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転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
西辞浮雲
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束の間のダラダラ

「…馬鹿の相手は疲れる。」

 低く呟いて、空の皿と盃を手に奥へ戻る。

「追い払って良かったのか?アレでもウィラードよりはよほど権力持ちだが。」

「ご迷惑をおかけしました。大人物の様ですが当分は宮仕えの気になれませんし、お仕えするならブライデルに借りのある御仁がいらっしゃるので。」

「似非笑いは止めろ。気が悪い。」

 リュヘルの機嫌は悪い。

 二日続けて軽薄殿下の相手をさせられた上、寝不足だ。

 丑三つ刻に異様な気配で目覚めると、宵闇に紛れてハルが面倒な客を連れて帰ってきた次第。

 エリム砦で邂逅した得体の知れぬ少年は、そのまま得体の知れぬ青年に成長して目の前にいる。

 コレに関わると。

「面倒くさい。早く出て行け。」

 そんなリュヘルに。

「えー。やっと布団で寝れるんだよ?そんな事を言わないで置いてよう。俺、何でもするよ?」

 ハル土下座。

 もはや、何の価値もない。

「使えない奴だな。座ってないで、肩ぐらい揉め。」

「えー。疲れてるんですけどー。」

 何でもすると言ったばかりなのに、何にもする気の無いハルである。

 代わりにシロが背後に回る。

 その手に汚れた皿を押し付ける。

「代わりに肩をお揉みしようかと?」

「余計に凝る。先ずはその気を納めろ。」

「…何も、していませんが。」

 言いながらすっと気配を消してみる。

「俺はなぁ。怠惰な性で剣の修練は真っ平だと逃げ切ったが、気を読む位は座っての鍛錬だからと騙されて少しかじった。あのクソじじいめ。」

 つい罵るほど何やら因縁話がある様だが、シロは黙って続きを待つ。

「…なんだ、その気は。あの時も思ったがその歳その形で魔術抜きでもベルドと渡り合えるか。」

「多分。エリム砦の騒ぎの時の方が、マシだったと思います。今、本気で剣を振るったら、骨が負けます。」

 自分の細腕を見て、不満そうにシロが言う。

「サーリフは達人揃いだそうですね。是非一度訪ねてみたいなあ。」

「紹介状を書いてやる。皿を洗ったら直ぐに訪ねに行け。」

 冷酷の、所以。

「えー。やーだー。俺はここでダラダラしーたーいー。」

 ハル土下座からの、床をごろごろ。

 神人と幻獣も奥の間ですっかり寛いで獣人達を涙目にさせている。

「そもそも、何で貴様が野放しなんだ。ウィラードはどうした?」

 転がってきたハルを足蹴で止める。

「えー、イチャコラ中?」

「いちゃ?遊んでいるのか。人を働かせておいて何て奴だ。よし、お前、」

「お、俺ですか?」

 所在無げに隅で座っていたヒースが急な指名で飛び上がった。

「今からウィラード商会本店店主代行だ。俺より偉いぞ。せいぜい励め。」

「えええっ?俺、商売なんてした事無いですよ?!」

「物を売って金を受け取るだけだ。金を出させて物を押し付けてもいい。そっちの方が簡単だ。」

 依頼の品を用意して届ける真っ当な仕事だが、リュヘルが言うとまるで押し売りである。

 言うだけ言うと、これで仕事は済んだとばかりに店先から飲み差しの酒甕担いで戻り、自室へ向かう。

「昼行灯って言葉があるけどさ。あの人、夜も無灯火なんだよね。」

 見送りながらハルが肩をすくめる。

「…うん?ちょっと意味がわからない。」

「やる気が全く無い。ちょっと本気を出せば、あの軽薄殿下だって相当な人だろうに軽くあしらっちゃうくらい、才気溢れる御仁なんだよ。だけどノブレスオブリージュとは無縁。」

「勿体無いね。」

 弱者には優しいが、強者には自分も含めて厳しいシロが顔を顰める。

「さっきの人、冗談を言ったんですよね?」

 ヒースが恐る恐る聞く。

「あの人の冗談はもっと笑えない奴だよ。」

「嘘だろ…俺に商人なんて出来ないよ。流行り病で身寄りをなくして、見習い兵であの塔で仕事に就いたっきりまともに手習いをした事もないんだ。」

 情けなさそうに言うのを、ハルが嬉しそうに頷く。

「俺も!字が読めなくてびっくりしたよ。シロ、お前は読める?」

「一応はね。僕も語学は得意じゃないから苦労したよ。まあ、漢字よりは覚えやすいかな。前回は散々だったからねえ。」

「散々で医学部か。」

「勉強したもん、君よりは。」

「いや、俺も頑張ってたよ?」

「そう?」

 受験生の年の瀬に年下彼女とデートしていたよね?と続けかけて言葉を飲み込む。

 あの時一緒に行くかと誘われて、流石にイラッとした事を思い出してしまった。

「シロ、何怒ってんの?」

「別に。」

 受験生なのに彼女とコミケに行って。人混みでインフルエンザ貰ってきて。しかも僕にうつして、おかげでセンター受けられなかったんだよな。

 奥から双子がヨンに抱かれてやって来た。

「シロ食べていいって言ったよね?」

「ほんとはヒーちゃんがいいんだけどね?だめぇ?」

「ヒースさんは駄目ですよ。代わりに僕のハルへの恨み、食べちゃって下さい。」

「恨みって。俺、なんかした?ヒースさん、怖いから睨まないで!剣を仕舞って!ヨンさんたすけて!」

「ハル、」

 ふるふるとヨンが首を振る。

「お前が悪い。十中九十。」

「ほぼ百パーかっ?!」

「悪辣だねー。」

「悪代官だねー。」

「あーれーおよしになってー。」

「よいでわないかー、くるくるくる。」

 ぽかり、とシロがハルを叩く。

「小さい子に何教えてんの。」

「はい、すいません。」

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