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侯爵令息の食生活改革、まずは料理長の説得から

翌日の午後、エリーゼとガウェインは中庭のベンチで3か月で見返し作戦の会議中。


エリーゼ

「ガウェイン様。まずは1週間の朝・昼・夜の食事内容と間食も含めた

 普段飲食している内容を、このノートに書いてください。」


ガウェイン

「何でそんなことしなくちゃいけないんだ」


エリーゼ

「今の食事内容が分かれば、ダイエットへ向けての献立が立てられます!」


ガウェイン

「献立?君はそんなことまでできるか?それは料理人がするものだろ。」


エリーゼ

「・・・。我が伯爵家にも料理人はいますが、少しでも節約したいけど

 美味しいものを食べたいと思って、料理人と一緒に私も献立を考えてるんです。」


ガウェイン

「節約料理。。。野菜ばかりの献立は僕には無理だぞ。」


エリーゼ

「大丈夫です。バランスの取れた食事にしますから。

 ただ節約だけで安い野菜だけの料理じゃ栄養バランスが取れず、

 体を壊してしまいますから」


ガウェインはエリーゼと話しながら一週間分の食事・飲食を書き出した。


月曜日:

  朝 厚切りトースト3枚、スクランブルエッグ(卵3個)ベーコン 4枚

  昼 ステーキ、ライス大盛、ヨーグルト、コーンスープ

  夜 チキンのクリーム煮、ガーリックトースト、チョコアイス、


火曜日

  朝 フレンチトースト 4枚、ソーセージ 4本、

    プレーンヨーグルト(はちみつ入り)

  昼 ハンバーグ(250g)、シナモンロール 3個、フライドポテト

  夜 カルボナーラ(大盛り)、ガーリックトースト、プリン

・・・

間食 ダブルチーズバーガー 3個、甘いコーヒー、シェイク(L)、ポテトチップス、コーラ


エリーゼが内容を確認しながら顔を青ざめる。


「・・・。ガウェイン様。」


ガウェイン

「何だよ。」


エリーゼ

「・・・。ガウェイン様このままだと40歳まで生きれませんよ。」


ガウェインが驚いて固まる。

「は?」

挿絵(By みてみん)


エリーゼは気を取り直して、


「これはやりがいがありますね、明日までに1月分の献立を考えてきます。」


ガウェイン

「僕の食生活はそんなにやばいのか。。。」


エリーゼ

「大丈夫です。まだ間に合います。」


ガウェイン

「期待してる。。。」


エリーゼは徹夜で1月分の献立を考えた。


「ううう。さすがに眠いわね。でも力作ができた。これが上手くいけば体重が減ってくるはず。」


エリーゼはガウェインの姿を探す。ガウェインは男子生徒と二人でテラスでお茶を飲んでいた。


「ガウェイン様と一緒にいるのはフィン・グランディス様だわ。」


エリーゼが二人に近づく。


「ごきげんよう。ガウェイン様、フィン様、少しお話してもよろしいですか」


フィン

「おや。珍しいこともあるもんだ。ガウェインに話しかける奇特な人物がいるもんだね。

 しかもそれがエリーゼ嬢だとは!」


ガウェインがフィンを睨む。


「珍しくて悪かったな。」


ガウェインがエリーゼを見る。


「君が僕を訪ねて来たってことは献立が完成したのか?」


エリーゼは献立(レシピ本)を差し出す。


「力作です!きっとガウェイン様にも満足いただけるはずです。」


ガウェインはレシピ本を受け取ると、中を見る。びっしりとレシピが細かく書かれている。


ガウェイン

「・・・。家の料理長に見せてみる」


エリーゼ

「はい。よろしくお願いします」


フィン

「献立?ガウェイン、君もしかしてダイエットするのかい?僕がどんなに言っても間食を止めない君が!?」


ガウェイン

「・・・。そうだよ。悪いかよ。」


フィン

「いや。大賛成だよ。三日坊主にならないように僕が見張ろう。」


エリーゼ

「ふふふ。お二人は仲がよろしいんですね」


ガウェインが嫌そうに、


「腐れ縁だよ。フィンの家とは領地が隣接していて、昔から一緒だっただけだ」


エリーゼ

「そうなんですね。フィン様よろしくお願いします!」


フィン

「任せてよ」


エリーゼ

「では明日にでも献立内容のお話しをお聞かせください。」


ガウェイン

「わかった」


ーー翌日 中庭ベンチ


エリーゼ

「ガウェイン様、どうでしたか?」


ガウェイン

「・・・。ダメだった。」


エリーゼ

「ダメ?レシピの料理、美味しくなかったですか?」


ガウェイン

「違う。料理長が献立の料理を作るのを拒否した。。。」


エリーゼ

「?拒否。どうしてですか」


ガウェイン

「坊ちゃまの料理は自分が責任をもって料理しています。

 坊ちゃまはお好きなものだけ食べていてくださればよいのです。

 と言って拒否された。」


エリーゼは立ち上がり、


「ガウェイン様。突然で申し訳ありませんが、今からお屋敷に伺ってもよろしいでしょうか」


ガウェイン

「何をする気だ。」


エリーゼは優雅に微笑むと、


「料理長に直談判いたします。」


ガウェイン

「君、本気か。」


エリーゼ

「もちろんです。さあ、早速向かいましょう!」


ーーアシュクロフト邸


豪華な門をくぐるとそこには手入れが行き届いた見事な庭園が広がり、

その奥には重厚な作りの荘厳な屋敷があった。


「うああ。私の家の優に3倍以上はあるわ。やっぱり侯爵家は違うわね。」


ガウェイン

「はあ。エリーゼこっちだ。」


エリーゼは客間に通される。コン、コン、コンとノックの音。


ガウェイン

「入れ」


料理長が入ってくる。40歳くらいのシェフ姿の男性が入ってくる。


料理長

「坊ちゃま、お呼びでしょうか」


ガウェイン

「ああ。昨日の献立(レシピ本)を書いたエリーゼ嬢だ。お前に話があるそうだ。」


エリーゼ

「料理長さん。私の書いた献立はどこがいけないのでしょうか」


料理長

「ご無礼を承知で言わせていただきます。」


「あの本にはガウェイン坊ちゃまのお好きなものが一つもありませんでした。

 エリーゼ様のレシピはどれも工夫がされていて素晴らしいですが、

 食べる側の喜んだ顔が見えません。」


エリーゼ

「・・・。さすが料理長ですね。ただ、あなたも本当は分かっているんじゃないですか、このままだとガウェイン様のためにならないと。」


料理長

「・・・。申し訳ありませんが本日の夕食の仕込みがありますので、これにて失礼いたします。」


料理長は一礼すると出ていってしまった。エリーゼは考えこむ。

・・・


ガウェイン

「どうする。我が家では料理長以外にも料理人が複数いるから、それに作らせるか?」


エリーゼ

「いえ。私は彼に作っていただきたいのです。」


ドアのノックの音、コン、コン、コン。ドアが開き、上品なドレスを着た婦人が入ってくる。


「ガウェイン、お客様を私に紹介して下さらないのかしら?」


ガウェイン

「母様、お加減はよろしいのですか?」


ガウェイン母

「ふふ。今日は調子が良いの。それにガウェインが家にご友人を連れて来るなんてお会いしないわけにはいかないわ」


ガウェイン母がエリーゼを見る。


「私はクラリッサ・フォン・アシュクロフトと申します。よく来てくださいました。」


エリーゼ

「突然お邪魔してしまい。申し訳ありません。わたくしはエリーゼ・アーヴェントと申します。」


クラリッサ

「先ほど料理長が部屋から出てくるのが見えたけど、どうかしたのかしら。」


ガウェイン

「それは。。。」


エリーゼ

「クラリッサ様。私はガウェイン様を変えて差し上げたいんです。」


クラリッサ

「?」


エリーゼ

「ガウェイン様を誰もがアシュクロフト家の後継者に相応しいと思われる人物にするとお約束いたしました。その為にもまず栄養面での見直しが必要です。」


ガウェイン

「エリーゼは僕のために献立を考えてくれたんだ。どれも良くできていて、これなら僕も無理せずダイエットできると思うんです。」


クラリッサは献立(レシピ本)をゆっくりと読む。


クラリッサ

「エリーゼ様、ありがとうございます。私は栄養学に詳しくはありませんが、これは栄養バランスが取れた素晴らしいものだと思います。」


エリーゼ

「ありがとうございます。でもそれだけじゃ、料理長を説得できません。ガウェイン様、お好きな食べものをお聞きしてもよろしいでしょうか」


ガウェイン

「僕が好きなもの。。。」


クラリッサ

「エリーゼ様、ガウェインはアップルパイが好きなのよ」


エリーゼ

「アップルパイですか」


ガウェイン

「確かに僕はアップルパイが好きだけど、流石に僕もアップルパイは高カロリーなことくらいわかる。献立に入れるのは無理だ」


エリーゼ

「大丈夫です。私に考えがあります。」


エリーゼは手帳を取り出すと、素早く献立本にアップルパイのレシピを追加する。


「お待たせしました。ガウェイン様、クラリッサ様、申し訳ありませんが再度、料理長に会わせていただけないでしょうか?」


クラリッサ

「いいでしょう。でもエリーゼ様。料理長を説得できる自信はありますか?」


エリーゼ

「はい。お任せください。」


ガウェイン

「・・・エリーゼは堂々としていて凄いな。僕とは大違いだ。」


クラリッサ

「ガウェイン・・・」


エリーゼ

「ガウェイン様、きっと食べ物を変え、いろいろと環境を変えることで自ずとそうなります。いえ。私がそうしてみせます。」


ガウェイン

「エリーゼ。」


クラリッサ

「ふふ。それでは最初の難所を乗り越えなければいけないわね。」


クラリッサが使用人に料理長を呼んでくるように言う。


しばらくして料理長が部屋に入ってくる。


料理長

「まだ、お話しが?」


エリーゼが献立(レシピ本)を渡す。


「どうぞ。最後のページにガウェイン様の好きなアップルパイを加えました。料理長がおっしゃる通り、私は食べる側のことを考えていませんでした。」


料理長がレシピを見る。


「・・・。これは、パイ生地の代わりにライスペーパーを使っている。砂糖もラカントになっている。この短い時間によく思いつきましたね。」


エリーゼ

「実は私もアップルパイが好きなんです。家でよく作っています。パイ生地よりライスペーパーなら日持ちもよくて、沢山作って保存してるんです。」


ガウェイン

「料理長がいつも僕の好きな食べものを作ってくれているのは分かってる。でも僕は変わりたいんだ。協力してくれないか」


料理長

「坊ちゃま。・・・。アップルパイは坊ちゃまがお小さい時に、他の食べ物を食べてくださらない時も食べてくださっていましたね。」


ガウェイン

「料理長はなぜそこまで僕に気を遣ってくれるんだい?」


料理長

「坊ちゃまは覚えていないかもしれませんが、私がまだこのお屋敷に来たばかりのころに、貴重な食材を焦がしてしまったことがありました。私はクビになると思っていましたが。坊ちゃまがこれは美味しいからと、全て食べてくださりました。」


ガウェイン

「・・・。そんなことは覚えていないな」


料理長

「坊ちゃまに確認したいことがあります。この献立で続けられますか?」


ガウェイン

「今まで何度も逃げた。今度だけは逃げたくない。」


料理長はエリーゼの方を向き、


「エリーゼ様。先ほどまでの非礼の数々、お許しください。私も微力ながらお手伝いさせていただきます。」


エリーゼ

「ありがとうございます。食生活が変わるのは大きな一歩です。」


エリーゼたちは他の献立レシピの話をして、時間は過ぎて行った。


エリーゼ

「申し訳ありません。そろそろ寮の門限に間に合わなくなりますので、お暇をさせていただきます。」


クラリッサ

「あら。残念ね。またいらしてね。」


エリーゼ

「はい。ありがとうございます。クラリッサ様。」


クラリッサがエリーゼに近づき、ガウェインに聞こえないように、


「よろしくお願いしますね。エリーゼ様。ガウェインは口下手ですが本当はとてもやさしい子なんです。」


エリーゼ

「・・・。わかっています。数日ですが一緒に過ごして、本当はお優しい方なんだということがわかりました。」

挿絵(By みてみん)


ガウェイン

「何を母様と話しているんだ」


エリーゼ

「ふふ。内緒です。」


ガウェインがジト目になる。


エリーゼ

「ガウェイン様、食生活の目途はたちましたので、今度は運動も兼ねたダンスレッスンとマナーの特訓をいたしましょう」


ガウェイン

「君は次から次へ休む暇もないな・・・」


エリーゼ

「時間を無駄にはできません。明日から早速始めましょう。」

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