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よろしくお願いします。
初めて会ったティナは一言で言えば、とても怪しい女だった。
魔族で俺の部下のリューゼがある日突然、執務室で仕事をしていた俺の元に来て土下座をした。
土下座したままの状態でボロボロと涙を流し出すリューゼのその様子に嫌な予感を感じながらも何があったのかと尋ねた。
泣きながら途切れ途切れに話すリューゼの話を要約すると、内容はこんなものだった。
俺の部下のドッペルゲンガーのレグルがこっそり人の住む街へと遊びに行った。
ドッペルゲンガーは一度見た人間ならそっくりに化けれるという魔物だ。レグルが人間に化けて人の街に入っても誰もレグルを魔物だとは気づかないだろう。
その街で飲みに入った酒場でレグルは一人の女に惚れたらしい。
女は酒場で踊り子をしていて、レグルはその女を見るためだけに何度も街に行くようになった。
そしてある日、よく訪れるレグルの顔を覚えていたらしい女はレグルに声を掛け、一緒に飲んでくれたらしい。
それから、何度も飲むような仲になったレグルに女は自分の身の上話を始めた。
その内容は、家族が病気になってその時にした借金を期限内に返せなかったために、女は無理やり踊り子をさせられているというものだ。
その話を聞いたレグルはどれだけ借金があるのかと女に尋ねた。
すると女は白銀貨3枚もの借金があると泣き崩れて語った。
白銀貨は1枚で1000万円ほどの価値だ。つまり3000万円もの借金があると言ったのだった。
女に惚れていたレグルは自分に払える金額ならいくらでも払ってあげようと考えていた。
しかしまさか白銀貨3枚もの大金とは思ってなく、自分に払える金額ではないとわかったレグルはその場でただ女を慰めていることしか出来なかった。
自分を慰めるレグルに女はさらに口を開いた。
なんでも、このままだと一生掛かっても借金を返しきれないと考えた金貸しが、これからは女に娼婦として働けと言ってきたというのだ。
それを聞き、女にそんな仕事をさせる訳にいかないと強く思ったレグルはこっそり魔王城の金庫に入っている金を盗み出し、女に渡したらしい。
女はありがとう、とレグルにすすり泣きながら抱きつき、借金を返したら必ずレグルの元に戻ってくると約束して、酒場を出ていった。
しかしそれからいくら待ってもレグルの元に女が戻る気配はなく、帳簿の確認のために魔王城の金庫を開けた金の管理をしている部下が金庫の金が無くなっていることに気づいて慌てて他の部下達に報告した。
そして部下たちが金庫の金を盗んだ犯人を探し始めて1週間後、ようやく自分が女に騙されたことに気づいたレグルが名乗り出た。
リューゼはそう話し終わると、土下座したまま言う。
「陛下、このままでは魔王城だけではなく、管理している村に住んでいる者たちの生活も破綻してしまいます。ですのでどうか、どうか、陛下にも金を稼ぎに行って欲しいのです」
はぁ、また面倒事が増えた。
俺の部下たちは能力はとても高いのだが、馬鹿だった。
これまでにもこういう事件が何度も起こっているのだ。原因となった奴らを始末していけば、俺の部下は一人もいなくなるだろう。
それでもまだ破綻せずに続いているのは、その度に皆が力を合わせて危機を乗り越えてきたからだ。
どうやら今回も力を合わせて乗り越えるしかないようだ。
「それで、役割はもう分け終わっているのか?」
「はい、金を稼ぐのが陛下を入れて3人。これは人に紛れれる種族にしてあります。そしてレグルを騙した女を探すのが5人。そして陛下がいない間のこの城を警備するのが2人です。その他にも近くの森に住む住民たちが交代で魔王城を見張りに来てくれるそうです」
俺の部下は全部で9人いるため、この作戦には全員を駆り出すようだ。
作戦中、無駄に広いこの魔王城を部下2人で守るのは困難なため、住民たちが見張りに来てくれることになったのだろう。
「女を探すのはやめておけ。探しても無駄足になるのは目に見えている。そういうやつは逃げ足が早いからな。その分、金を稼ぐやつと警備に半分ずつ回せ」
「かしこまりました。ではそう伝えます」
土下座をしたままそう言ったリューゼはやっと立ち上がって、執務室を出ていった。
金か…。一番手っ取り早いのは冒険者になってさっさとランク上げて報酬の高い依頼をこなすことだな。
俺の管理下の魔物たちが住む場所は魔法で隠してあるので冒険者にバレて狩られることは、万が一にもないだろう。
冒険者が倒したり、襲われたりしている魔物は俺の審査を通らなかった人を襲いたい派の魔物たちだ。人の住む街の住民や冒険者などは、魔物は襲ってくるものだと当然ように認識しているが、実際にはそういう魔物は少ない。
ただ、全体の魔物の数が実際には思っているよりも多くいて、襲いたくない派の魔物が人に見つからないようにして暮らしているため、全体の数を見誤っていることに今まで誰にも気づかれていないのだった。
今は襲わない派の魔物はその殆どが俺の管理下にある。
そんな魔物が暮らす村々は俺が全て魔法で隠して人に見つからないようにしている。
冒険者になれば、俺の管理下にいない人を襲いたい派の魔物を始末できるし、一石二鳥だろう。
魔物とはそれなりに親しくしているが、人を襲う魔物に情は一切ない。それは俺の管理下にいる魔物たちも同意してくれている。
魔王城から人の住む街に移動した俺はアルという名で登録を済ませ、冒険者となった。
冒険者に登録した俺は受付嬢にパーティを組まないか、と勧められた。
何でも相手は俺と同じで今日登録を済ませたばかりの女の冒険者らしい。しかもその冒険者は、パーティを組んでくれたらお礼をすると言っているらしい。
男にお礼しますと言う意味がどういう意味かわかってるのだろうか。
いや、それは貴族しか使わない言葉だ。単に知らないで言ったという可能性の方が高いか。それよりもソロよりパーティを組んだ方が効率がいいのは確かだ。この機会を逃すのは勿体ない。
そして案内されて出会ったのがティナという名の冒険者だった。
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