3章⑪
「お疲れ様。バンさん」
「あ、はい。テトラさんも。助かりました」
その後俺は、テトラさんを家まで送ることになった。本当はベアさんと顔を合わせるかもしれないのでちょっと避けたかったのだが、孤児院の子供たちが許してくれませんでした。おませさんたちめ。
「ううん。私こそ。孤児院のために頑張ってくれて、改めてありがとう。あと、そのためにワンちゃんみたいになったのも……ふふっ」
「か、からかってます?」
「いや、単純に今思い返したら面白くて。んふっ。ふっ。ふへっ」
「いや笑いすぎですって」
「ご、ごめっ。あはっ。なんかツボに入っちゃったっ。んふふっ」
にしてもこの人もこの人で結構変だな。思い出し笑いで急にツボったりして。こういうところを見るとベアさんと仲が良いのも頷けるかもしれない。
あと、お茶目なところは聖女様と似てるかも?そういえば金髪だし。顔立ちも改めて見るとやっぱりどこか似てる。全体的に薄めだけど整ってて。
「ふ~っ。ごめんね。面白くてつい。あとご気分を悪くされてたら重ねて謝ります」
「はい。まぁ、ベアさんに言わなければいいですよ。あの人、それ聞いたらめちゃくちゃ俺の事弄ってきそうですし」
「うん。分かった」
そういえば、いつからか心の中のもやもやした思いは相当薄まっていた。なんだか「彼女」のことも、アレがあってまだ気まずいのはそうなんだけどもうあんまり嫌な気持ちにはならない。とにかく猫ちゃんのことだけ考えて動いてる間に色々吹っ切れたのかな。あとは、今日の事で凄くたくさん思うところがあったからか。
「いい子たちでしょ。孤児院のみんな」
「……はい。そうですね」
孤児院は、関係者であるテトラさんを前にしているからお世辞を言った、というわけでは一切無く本当に良い所だった。というか本当に子供たちに癒された。最初こそ、猫を探してきたという理由だけで心の底から懐いてくれることにびっくりしたけどね。でも悪い気はもちろんしていない。
「改めてだけど、あの子たちと遊んでくれてありがとう。大変じゃなかったかな。今日の事で疲れてたでしょ?」
「いや、むしろ楽しかったです。まぁ相当疲れましたけど。っていうかあの子たち、俺ら冒険者より体力ないですか?」
「ふふふ。そうかも。私もあそこに行く日はいつも一緒に遊ぶんだけど、帰る時にはクタクタになっちゃう。もう歳かな?」
「いやまだ成人したばっかりですよ俺たち」
むしろ、接している間に気付いた。ああして感謝されるのはすごく嬉しいって事に。しかも純粋で、嘘偽りない彼らからだと猶更。
あと、だからといって聖女様からの感謝が嬉しくなかったわけでもない。というかあの人だって言葉が真っすぐだったのをはっきり覚えている。テトラさんもそう。
そして、俺はそれを受け入れてもいいんだってことも分かった。だって一般的に見ればあんまり大したことじゃないかもしれないけど、彼ら彼女らにとってはどうやらそれぐらいのことをしたっぽいから。そう思うと素直に受け入れられた。
だからか今、すごく気分が良いです。美味しい料理を食べたのもあるけどね。
「そうだ。ところで――」
さらに、そんな気持ちだからもっと考えました。
「ベアとは、どう?」
「……」
彼女の事をです。
「えっと……」
「って言っても、昨日今日の事は大体想像つくんだけどね。あの子にしては帰りがとっても早かったから」
「……はい」
しかも、トラウマの事を隅に追いやれた結構安定した精神状態で。
「なんて、こんなこと言われてすぐこうですって話せるわけないよね。あと、私相手だと気まずいだろうし」
「あ、いやそんなことは……」
「だからさ、私とあの子がどういう関係かって、聞きたい?」
「へ。あ、えっと。じゃ、じゃあお願いします」
「うん」
だから正直何があったか話しても良かったんですが、でもまぁベアさんのことテトラさんが聞かせてくれるってなら黙って聞こうか!ちょっと気になるし!なんで彼女があんなにテトラさんの事大事そうなのかとか、逆にテトラさんは彼女の事どう思ってるのか知りたいし!




