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転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
ニコニコ街道かっこ仮
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帰還

 ニコニコ街道(仮)。

 後に一夜街道と呼ばれる更地を黒龍に乗り凱旋する。


 魔の森の中でも不思議と魔獣が現れないのはどうも焔がいるからというだけでなく、街道が幻獣の棲と同質の空間の所為らしい。

 小言めいた事を焔がぼやいているが、背に揺られる一行はヌコですら白河夜船である。

 シロンの荘園を出立してから僅か十日程の出来事だと言うのに、随分長い間旅をした気がする。

 幻獣の棲の地下道は、シロンに無茶をされてはたまらないからと焔が造成を請け負ってくれた。

 獣人とエリム砦とその本国リデル及びイズーリア連合国の調停は蓮が腰を据えて見守るという。

 その先、商都イズールやリュヘルの故国サーリフを訪れる前に、一度帰ろう。

 シロンの提案にヌコもウィラードも勿論異論などあるはずもなく。

 うつらうつらしている間に森を抜け。

 幻獣の長老達の呆れ果てた歓迎を受け。

 ハルを帯びたシロンと、身一つぼろぼろのウィラードと。

 ヌコに背負われてるんるんの煌華と。

 幻獣の棲を背にし懐かしの我が家へ帰還する。


 朝靄の中から不意に現れた人影を見て、見張りをしていたモフ、モナ、バニィが歓声を上げる。

「シロンさまー!」

「ヌコにぃ、また食べられてるにゃ。」

「お帰りなさいのん!」

 三人娘の声に次々と領民が集まってくる。

 煌華がヌコの横でにっこり挨拶をすると、一同ずさっと一歩後ろへ下がる。そしてヌコの許嫁だと聞いてあんぐりと口を一斉に開く。

 あとはシロンの話を聞きたがる者達が広場に居座り、自然と祭りになる。

 つまみ食いしながらどんどん肉を料理するバニィ。

 バーナーの魔法で片っ端から焼き上げるモフ。

 男顔負けの腕っ節でジョッキを運ぶモナ。

 彼女達にとっても、その他の領民にとってもシロンの不在は決して短くなかった。

 元奴隷であり、獣人である彼らがシロンの留守をどれだけ不安に思っていたのか。

 彼の帰還をどれほど嬉しく思うのか。

 緊張がほぐれて誰もが笑顔で杯を交わす。

 未だ道半ば。

 ただ街道が出来ただけで、先は見えぬ。

 だが今日ばかりは翼を休めよう。

「ハル。あとで君の好きな混浴もしよう。もう今日は羽目を外すよ。きっと気にいる。入っておいでよ。」

 うふふ、と笑って剣を外しそっと草むらに置く。



 たらふく食べて、たらふく飲んで、歌って踊ってまた食べて。

 領民達が幸せに胃をさすりながらうつらとする夕暮れ。

 シロンはそっと抜け出して地下の浴場へ向かう。

 キュキュと手書きで混浴と書いた札を下げる。

 中で先客が鼻歌を歌っている。

 ガラガラと扉を開けると歌が止む。


「やあ。」

「…騙された。」

 ハルが悔しそうにいう。

「すぐにウィラードさんとヌコも来るよ。異年齢異種族混浴。」

「うはあ。嬉しくない。」

 ぶくぶくと湯に潜る。

「はー。いい湯だね。」

 ざぷりと浸かり目を細める。

「なあ、」「ねえ、」

 二人の声がハモる。

「何だよ?」

 ハルが譲る。

「…ララルンちゃんってあの後どうなったんだろうね?」

 のんびりと言うシロンにハルが一瞬絶句する。

「僕たち、第三シーズン途中で転生しただろう。」

「ルルリンだ。つーか、今、それ訊くか?」

「ん。気になって。」

「よし、上せるなよ。ルルリンには原作があって、なんと、続きを知っていたりする。アニメ版にはオリジナルキャラクターが二人いて、そいつらが絡んだ回はちょっとわからないけど、本筋は原作に沿っているからな。で、ルルリンが魔法王国で双子の姉のロロリンと対決しているとこからだったよな。あの回は神回だった。見れて良かった。作画も良かったし、声優の」

 がらがらっと扉が開きヌコとウィラードが入って来る。

「おや、ハル殿はいつお戻りで?それにしても表に混浴ってあるから少し期待したんですが。」

 酒瓶を片手にウィラードがざぶんと浸かって来る。

 やっと煌華から逃げてきたのにここにも幻獣が居たと、がっくり肩を落としたヌコが間にシロンを挟んで浸かる。

「はー生き返る。」

「風呂での飲酒は危険ですよ。」

「固いこと言わんで下さい。これを楽しみに、」

 生き延びた、と言う、場を湿らせる言葉を濁す。

「…皆んな、ありがとう。また、一緒に旅の続きをしよう。」

「あー。出来たら遠慮したいです。」

「俺もです。」

「バニィさんとなら行くよ。」

「そこは、行こうって言ってよ。でもまあ、疲れた旅だったね、本当に。」

 シロンの言葉に、ハルもウィラードもヌコもただただ頷く―――

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