響太。てっきり二人で回るのかと思って放置してたんだ」


 俺の顔を見るなり、若干暁斗の顔が和らぐ。

 そして俺は、苦笑しつつ訂正した。


「だからデートじゃないって何度も言ってるでしょうに」


 相変わらず俺と梓乃李をカップリングさせようとしてくる奴だ。

 本来の俺のロールと逆転しているが、何の皮肉だろうか。

 しかし今はそんな事より話をする相手がいる。


 俺はテキトーに暁斗と話しつつ、後輩に目を向けた。

 そいつは興味を惹かれたように、食い入るような目で梓乃李を見ている。


 さて。

 節操無しにも程があるクズ相手だ。

 正直あまりトラブル源とは関わりたくないが、この後の展開を知っている以上、釘は刺しておいた方が良いだろう。


「女連れで遊びに来てナンパとは贅沢だな」

「……は?」


 何度か修羅場に遭遇したとはいえ、牽制慣れしていない俺である。

 いきなり喧嘩を売るような言葉になってしまった。

 なんともまぁ、痛々しいオタクのハッタリ文句にしか聞こえないセリフだ。

 言っていて自分まで恥ずかしくなってくる。


 無言の間がしばし流れ、じわっと嫌な汗が滲んだ。


 前に亜実と対面した時も思ったが、俺からカッコいいセリフなんて出てこない。

 結局どこまでいっても、『陰キャが精一杯虚勢張ってんね(笑)』的なワードにしかならないのだ。

 俺のコミュ力がもう少し高かったら、きっと角の立たない方向性で話を進められたのだろう。


 微妙な空気の中、クズ後輩は一歩出て俺を見下ろす。

 そして興が醒めたのか、舌打ちして踵を返した。


「チッ。……あー、うっぜ」


 この数秒で心底舐められたらしく、単に暴言だけ吐き捨てられる。

 後頭部を掻きながら歩く後輩の後姿が、次第に遠くなった。


 取り残され、なんだか少しイラっとする。

 普段はあまり他人の言動に苛立つことはないのだが、今日はなんだかやけに気に障った。

 後ろから飛び蹴りでもかましてやろうかと迷ったくらいだ。

 とは言え、クズを二人から引き離せたことには違いないから、ここで拗れさせては意味がない。


 秘かにイライラしていると、そんな俺の心境なんかお構いなしに葵子が声を上げた。


「ほんとありがとっ」

「まぁ、うん」


 随分困っていたらしく、そのまま少し葵子の愚痴を聞かされる俺達。

 事情を知っていた俺は勿論、暁斗も何となく知っていたらしく、渋い顔をしていた。

 一方初耳の梓乃李は露骨に不快そうな表情を浮かべていた。

 コイツはどうも、感情がすぐ顔に出るタイプらしい。


 と、そんな時だった。

 葵子の口から出た一つの単語に、俺は頭を殴られたような感覚に襲われる。


「茶桐くんって言うんだけど、ほんとに困った子でさぁ」

「ッ!? ……サキリ? それって、下の名前は叶矢であってるか?」

「え? うん。知ってるの?」

「……」


 葵子の声がどんどん遠退いていく。

 茶桐叶矢。

 明嶺学園に今年入学してきた、一つ下のサッカー部のクズ野郎。

 俺はそんな奴を知っていた。

 

 何を隠そう、去年季沙を襲ったという男の名と、奇しくも同じなのだから――。


「どうかした?」

「……なんでもない」


 頭の中で様々なイベントが繋がり出す中、聞いてきた梓乃李に対して俺は息を吐く様に嘘をつく。


 つい先日、梓乃李には自分を曝け出してくれと言われたばかりだ。

 だがしかし、やはりそういうわけにもいかないらしい。

 特にコイツには、余計な心労を与えたくないから仕方ない。

 いや、もはやこういう考え方自体が間違いで、全てをコイツに説明した方が良いのかもしれないが……。

 どのみち、今は様子見するしかないだろう。


「大丈夫だよ葵子。僕らが付いてるから」

「あははっ、あきくんってば大げさだなぁ。大丈夫だよぉ」

「だといいんだけどね」


 にしても、どうも葵子に対してだけはまともだな。

 まさしくエロゲ主人公な暁斗を横目に、俺は少しだけ微笑ましい気分になる。

 

 黒い事件に首を突っ込むのは、今回もモブだけで十分だ。



―◇―


【喜嶋葵子】

暁斗への好感度:30% (↑)

響太への好感度:5% (↑)

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