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花言葉の証

エリーゼは、ミレイユと一緒に劇場に来ていた。

スタッフに案内され、ボックス席に向かっていた。


ミレイユ

「エリーゼ様、この仮面は何ですか?」


エリーゼとミレイユの手には仮面が握られていた。


「今回見る劇は仮面舞踏会のお話で、見る側も一緒に参加するコンセプトだそうです。」


ミレイユ

「仮面舞踏会?」


エリーゼ

「参加者が仮面で顔を隠し、身分や素性を隠してダンスや会話を楽しむパーティのことです。」


ミレイユ

「わあ。素敵ですね。私も参加してみたいです。」


エリーゼ

「ふふ。もう少しすればミレイユ様にも招待状が届くようになりますわ。」


女性の声

「あら。エリーゼ様じゃなくて」


エリーゼが声の方を振り返る。仮面を被った女性が立っていた。

エリーゼは困惑していると、女性が仮面を取って微笑む。


エリーゼ

「あ。ヴィオレッタ様」


ヴィオレッタ

「珍しいですね。あなたが劇場に来られるなんて」


エリーゼは苦笑いしながら、


(心の声)

「はは。我が家の家計状況では、とても劇などの娯楽に回すお金なんてないもの。本当に久しぶりに来たわ」


エリーゼ

「本日はミレイユ様の付き添いで参りましたの。」


ミレイユ

「はじめまして。ヴィオレッタ様。ミレイユ・バーベルです。」


ヴィオレッタ

「あら。素敵な小さなレディですこと。

 私はヴィオレッタ・ローゼンハイムと申します。」


ミレイユは何かを考えている。


「あの魅惑の魔女さんのヴィオレッタ様ですか!」


エリーゼが慌ててミレイユの口をふさぐ。


エリーゼ

「申し訳ありません。ヴィオレッタ様。」


ヴィオレッタ

「ふふふ。いいのですよ。私が恋多き女なのは本当ですから」


エリーゼ

「はあ。・・・」


ミレイユがキョトンとしながら、


「恋多き?」


ヴィオレッタ

「ええ。私はいろいろな殿方と話すのが好きなんですのよ。

 人生は短いもの、楽しまなくてはいけないわ。」


エリーゼ

「・・・。そうですね。」


ヴィオレッタ

「そう言えば、この前お願いしていた代筆の手紙はとてもよく書けていたわ。またお願いできるかしら」


エリーゼ

「ありがとうございます。是非、またお受けさせていただきます。」


ヴィオレッタ

「あら。いけない。劇が始まってしまうわね。

 私は隣のボックスのようね。またお会いしましょう。」


ヴィオレッタは隣のボックス席に入っていく。

エリーゼとミレイユもボックス席に入る。劇場内が良く見える席だった。


エリーゼ

「わあ。良い席をご用意いただけて良かったわ。」


ミレイユが持っていたバッグからオペラグラスを取り出す。


エリーゼ

「まあ。準備が良いですね。それは最新のオペラグラスですね。」


ミレイユ

「はい。お母さまが折角の劇をもっと楽しめるようにってくださりましたの。」


エリーゼもオペラグラスを取り出す。年季の入ったオペラグラスだが、よく手入れがされている。エリーゼがオペラグラスで劇場を見る。斜め向かいの方向を見たときだった。見覚えがある二人組が親しそうに座っているのが見えた。


エリーゼ

「あれは。。。だめだ。このオペラグラスの倍率じゃ顔まではよくわからないわ。」


エリーゼが困り顔になっているのに気付いたミレイユが自分のオペラグラスを差し出す。


「エリーゼ様どうぞ。」


エリーゼ

「ありがとうございます。ミレイユ様。少しお借りしますね。」


エリーゼはオペラグラスを覗く。


「凄いわ。さすが最新型、遠くまでよく見えるわ。あの二人はと。。。

 やっぱり、セドリック様とアリアナ様だわ。」


「いくら仮面を付けているからといって、あの距離はないわ。仮にも他に婚約者がいるのに。。。」


エリーゼはミレイユにオペラグラスを返すと考え始めた。


「・・・。いえ。これはチャンスじゃないかしら。二人の不貞の証拠を掴められないかしら。」


・・・


ミレイユが声を上げる。


「わあ。綺麗な花束。見たことがないお花ばかり。」


エリーゼ

「花束?どこに花束が?」


ミレイユ

「エリーゼ様が先ほど見ていたボックスに大きな花束があるの。」


エリーゼ

「ミレイユ様。オペラグラスをまた借りてもよろしいでしょうか?」


ミレイユ

「はい。かまいません。どうぞ。」


エリーゼがオペラグラスを見て花束を確認する。

挿絵(By みてみん)


・赤いアネモネ:真実

・アスチルベ:恋の訪れ・自由

・アイビー:永遠の愛・結婚

・ブーゲンビリア:永遠の愛、あなたしか見えない

・イカリソウ:君を離さない、あなたを捕まえる


エリーゼ

「わあ。隠す気がないのかしら。。。」


エリーゼはいろいろな花の種類、その花言葉まで

祖母から教えられていたため、すぐに花束の意味が分かった。


エリーゼ

「本当におばあ様の教えは役に立つわ。

あとあの花束をセドリック様がアリアナ様に送ったものだと裏が取れれば・・・」


「・・・!そうだわ。様々な花束を毎日のように送られているヴィオレッタ様なら、送られた花束の花屋がわかるかもしれないわ。後でお聞きしにいこう。」


劇が始まる。エリーゼはミレイユにオペラグラスを返すと、劇中も自分のオペラグラスで二人を見ていた。


エリーゼ(心の声)

「ぼやけてあまり見えなかったけど、終始いちゃついていたわね。。。

何だかムカついてきたわ。ガウェイン様だって本当はお優しいし、実は努力家なのに。見た目だって痩せればきっと物凄くかっこよくなると思うんだけどなあ。アリアナ様は人の見る目がないのね。」


ミレイユがエリーゼに話かける。


「エリーゼ様。素晴らしい劇でしたね。私、主人公の王子が秘めた恋心をお姫様に花言葉の込めたラブレターを送るシーンは感動しました。私ももらってみたいです。」


エリーゼ

「花言葉、ラブレター・・・あれ。あの花束の花とこの前代筆した手紙に使った花言葉、同じじゃない?」


・・・


エリーゼ

「ミレイユ様。ありがとうございます。とても良い発見がありました。

 劇をご一緒できて本当に良かったです。」


ミレイユ

「?」


エリーゼはミレイユの母親の計らいで、学園の寮ではなく実家の伯爵邸まで馬車で送ってもらった。


エリーゼ

「久しぶりの実家だわ。みんな元気にしてるかしら」


エリーゼが門をくぐり玄関に向かうと、執事のブルーゲルが迎えた。


ブルーゲル

「エリーゼ様。お帰りなさいませ。アリアンヌ様がお待ちです。」


エリーゼ

「おばあ様が私を?」


ブルーゲル

「はい。至急、お嬢様にお話があるそうです。」


コン、コン、コン。エリーゼはドアをノックする。部屋の中から、


「おはいりなさい。」


エリーゼが中に入ると、祖母のアリアンヌが立っている。


エリーゼ

「おばあ様、ただいま戻りました。私に御用があると伺いました。」


アリアンヌ

「おかえりなさい。エリーゼ、元気そうで良かったわ。

 早速ですが、我が伯爵家にある方から融資のお話が来ています。」


エリーゼ

「融資?どなたからですか」


アリアンヌ

「貴方も承知の通り、我が家は先代の投資の失敗により財政がよくありません。」


「融資を申し出られた方は、それを承知のうえでの申し入れです。」


エリーゼ

「・・・。何が条件ですか。」


アリアンヌ

「やはり、わかりましたか。そうです。この融資には条件があります。その条件は、ガウェイン・フォン・アシュクロフト様に関わらないことです。」


エリーゼ

「!」


エリーゼ

「その融資を申しこまれたのはセドリック様ですね。」


アリアンヌ

「ええ。そうです。あの方は次期アシュクロフト家の当主の座を望まれています。少しでも不安要素を取り除きたいのでしょう。」


エリーゼ

「・・・」


アリアンヌ

「貴方はどうしますか?この融資のためにガウェイン様の手を離しますか?」


エリーゼは大きく深呼吸をする。


「いいえ。私はガウェイン様にお約束いたしました。必ず、あなたを変えてみせますと。融資の話は我が家にとってとても好機だとはわかっておりますが、私はガウェイン様に後継者になっていただきたいのです。」

挿絵(By みてみん)


アリアンヌがまっすぐにエリーゼを見る。


「そうですか。わかりました。融資の件はお断りいたします。」


エリーゼ

「!!よろしいのですか」


アリアンヌ

「ええ。あなたがガウェイン様には侯爵家の後継者になりえると思うなら、最大限ご協力しなさい。必ず、ガウェイン様を変えてさしあげるのです。」


エリーゼが微笑む。


「はい。もちろんです。それにガウェイン様はもう変わり始めてます。」


エリーゼは翌日からより一層、ガウェインと一緒にダンス、

マナーなどの特訓に勤しんだ。時は流れ3か月目に入る。

後継者パーティの日が近づいてくるのだった。

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