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転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
商都シロキオン
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彼女の秘密

 ちび竜がとことこ駆けてくる。

 背にモナとモフ。

 やや重そうであるが、そこは男子たる者、見栄の張りどころだ。

「二人は皆んなを集めてくれる?俺はちょい身支度してきます。」

「わかったにゃ。集めて来るにゃ。」

「お風呂も入ってくるといいのん。臭いのん。」

「…面倒くさい。」

「コーカが風呂沸かしてたにゃ。」

「あの人まだ居るの?暇なのかな。」

 ぼかっ。

 いきなり後頭部を叩かれる。

「一体何処に行ってたのよ。虫ケラは何処?」

「えーと。」

 ぼっちなのはこちらの幻獣も御同様だったようである。

 このお嬢さんが現れると話が進まない。

 ウィラードとヌコの出発を知らされなかったとブンむくれ、シロンとハルから離れたのを良い事にそういえばその後の展開を教えていなかった。

 わざわざ御注進に寄って行く獣人もいない。

 シロンが荘園を出た事も、ハルが壁で見張りをしていた事も知らなかったに違いない。

「ちょっとコーカさん。一緒に風呂まで来て下さい。」

 どかっ。

 蹴られた。

「なんで私があんたと風呂に行かないといけないのよ。寝言はねえ、死んでから言いなさい。」

「既にダイイングメッセージになりそうです。いや、あの、入るのは俺だけで。ちょっと内密のご相談を致したく。とにかく付いてきて下さい。」

 ぐい、と強引に煌華を背に乗せる。


 混浴を誘われたのではなく獣人に聴かせたくない話があるのだと流石に気付いて、早とちりした照れ隠しにハルの鱗を毟る。

「痛い痛い!何するんですか!」

「降りるわ。」

「降りて下さい!」

「それで、相談って何?」

 まず部屋に戻り、着替えを用意する。

 竜型だと引き出しが開けにくい。

 少し思案してから布団に潜り込んで人型に戻り、そのまま布団を身体に巻き付けてごそごそと引き出しを漁る。

「何やってるのよ?」

「え?風呂の着替えを。」

 そうか、とぽりぽり頭を掻く。

 部屋の外で待っていて貰えば素っ裸になって着替えても問題なかったな。

「汚いわねえ。」

 落ちるフケに煌華が顔を顰める。

「そういえばコーカさんて、」

 ふと雑念が浮かび、つい口に出してしまう。

「パンツ変えてます?」

 煌華は激怒した。

「違うんです違うんです。」

 平身低頭土下座で謝る。

「だって、コーカさん身一つでついてきたじゃないですか。着替えってどうしてるのかなと不思議に思っただけなんです。ごめんなさい。」

 そこいらのコンビニや百均で調達という訳にはいかない時代である。

「持ってきているに決まってるでしょ?」

「俺バカだから見えません。」

 まさか透明の服なのだろうか?

「馬鹿なのは知っているわ。大して衣装持ちでもないでしょうに、何で持ち歩かないの?」

「そんなもんいつも持ち歩いているんですか?」

 通りで女の鞄はパソコンも入って無いのに重いわけだ。

「だから、何で持ち歩かないの?不便じゃない。」

 寒くなってきたわね、と煌華はストールを取り出して首に巻く。

「待て待て待て。今、何処から出しました?」

「待って。まさか、使えないの?」

 空中からひょいひょいと服を出してくる。

「あんた、人間に飼われていたのよね?この力があるから幻獣って狙われるのに、笑っちゃうくらい使えないじゃない。飼い主も馬鹿だったのね。」

「幻獣のくせに使えないってよく罵られたけどそういう訳か…。」

 荷運び要員で売買されていたのに、異空間収納は出来ないわ竜型でもチビで馬ほどの力も無いわ、確かに使えない。

 愛玩観賞用の珍獣枠にしては酷い扱いばかりだと思ってきたが、そもそもそれが勘違いだったらしい。

 ぶるん、と頭を振る。

 嫌な過去は忘れよう。

 ばしゃり、とお湯が頭からかけられる。

「何するんですか!」

「フケが飛んだの。お湯かけてあげるから洗いなさい。」

 石鹸が投げつけられる。

 すっかり部屋が水浸しだ。

「わかりましたから、後ろ向いていて下さい。」

「ませがき。」

 へいへい。そういえば見た目は子供でございました。

 蹴られるのも嫌だが、全くのお子様扱いも癪にさわる。

 でも。

 …子どもだ。

 諦めて言いなりに身体を清める。

「その四次元ポケット、どれくらい収納力あるんですか?」

「まるきり物を知らないわけでは無いのね。そうねえ、限界まで詰め込んだ事はないけど。隠れんぼが出来るくらい?」

 大きさの喩えはいまいち分かりにくいが、それよりも大事な情報が出てきた。

「中に人が入れるんですか?」

「入れるけど、自分の空間に入ってしまうと出れないわよ?」

 さらりと怖い事を言ってのける。

 一体誰の空間で誰と隠れんぼしたのか大いに気になるが、変な事を聞いて叱られて楽しむ暇はない。

「獣人や人間も仕舞えますか?無事生きて出せます?ちょっと中見せて貰えますか?」

「絶対、嫌。」

 お湯が氷水に変わる。

 相当見られて困る物が仕舞われているらしい。

「ひゃっ!そうゆうの、やめて!たのんます。」

 慌てて身体を吹き上げて服を着る。

「大体、獣人を仕舞うとか何なの?そもそも何の相談なのよ。話が進まないじゃない。」

「そうでした。…外にお客さんが押し寄せているのは気付いてます?」

「殲滅してきましょうか?」

 相談の人選をしようのない状況が恨めしい。

「シロンの消息が分からない。戻りを待ってみたけど、そろそろ限界だと思う。攻め込まれるのも時間の問題だから何か手をうつ必要がある。」

「耳聞こえない?殲滅してくればいいんでしょ?」

「押しかけてくる都度にですか?魔力が尽きるまで波状攻撃を仕掛けてきたら?ここはシロンの魔術が無ければただの荒野ですよ?籠城しても冬を越せず飢え死にだ。なので、ここを明け渡します。」


 それが、ハルの出した答えだった。

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