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第31話 新しい計画

 いい感じに話をつけられ気分よく帰ってきた。

 町はどんよりしているが、私の気分は晴れやかに澄みきっていた。


 う~ん、ミスマッチ。

 

 お、いいこと思いついたぞ。このあたり一帯を光魔法「クリーン」できれいにしていけば、町もすっきりきれいになるではないか。



 早速歩き回って、目に付くところからきれいにしていく。なんせスラム街である。きれいにするところはいくらでもあった。

 道のあちらこちらにゴミが落ちており、いつからついているのかわからない汚れがオンパレードである。


 そんなところでクリーンを使うとどうなるかというと、そのあたり一面だけきれいになって逆に違和感しか生まれないのである。

 こうなってしまっては、すべてをきれいにするほかない。そう信じて汚れを次から次へと落としていったのである。


 やっぱり成果の見えることはやる気が生まれるものだと思う。

 薄く膜のように魔力を広げて、少しの魔力でそれなりの広さを一度にきれいにできた。途中からどれだけ広げられるのか実験がしたくなり、ひたすらに街をきれいにしてまわった。


 最初は半径3mぐらいからきれいにしていたのだが、対象を決めて掃除するほうが効率が良いことに気が付いた。そこで「道」「建物」など、見つけてはどんどんきれいにしていく。試しに10棟ほどまとめてしたら存外うまくいくものである。こうしてスラム街中をきれいにしてまわった。


 スラム街といったところでそれほど大きくない。町の一角を占領しているに過ぎない。

 夜が明けるまでにはすべて終わった。


 最高の朝帰りを果たした私を待っていたのは、、、誰も何もなかった。歯を磨いてさっさとベットインする。

 ふかふかの布団、掃除をした高揚感。熟睡間違いなし。





 翌日、いつものように昼ぐらいに起きると、スラム街が奇麗になっていると騒動に。

 思った以上の大騒ぎに。もしバレたら厄介なことになるかもしれん。よし、しらばっくれようか。


 街の人間は知らないが、スラム街の新しいボス、ブリュノウはきっと喜んでくれているだろう。前祝いだと思って受け取ってくれ。

 最悪、ブリュノウの新しい政策だと噂を流せばいい。




 「ねえねえ、だれがしたと思う?セリーナ姉さん~」


 「そうだねぇ。こんなことできるのは賢者様か神父様ぐらいだけど、教会の神父様はお忙しいし、何人もいないと一夜で全部をすることはできないわ」


 「だったら、やっぱり誰がしたんだろう~?」


 「一人だけ心当たりはあるわね」


 「だぁれ?」


 「それは、ミレット、あなたもよく知っている人よ」


 「やっぱりローグさんかな?」


 「ええ。こんなことするのはあの人しかいないわ」



 

 ば、ばれてる。なぜだ。

 スラムの住人にもまだバレていないはずなのに。


 風の噂によると怪奇現象とか、神様の祝福だとか好きかって言っている。


 

 仲間の実力を正確に把握していることはいいことだから、きっとこれでいいのだろう。

 そういうことにしておく。

 

 とはいえ、今回は一度にやりすぎてしまったので、「自重する」という言葉を知る私は、今後は何回かに分けてすることを決め、これを固く守ることにした。




 このような珍事はあったものの、概ね順調に進んでいるので、今日も今日とてダンジョンに行くことにした。


 露店の方も順調である。2度3度襲撃があったが、ブリュノウの監視役に追っ払われている。おかげで、ルイ・オーネストもこちらがブリュノウと繋がっていることを把握し、安易に攻めてくることもなくなった。 


 後は裏でうまく解決してくれたらいいのだが、残念ながらスラム街のボス「ドニルク」は元Aランク冒険者。一筋縄ではいかないだろうし、予断を許さない。


 一旦オルト国に戻り、貯めたお金で二ヶ月分の更新料を払ってきた。これで、しばらく戦えるだろう。

 財布は空っぽだが。食材や石鹼、シャンプーなど、充実している。戦闘準備完了。



 

 当座の目標は、移民労働者を雇う環境を作ること。

 実際にはこちらに鉱山の営業権がきてからやらないと補助金がなくて厳しいのだが、鉱山の運営能力や移民労働力の掌握が可能であることを示せば、モリス公爵が動いてくれる可能性が高まる。

 

 早速商業エリアにきて、鉱山の発掘権を取得した。一ヶ月で10万トロン。1000トロンが相場なので、100倍である。

 赤字は覚悟である。


 まずは、ロイ君とお父さんのアランに働いてもらうことにした。セリーナも一緒だ。


 鉱山の仕事は主に採掘と運搬、精錬の3つに分けられる。この世界は魔法とマジックバックがあるので、採掘も魔法で崩壊させたところをマジックバックに詰めて運ぶのが基本的な流れになる。運搬の作業はマジックバックを使われるのだが、使用されるマジックバックが安物になるため重さの軽減率が半分ぐらいのものが主流となっている。そのため、何度も重たいマジックバックを持って往復しなければならない重労働となっている。また、採掘の段階で鉄鉱石のみを丁寧に分けられたらいいのだが、それほど高度な魔力操作ができる魔法使いを雇うと鉄の値段が安いため赤字になってしまう。効率は圧倒的にいいが、この世界の人件費はびっくりするほど安いのだ。

 そして精錬の作業であるが、最初の採掘の時に要らないものも多分にあるため、大量に精錬しなければならない。


 そこで、私が採掘をして、効率よく鉄鉱石のみをできるだけ集めることで黒字にする。自分の人件費はタダなので、赤字になる心配もない。

 ノウハウはこれで積めるだろう。

 そして、2か月の間に土魔法を使える人材を育て上げる計画である。


 



 製鉄所と契約を交わし、マジックバックとおいしいごはんを用意した私たちはダンジョンの採掘場に来ていた。

 

 「ねぇ、ローグ、私採掘なんてしたことないんだけど、粉々に壊せばいいの?」


 「エアカッターとトルネードか旋風でできるだけ細かくしてほしい」


 「分かったわ」


 「あのう、すごく言いにくいのですが、、」


 「アランか、そうした自由に発言したらいいぞ」


 「発言ありがとうございます。風魔法で鉄鉱石を破壊することはかなり難しいのではないでしょうか」


 「だそうだよ、セリーナ」


 「そうね、私も最近感覚がマヒしていたけど、通常ならそう考えるわね」


 そういうセリーナをロイ君も心配そうな顔で見ていた。

 セリーナはロイ君に安心してもらえるよう微笑みかけてから、採掘場に視線を戻した。


 「エアカッター」


 すると、いつものように風の刃が飛んでいき、岩盤に命中。いくつもの線ができている。

 きれいに切れたためか、粉砕というより、包丁を入れた後の豆腐のように、原形をとどめている。


 「じゃつぎは、トルネードするから、ロイ君、布で顔を覆っていてね」


 「はい」


 ロイ君と父アランは素直に指示に従い、顔を布で覆った。


 私は?もちろんいりません。


 そして、見るとセリーナがトルネードを打ち始めた。徐々に魔力を増やして威力を上げている。

 まさに大型の台風が襲ったかのように、先ほどの岩が空中を舞い、お互いにぶつかり合って粉々になっていく様子がよく見える。

 その際破片がかなり飛んでくるのだが、当たらないように守ってあげた。十分風魔法の偉大さを理解したことだろう。


 「す、すごい。これが風魔法の上級技」


 「いいえ、これは中級よ」


 「へっ?」


 「中級」


 「で、でもこれで中級ってそ、そんな」


 「それがそうなのよ、これもすべてローグのせい」


 「おい!」


 「「「ははは」」」

 3人がさっぱりした顔で笑っている。

 私を見て。くぅ。おかしい。わたしのおかげで、ならわかるが、まるで私がわるいみたいじゃないか。納得できない。


 一人納得できないでいたが、諦めて、作業に取り掛かる。


 あとは、鉄鉱石の質量や特性を事前に確かめておいたので、土魔法で鉄鉱石のみを取り出す。

 純度90%ぐらいだろうか。

 これで、運搬と精錬を今まで通り行っても効率は10倍と10倍で100倍にはなるはずだ。


 やる気を見せている2人だが、この量を運搬するには人手が必要なことは理解してもらえただろう。


 「これをみんなに運んでもらいたいので、100人~1000人でも雇いたいんですよ」

 と、ロイ君の父、アランに声をかける。


 「もちろんです。同朋に声をかけてきますね。早く仕事がしたくてたまりません。

  あ、でも今日1日はロイと二人で仕事をしてもいいですか?」


 予想外の質問が出たが、きっとこの感動をかみしめ、親子で労働の楽しさを分かち合うのだろう。

 「ああ、いいとも。明日から期待しているよ」

 そう、即答したのであった。

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