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これを秘策というらしい

サイバー攻撃怖いです

「妙蓮寺先生……って、あの『氷の英会話(アイス・イングリッシュ)』って影で呼ばれてる妙蓮寺蓮華先生!? 無理無理無理! あの人に『ラノベと少女漫画の同好会作ります』なんて言ったら、英作文の1000本ノック命じられて即死するよ!」

羽沢が両腕で大きな×印を作って絶叫し、篠原も青ざめた顔でブンブンと首を振った。

「そうですよ東白くん! あの鋭い眼光に見つめられただけで、私の隠し持っている『アリア様愛好本』が自然発火してしまいそうです……!」

「お前ら、偏見がひどすぎるだろ」

そもそもアリア様愛好本ってなんだよ…

思っても口には出さない。俺は深いため息をついた。

確かに、妙蓮寺蓮華(みょうれんじ れんげ)の容姿は恐ろしい。

切れ長の目に、黒に近い漆黒の瞳。普段から思考に没頭する癖のせいで眉間にシワが寄りがちで、廊下を歩くだけで生徒たちがサーッと割れて道を開けるレベルだ。

だが――俺は知っている。

実家の隣に住んでいるあの人が、学校から一歩出ればどんな「惨状」に陥っているかを。

「大丈夫だ。妙蓮寺先生なら、俺たちの同好会を断る理由がない」

「えっ……? なんでそんな自信満々なの?」

不審がる二人を従え、俺たちは放課後の職員室へ向かった。

ガラガラ、と引き戸を開ける。

教職員たちの視線が集まる中、窓際のデスクでPCの画面を睨みつけていた妙蓮寺先生が、ゆっくりとこちらを振り返った。

切れ長の瞳が冷たく光り、篠原と羽沢が「ヒッ……!」と小さく悲鳴を上げて俺の後ろに隠れる。

「……なんだ、楽(らく)か。それに篠原と羽沢か。何か用か?珍しい組み合わせだが」

相変わらずの低音ボイス。だが、俺は彼女の目の下にうっすらとできている隈(くま)を見逃さなかった。

「妙蓮寺先生。ちょっと大事な話があるんで、廊下に出てきてもらえますか」

「……チッ、今『今期アニメの作画崩壊についての考察ブログ』を読みふけってたのに……あ、いや、英語の指導案を作っていたのに」

(何も聞いてません。)

俺は呆れながら、二人を連れて渡り廊下の踊り場へと妙蓮寺先生を誘導した。

人通りがないのを確認してから、俺は単刀直入に切り出した。

「先生。俺たち、旧校舎の図書準備室で『秘密の文芸同好会』を作りたいんです。で、顧問になってほしいんですよ」

「……は?」

妙蓮寺先生は眉間のシワをさらに深め、腕を組んだ。

「断る。面倒くさい。私はただでさえ毎週の授業準備と、深夜帯のリアタイ実況で命を削っているんだ。余計な校務を増やすな」

「リアタイ……?」

篠原がポカンと口を開け、羽沢が「えっ、いま実況って……?」と目を白黒させ始める。

俺はフッと鼻で笑い、懐からスマホを取り出した。

「いいんですか? 蓮華姉さん。断るなら、先週の金曜深夜、アニメ『魔法少女ルミナ』の最終回で『ルミナちゃんが尊すぎて生きるのが辛い』って語りながら、うちの玄関前で缶チューハイ片手に大泣きしてた動画、教頭先生に見せますよ」

「――っ!?」

一瞬にして、妙蓮寺先生の顔から血の気が引いた。

生徒から恐れられる「氷の教師」が、まるで蛇に睨まれたカエルのように硬直する。

「な、……お、お前……! あれは不可抗力だと言っただろう! 3期のアニメーション制作会社が神作画すぎて涙腺が壊れたんだよ……!」

「あと、部屋の窓から『アリア様マジ天使!』って叫んでた件も……」

「やめろ! 頼むからそれを学校で蒸し返すんじゃない!!」

絶叫する妙蓮寺先生の姿に、篠原と羽沢の口がポカーンと開きっぱなしになった。

「え、えぇ……? 妙蓮寺先生って、オタク……なの……?」

「しかも『ルミナ』と『アリア様』を嗜んでいらっしゃる……!? 重度の深夜アニメオタクの匂いがします……!」

さっきまでおびえた目をしていたのに蓮華姉さんが同族だと分かってから急に二人の目はきらきらし始めてる。

「……くっ」

蓮華姉さんは頭を抱え、切れ長の目を涙目(悔し涙)にさせながら俺を睨みつけた。

「楽……お前という奴は昔から……! 私の『真の姿』を、こんなところで盾にするなんて……!」

「背に腹は代えられないんで。顧問、引き受けてくれますよね?」

「……分かったよ! 引き受ければいいんだろ、引き受ければ!」

妙蓮寺先生はヤケクソ気味に髪をかきむしり、それから篠原と羽沢の方をギロリと睨みつけた。

「おい、そこの二人! 顧問になってやる代わりに条件がある! 同好会の部室(準備室)には最新のWi-Fiと大型モニターの導入を許可する! そして、毎週金曜の放課後はアニメの試写会および反省会を開催する! いいな!?」

「あ、はいっ!! 喜んでー!!」

「むしろ願ったり叶ったりです、妙蓮寺先生……いいえ、蓮華先輩とお呼びしても……!?」

まためんどくさい活動が増えた…だが、バレてしまっては仕方ないと分かっているのか、だいぶ乗り気になってくれて少しばかし安心した。

こうして、脅迫と利害の一致という最低な形で、俺たちの「秘密の文芸同好会」は最強(?)の顧問を手に入れたのだった。

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