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仲間の元へ

 ブライデル帝国帝都ブライデル。

 千年都市と称されるその都は、大陸屈指の繁栄を誇っている。

 絢爛たる皇帝居城を中心に政務、軍務、魔術部を代々司る三侯爵城、その周りに三公五伯の上屋敷を筆頭に貴族の館が連なっている。

 ここまでを城域とし、どれだけの労を要したか、ぐるりと城壁と堀が巡らせてあり、東西南北に掛けられた四つの橋門で厳重に守られている。

 更にその外を、城域内に屋敷を持たない外官や下働きの宿舎、ギルド別の商家邸宅街、商業職人街が年輪のように取り囲む。

 城壁ほど立派なものではないがここにも小壁があり、かつては内を帝都、外を自由街としていた。

 しかし、今では住まう領民の増加と共に商域もだいぶ広がってしまった為、通商ギルドの陳情で百年ほど前にその自由街も取り込んだ外壁が出来、現在ではその内側を帝都としている。

 もっとも租税のかからぬ壁外での闇市も盛んで、かつての自由街ほど治安は良くないがその胡散臭い魅力にお忍びで通う貴族筋もいるとかいないとか。


 そんな闇市の中でも、一際剣呑な場所に。

「なんで、こんな所に店を構えるんだよ。」

 半泣きの小男が、現れた。

「ベルドさんがいなかったら、俺、三回は殺されてるよ!」

 無駄に目付きが悪く、怪しげで小さい東方人、ハルである。

 幻獣の姿でないからと颯爽と足を踏み入れて、ものの数歩で絡まれる。

 ど突かれ小突かれ水までかけられた。

「大げさな。」

 と、涼しい顔のベルドだが、ハルは本気で蒼白である。

 店番をしていたナーダルがハルの背後からやってきたベルドを見て、あーと言う。

「誰かと思ったら。随分とごゆっくりだったねぇ。ウーがここ半月、煩くて仕方がなかったよ。」

「はー。そこ、座らして?黒猫隊の買い付けに付き合って東方まで往復して来たんだよ。もうさ、ヌコ達の、」

「で、何を運んで来たの?」

「話くらい聞いてよー。ウーさんは居ないの?」

 異空間を開けながらハル。

「城域までルルリン連れて営業。なんだ、このガラクタは。」

 覗きこんだナーダルが顔を顰める。

「ガラクタじゃないよう。俺の宝物。」

 途中の土地土地で買い求めた木彫の動物やら、三角の布やら、湯呑みやら。砂やら石ころや貝殻もごっそりしまってある。

「うわっ。生ものが居る。」

 奥へ潜り込みガサゴソ漁っていたナーダルが珍しく驚愕の声を上げて、飛び出してくる。

「生もの?ああ、そうだった。ムイさん、ヨンさん、ハッタさん、蓮さん着いたよ。おーい?」

「あと半チャン!」

「結局帰路はずっと中で打ちっ放しじゃないですか。俺は雀荘じゃないんですよ?ブライデルに着きました。出て来てくださいよう。」

 ハルが呼びかけるが、しつこくあと半チャンとしか返事が無い。

「一体、何を連れて来たのさ。なんかあの人達モサモサだけど。」

「引率が大変だったから麻雀教えたらどハマりしちゃってさあ。いくら幻獣だからって寝食忘れてあの調子。」

「蓮て、あの幻獣か?」

「そうそう。エリム砦調停の、あの方。」

 中性的な美形の幻獣、だった筈だが。

「他の奴も幻獣?」

「そんな感じ。あちらでは神人って呼ばれている。こちらでは、ガメラ種?だっけ。」

「もっとマシな人を連れて来れなかったの?」

 うんざりとした顔でナーダル。ダメな幻獣がダメな仲間を連れて来た、それ以上の何事も無い。

 そんな顔である。

「でもガメラ種は角とか無いから見た目殆ど人間だよ?麻雀してなければ、普通だし。多分。」

 幻獣の感想はあてにならんと、店先で客寄せならぬ客払いをしてしまっているベルドに目配せをする。

 ふるふる。

 首が横に振られた。

 だめ押しで指でつんつんと異空間を指してから、手を横に振る。

 曰く、アレは使えん。

「この距離ですし、喋りません?」

「幻獣の守りは疲れた。」

 ハルもまとめて指さされる。

 だろうね、とナーダルはハルの戦利品のガラクタを思い浮かべる。

 きっと行く道々街々で石を拾ったり出店で買い物をしたり、を、する度に余計な騒ぎを起こしまくったのだろう。



 子ども幻獣の姿に戻って長持の中で昼寝をしていたのを、いつのまにかそのまま運ばれたらしい。

 ざわざわと懐かしい声がしている。

 うん、と、伸びをして。

「ただいまー!」

 ざわざわが、ひたりと止まる。

 カリオンの犬耳も、モナの猫耳も、その他の獣人娘達のいろんな耳も、ぺたりこと頭に張り付いている。

 幻獣怖い。

 ですよねー。

 思わず涙目になったハルを誰かが思いっきりど突く。

 普通に涙目のハルが振り返ると。

「土産、あるんでしょうね?」

 仲間の帰りを待ちわびていた煌華が仁王立ちでツンデレていた。

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