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転生令嬢と黒猫の秘密の計画 〜冷遇されているので偽装結婚から一発逆転狙います!〜  作者: 鳴神楓


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14/16

14.孤立する伯爵家

 新作戯曲『黒猫と龍の騎士』が引き起こした予期せぬ「副作用」――。


 それは、劇の感動が広まれば広まるほど、世間の目が「現実の不遇な環境」へと向けられていったことだった。 


 物語の中で主人公の姫を虐げ、売り飛ばそうとしていた冷酷な悪役一族について、王都の噂好きなお喋りたちの間で、誰からともなく囁かれ始めたのだ。


「ねえ……このお話、どこかで聞いたことがない?」

「そういえばオルセン伯爵家……。

 長女のエリーゼ様を物置小屋に押し込めてメイド扱いしていたって話、本当だったらしいわよ」


 伯爵夫妻やアメリアはエリーゼのことを隠していたつもりだったが、屋敷の使用人やエリーゼの親戚筋から噂は静かに広まっていた。


「まあ嫌だわ!

 実の娘をそんな目にあわせて、挙句の果てに金のために商人へ嫁がせたんですって?」

「今やボールドウィン商会は大繁盛で、あのエリーゼ様が劇の企画や演出で大活躍されているのにねえ。

 お可哀そうに……」


 一度広まった噂は、劇の大ヒットとともに瞬く間に社交界全体へと駆け巡った。


 さらに拍車をかけたのが、いまや国家の英雄となったルカの存在だ。

 ルカが王立魔術師団の公式な場で「僕がこうして力を得られたのは、どんな時も優しく見守ってくれた大切な方のおかげです」と語ったことで、世間の熱狂は最高潮に達していた。


────────


 その頃、オルセン伯爵邸の雰囲気は最悪の一途をたどっていた。


「どういうことなのよっ……!!」


 アメリアがキーキーと金切り声をあげ、お気に入りの高級茶器を床に叩きつける。


「お茶会に行っても、誰も私と口をきいてくれないのよ!?

 みんな遠巻きに私を見て『あの悪役の妹よ』なんてヒソヒソ噂して……! 

 お母様、なんとかしてよ!」


「お落ち着きなさい、アメリア……っ」


 継母も青ざめた顔で震えている。

 貴族の社交界において、「冷酷で野蛮な一族」という評判が立つことは死活問題だ。

 招待状はピタリと止まり、露骨に避けられるようになっていた。


「くそっ……! 

 あの生意気な女め……!」


 オルセン伯爵は机を強く叩き、不機嫌そうに唸った。


「おい! 

 ボールドウィン男爵家に連絡を取れ! 

 エリーゼを一度実家に戻らせるのだ! 

 実家に戻って私たち家族と仲良く社交界に顔を出せば、嫌な噂も消えるはずだ!」


 焦った伯爵は、親の権威を振りかざそうとしたが――。


「申し訳ございません、伯爵閣下。

 ボールドウィン男爵様からは『妻は多忙につき帰省はお断りする』とのご回答でございます」

「なに……!?」

「それと……王立魔術師団のルカ様からも、書簡が届いております」


 使いに出されていた使用人が恐る恐る差し出した手紙を開いた伯爵は、そこに書かれた内容に絶句した。


『これ以上エリーゼに不当な圧力をかけるようであれば、国家の英雄として、オルセン伯爵家へのあらゆる魔術的・経済的支援の停止を国に申し入れさせていただきます』


「な……っ! 

 あの若造が……この私を脅すというのか!?」


 手紙を握る伯爵の手がガタガタと震える。


 いまやエリーゼの背後には、大商人ボールドウィン男爵の資金力と、国家の英雄ルカの権力が控えている。

 かつてのように大人しく従わせることなど、とうてい出来はしないのだった。


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