3章④
「へっ?」
え!?ちょ、ちょっとオーリーさん!?俺たち親友じゃ!?え、女神様!?これどうしたら!?
いやでも、これって文脈的にはいきなり告白されるデモンストレーションってことでは?だよね!?
「付き合って欲しい。僕と。実はずっと言ってなかったんだけど、僕は同性が好きでね。最初見た時から、ずっとこうしたいって思ってた」
「そ、そうなのか?」
「……って言われてどう思った?」
「へ、あ、あぁっ!そ、そ、そうだな……」
そ、そうだよね!そういうことだよね!び、びっくりした~っ……。なんか急にガチっぽい雰囲気だすからビビっちゃったよ。
ってびっくりしてるな俺!そ、そうか。確かに俺今、正直困ったかも。もしこれを断ったら俺の交友関係はどうなるのとか、せっかく組めたパーティはどうなるのとか、やっぱり少し考えてしまった。あとは真剣だから茶化してこの場を凌ぐなんてこともできる気がしなかったし、何より返答次第で傷つけてしまうとしたら怖かった。彼は良い奴なのだから。
オーリー相手でこうなんだし、例えばもっと関係が薄い人から急に告白されたらより驚くかも。関係が薄いからむしろあんまり考えず断って良い、とも思うけど、それで角が立つ可能性だってある。もし「告白した」と言う立場を振りかざされたら、なのに全く受け入れて貰えなかったと不平不満を流されたら、もしかすると困るのは告白された側かもしれない。いきなり告白されただけなのに。
てなると確かに、多少好意を匂わせてからここに到達して欲しいと思うのは当然の事であるような気はする。モテるからこそこう思うんだろうけどね。
「色々考えたな。どうすればいい?って」
「でしょ。で、それって結構負担だって僕は思うんだよね。心が傷ついたりもする。だって、断ったらちょっと悪者になっちゃうし」
「うん」
「しかもそれが、なんとも思ってない相手から急に来たら?ちょっと怖かったりもするかもだよね。その人の事よく知らないから、断ったら何される?とかもあるし」
「なるほど……」
よくよく考えてみると、なるほど急な告白は少し暴力的かもしれない。そうだ。いきなり距離詰め過ぎだと解釈できるんじゃないだろうか。てなったら俺も嫌だ。こっちはまだ心の壁が分厚くあるのに、それを無理矢理こじ開けられようとするんだから。……まぁでも今俺、美人の強引な押しに負けてセフレにされてるんだけど。
あ!てなると彼女がやたら引け目を感じてるっぽかったのにも頷ける。しかもベアさんはサキュバスで、その種族としての特性によって俺みたいなヤツは猶更自力で断り切れないんじゃないか。つまりはなんなら、暴力とだって言えてしまう。俺がチョロかったからか今までそうは思わなかったけど。あるいは男って簡単に気持ちよくなれるからね。気持ちよくなったら嬉しいし。
それを分かってたから、彼女は引け目を感じてあれほどまで親身になってくれてたんだろうか。う~んでもそれはそれで悲しいな。だとしたら普通に好意で俺に色々教えててほしい。
「っていうか、それってデートに誘う時もそうか?」
「そうかもね。告白ほどじゃないにしろ、嫌がる人はいてもおかしくないと思う。告白と同じで決断を迫る行為ではあるからさ。やっぱり人に何かを迫るって、良くも悪くも自由を奪ってるわけだし」
「あ~……」
「で、やっぱりそれって良くないじゃん?どう過ごすかなんて人の自由だからね。あと、そもそもやっぱり人を傷つけたり、不快にするのって良くないから。恋愛でもそれは変わらないし」
そして告白だけじゃなく、なんならデートの誘いもその可能性があるという事実に気付く。
ちなみにこの世界、「人は人」という考えがかなり根付いている。前世で俺が生きていた時代の若い価値観が、色んな世代の人に浸透していると言ってもいい。「豊作の加護」によって、家庭菜園ぐらいの規模でも食うには困らないからだそうだ。生きていくうえであんまり人に助けてもらう必要が無いから個人主義が発達したとか。あと王都ってめちゃくちゃ人口が密集してるからね。東京みたいに。だからいちいち人付き合いしてたら疲れちゃうっていう認識もあるようです。
でも、そうなったら一体どうやって俺は彼女との仲を進展させればいいんだ!む、ムズい。恋愛ムズい!
「とはいえ、まぁ全部相手次第だよ。急に告白されるのも、僕は良くないって思うだけ。逆に好意を伝えられたら全然嬉しいって人も居ると思うし」
「へ?そ、そうなの?」
「ただ、真っすぐに受け止められる人ばっかりじゃないっていうのは頭に入れておいてもいいかもね」
「……分かった」
「まぁでも、今のバンくんとベアちゃんの関係ならあっさりOKしてくれるんじゃない?」
「え」
え?え、だってデートの誘いも若干暴力的だって……。
「だって、最初に戻るけどベアちゃん、バンくんのこと結構好きだと思うけどね」
「へッ!?」
「友達として」
「あっ、そっ、そっ、そうだよね!友達としてね!うん!」
分かってた分かってた完っ全に分かってた。そうだよね。友達としてだよね。やっぱりそうだよね。うん。
で気を取り直して、なら次会う日に誘ってみちゃうか?
「まぁでも、だからって考え無しに誘っていいとは思わないけどね。バンくんがベアちゃんともっと仲良くなりたいなら、猶更ちゃんと相手の事を思いやるべきだよ。どうデートに誘えば負担にならないかなとか、どうデートすれば楽しんでくれるかなとか」
「ほ~……。ん。分かった、かも。たぶん」
う~んどうなんだろう。流石にちょっとずつ「好き感」を出していく必要があったりするか?びっくりされないように。でも彼女の事だから俺がどう思ってるかもある程度分かってそうではある。
ただ、だからと言ってそれに甘えて全くジャブを打たないのも違う気はするな。うっすら好意を匂わせたり、ってどうやるかは分からないけどやってみたりしていくらか様子を見るべきだったりするんじゃないだろうか。あるいは「これ恋愛的な意味で好かれてるかも?」と多少の心構えをしてもらうとか。
「とはいえ、別に今までの話って単に僕がそうあって欲しいってだけだけどね。だから、これも単なるわがまま。暴力だよ」
「そう、なのか?」
「多分ね。だって、それこそ僕がどうやったら幸せになれるか考え続けて?なんて、そんなのどう考えても大変だし。まぁだからこそ僕はいいなって思うんだけどね。だから、これは僕が思う恋愛の正解ってだけ。それに僕だってこの正解が変わる可能性もあるし」
「ふ~む……」
悩む俺にやがてオーリーはそう纏めるが、彼の考えは俺が思う「真実の愛」に近いような予感はした。まぁまだ定まってるわけじゃないんだけどね。でも、誰かの事を想い続ける、幸せになって欲しくて考え続けるって美しい。美しくて、いかにも真実っぽい気はする。
よし、ならじゃあ、今はとりあえずとにかくベアさんの事を考えまくってみよう。特に、彼女との付き合い方はどうすればいいかについて。あ、もちろん人付き合いの方ね。
で、それはそれとして、オーリーさんはなんでこんなに達観してらっしゃるんですか?流石に気になるので聞いてみる。
「っていうかすごい考えが固まってるな。……ご経験がおありで?」
「うん。まぁね。昔色々あって、その時相手に言われたことでこういう考えになってるよ」
「……ちなみにちょっと話してくれたり?」
「それは……長くなるしまた今度で。でも簡単に言うと、自分の考えが正しいって押し付けすぎちゃったって感じかな。そうしたら、それは暴力だ~、って」
「へぇ。オーリーでも失敗することあるんだな」
「そりゃあるよ。むしろたくさん失敗してきたから今があるって感じかな」
返ってくる答えは、ちょっと意外だった。だって彼、初対面でもう完璧超人に見えてたから。なので俺と会う前もずっと完璧超人かと。
とはいえまぁ、よくよく考えてみるとそんなわけないか。きっと彼にも、俺と同じ恋愛赤ちゃんの時代があったのだ。それから大量に経験を積んでこうなったはず。というかそうであって欲しいな。だとしたら俺もこれからこんな風に恋愛を理解できるって事だから。
「だから、バンくんもこれからたくさん失敗するといいよ。で、まぁキツかったら僕を頼ってくれたまえ。全然構わないからね」
「おう。ありがとなオーリー」
よし!じゃあこれからたくさん経験積んでやるぞ!んで何ならコイツより恋愛マスターになってやる!しかもそしたらもっとチートが強くなるわけだからね!
「ま、ホントはバンくんの恋愛を見てニヤつきたいだけだけど」
「うわ言ったな!最悪だよ!せっかくもっと尊敬したとこだったのに!」
「あはは。ごめんごめん。正直なもので」
「もっと最悪!」
うわ猶更燃えてきた!絶対コイツ超えてやるわ!んでなんなら俺が相談に乗る側となってやるぞ!よっしゃいくぜ恋ヶ崎伴!




