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第32話 炭鉱夫の思い


 翌日、早速アランは何人かの同朋を連れてやってきた。アランがいくら説明してもあまりの非常識さに信じてもらえなかったため、一度にたくさん呼ぶことができなかったらしい。


 昨夜の出来事

 

 「おい、アラン、風魔法で岩をぶった切ったって、流石におかしいぞ」

 「おい、アラン、鉄鉱石の含有率が90%以上はありえないぞ」

 「おい、アラン、流石にお前さんの言葉でも信じられんなぁ」

 「おい、アラン、あの美人のセリーナさんがそんな怖いはずないだろう」

 「おい、アラン、あの冒険者はD級だぞ、そんなことができるはずがないだろう」

 「おい、アラン、お前が助けてもらって恩を感じているのは分かるけど、夢見すぎだぞ」


 「みんなが信じられないのは、分かっている。だから、一回でいいから、騙されたと思って来てくれ」


 「お前がそこまで言うなら、行くよ」


 「ただ、全員いきなり行くわけにもいかない」

 

 「ああ、それでいい。その代わり、そのメンバーが信じたらみんなこっちに来てほしい」


 「もちろんだ。話が本当なら絶対に行くよ。なぁ。みんな」

 「おう、もちろんだよ。こんないい話他にはないからな。」

 「だけど、おいしい話には裏があるもんだぞ、大丈夫か?」


 「一か月くらい一緒に過ごしていたけど、そんな人たちじゃないと思う。

  本当かどうかは、それこそ信じるしかないんだけど、私は信じたい」


 「そうだな、それは。そこはそれぞれが見極めるしかないが、俺はアランが信じるなら、信じたいと思う」


 「それはだめだ。ちゃんと自分の眼で確かめてくれ」



そして、今に戻る。

数人のベテランを連れてやってきたアランは、早速仕事に取り掛かった。

アランには、マジックバックを自由に使えるように渡しているので、きっとうまいことしてくれるだろう。


 そして昼ご飯の時間になったので、露店に顔を出した。

 今日はうちで働いてもらっているので、社割価格で提供した。

 よく分からないがすごく感謝された。こちらとしてはお金をもらっているので、問題はない。まぁ今は安すぎて売れば売る程赤字なのだが。


さて、順調に進んでいると思ったが、アランが声をかけてきた。

どうやら昨日のように風魔法と土魔法を見せてほしいらしい。その様子で来るかどうかを決めるということだから、こちらとしても気合が入る。


「え~っと、今日はセリーナではなく私がやりますね。露店もありますので」


 少し不安そうなアランの顔が見える。ちょっと悪い気がしたので、早く見せてあげよう。


「今右手に見える砂の山が昨日造ったものですね。それで今日はこちらにもう一山造りますね」


 真剣な表情で見守るむさくるしい男たち。

人生がかかっているのだから気持ちは分かるが、華がない。


「では、いきますね」


「お願いします」



 さっさと終わらせてしまおう。エアカッターとトルネードでさっさと粉々にしてから、土魔法で分離した。一度に全部をしたので、地響きが起こる。砂が舞い、台風のように強い風が吹く。


 「ローグさん、もう少し抑えてもらえませんか」

 アランさんが訴えてきたので、シールドを風で作る。


「はぁはぁはぁ。ありがとうございます。吹き飛ばされるかと思いました」


「おい、アラン、聞いていた話より凄いじゃないか。なんだったんだ、今のは」

「全然何しているのか分からなかった」

「あの量を一瞬で。それもいらない砂は分けられている。」

「まじかよ。。俺はローグさんについていくよ」

「おう。おれも。」

「おれもだ。こんなの初めてみたぞ」

「うおぉぉぉぉお!!」


歓声がおこった。実力を認められたようでちょっと嬉しい。いや、かなり嬉しい。

今まで地道に採掘していただけに、男たちの感動は大きかった。


 昼からの仕事は後回しにして、今から家族に報告に行くという。

 そこから話はとんとん拍子に進み、ほとんどの家族がうちで雇われるようになった。

 派閥の違う人たちが一定数そのまま残るようだが、無理矢理引っ張ってきたいとも思っていなかったので構わない。


 最終3000人もの人を雇うことになった。

 アランを中心に組織を作り、組織運営は奥さんに任せた。

 今、名簿の作成にかなり苦戦しているようだが、名簿に登録してから家を提供したり、社員証を発行したりしたので、みんな協力的だった。





翌日ルイ・オーネストがやってきた。

「お前がDランク冒険者のローグか」


「そうですが、何か御用でしょうか」


「我々の炭鉱夫をそそのかし、違法に連れていった罪で逮捕する」


「ふむ、違法とはどういうことでしょうか」


「こちらの炭鉱夫は10年契約で私が雇っているので、もしやめるのであれば違約金が発生する。違約金を払うことなく連れていくとはどういうことか」


「なるほど。その契約書を見せていただけますか」


「ふん、構わんが、変なことをしてみろ。この場で首を切ってやる」


「ありがとうございます。

 

 ふむ、こちらに確かに何名かの名前が書かれていますが、本人のサインがありませんので、これは無効でしょう」


「ふん、そんなものは必要ない。我がここの領主なのだから」



「ほっほっほっ。それはまた面白いことを言いますなぁ」


「これはこれはモリス公爵ではありませんか。なぜこのような場所に」


「ほっほっほっ。たまたまその冒険者に用事があってのう。お邪魔しておったのじゃ。

 最初から話は聞いておったが、ルイ・オーネスト侯爵。あなたの仰ることはこの冒険者の言う通り、無理があるのではないかな」


「モリス公爵、あなたは冒険者の味方をするのですね。いいでしょう。

 今日のところは引き下がりましょう」


「では、冒険者が彼らを雇うことは問題ありませんな。ほっほっほっ」


「覚えておけ」


そう、捨て台詞を言って、そそくさとルイ・オーネスト侯爵は帰っていった。


「モリス公爵、ありがとうございます。おかげさまで、堂々とこれから営業ができそうです」


「ほっほっほっ。構わん構わん。お主の好きなようにすればよいだろう。

 また何かあれば呼ぶがよい」


「呼ばないのが一番ですがね。またご協力いただくことになるでしょう」


「期待しておる」


「そこで、今後についてもう少し具体的に話せたらと思うのですが、まだお時間よろしいでしょうか」


「ほっほっほっ。もう次を考えておるか。楽しみじゃのう。だが、ダンジョンではゆっくり話もできんからなぁ。どうじゃ明日、うちで夕食でも食べに来ないか」


「では、明日お伺いいたします。ボア肉はお好きですか?おいしい串があるのです」


「オークではなく、ボア肉か。嫌いではないがな。

そうそう、鑑定はさせてもらうよ」


「もちろんです。仲良くしていただければと存じます」


「ほっほっほっ」


夕食の約束を取り付けた後、モリス公爵は帰っていった。

 しかし、明日か。ルイ・オーネスト侯爵が動くとしたら今夜か明日の夜。きっと今度は手練れの暗殺者を送ってくるに違いない。

 セリーナがいるから大丈夫だとは思うが、ちょっと打合せをした方がよさそうだな。








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