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魔法設計士  ― この世界の魔法、全部バグってます  作者: 有松
第5章 迷宮深層 ― 世界の源へ
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第49話 魔力源の正体


その入口をくぐった瞬間、空気が変わった。

外の冷気とは違う湿り気を帯びた重い空気。

そして―― わずかな光。


ザイオン迷宮の壁を淡い光が流れている。


「…明るい?」


松明はなくとも視界は確保できていた。

アリソンは壁に手を触れる。


「魔力だ」


血管の流れのように壁の内部を魔力が走っている。

それが光を発していた。


「こんな洞窟は見たことがないな」


グラムベルクが不思議そうに周囲を見渡している間に、ブリッタが先頭に立つ。

大斧を肩に担ぎ、笑みを浮かべながら振り返る。


「いいか、迷宮ってのはな考える前に慣れろ」


その直後。


 ーーコン、ココン!


石が転がる音とともに、物陰から影が飛び出した。


 ―― 一体のゴブリン


粗末な武器を持ち、低い唸り声を上げる。

ターニャが剣を取り出そうと身構える。


「早速、来たよ!」


だが、その前にブリッタが動いた。

一瞬で踏み込み大斧の一撃。

ゴブリンはそのまま壁に叩きつけられ動かなくなった。

あっという間の出来事に、一同はほとんど動けずにいた。


「強っ……」


ブリッタは肩をすくめた。


「こんなのは雑魚だ」


さらに奥から怪しげな気配がする。

二体。

三体。

ゴブリンが群れで現れた。

ブリッタは苦笑いしながら、大斧を構え前に出る。


「ほらな、こうなる」

「まぁ、報酬分は働かなきゃな!」


豪快な一撃。

二体まとめて吹き飛ぶ。

さらに振り上げ叩きつける。

洞窟の地面が揺れる。

戦いはまたもや一瞬で終わった。


イリスはゴブリンの死体をまじまじと見つめる。


「遅い」

「だから死ぬ」


ブリッタは斧を肩に担ぎ直す。


「その通り! 戦い方は単純だ」

「だが、ゴブリンはすぐに群れる」

「すぐ移動だ」


アリソンは歩みを速め、ブリッタに追い付く。


「やつらの習性、よく知ってるね」


「そりゃ当然」

「迷宮で生きてくならな!」


ブリッタの指示通り、一行は素早く先に進んだ。

通路は広くなったり、また狭くなったりを繰り返す。

だが、どこか規則的だった。

アリソンはときおり後ろを振り返り、ミレイアに確認する。


「…同じ間隔だな」


「この曲がり角もさっきとそっくりね」


「この迷路、偶然じゃなさそうだ」


先頭を引っ張るブリッタは迷うことなく進む。


「ここはそういうもんだ」

「魔獣はどんどん増えるが、道にはクセがある」


「道を覚えやすいってこと?」


「慣れればな。だが迷ったら死ぬぞ」


やがて。

一行は階段を降り地下二階へ。

空気がさらに重くなる。

壁の光も少し強くなっているようだ。


「なんだか綺麗…」


ターニャが呟いた、次の瞬間。

横道から大きな影がこちらを覗く。


 ――巨大な体、トロール


低い唸り声をあげ、ゆっくりと近づいてくる

今回の相手には、ブリッタも慎重に身構える。


「こいつはちょっと手強いぞ」


「知ってる。再生持ちだ」


「へー、知ってるのか?」


ブリッタは嬉しそうに笑った。


「いいね、じゃあ試してみるか!」


「出し惜しみなんて無しよ」


「最初から全力で行くわ!」


ミレイアの重力魔法とターニャの火炎魔法を同時に放つ。

トロールの膝がくずれる。

その隙にブリッタが踏み込む。


「はぁぁっ!」


全力の一撃で大斧が叩き込まれる。

トロールの片腕が吹き飛び、体が大きく崩れた。

しかし、その腕はすぐに再生しはじめる。


「まだ来る!?」


「核を壊せ!」


ミレイアの重力でさらに押さえ込む。

そしてブリッタの二撃目。


 ーーグシャッ!


鈍い音とともにトロールの核が破壊される。

その場に倒れ、魔獣は動かなくなった。

ターニャが深く息を吐く。


「…本当に強い」


ブリッタは振り返って笑った。


「いい連携だったな」


(あんなに苦戦したトロールが… こうも容易く)


「あの階段が地下三階に続いている。長居は無用だ」


だがアリソンは立ち止まった。


「グラム、ここで確認しよう」


グラムベルクは地図魔導具を取り出す。

魔力を注ぐといくつもの光の線が浮かび上がった。

今まで歩いたきた経路、それが立体地図として表示される。

ターニャが興味津々に覗き込む。


「すごい……」

「ちゃんと地図になってる」


だがアリソンはその地図を見て目を止めた。


「あれ…」


「どうしたの?」


「この形、どこかで見覚えがある」


「迷宮なんてどこも似たようなもんだろ」


アリソンは首を振った。


「いや、もっと……別の何か」


記憶の奥に引っかかる。

(グラムが言うように気のせいかな…)


さらに一行は奥へ進み続けた。

通路はあい変わらず規則的。

だが、現れる魔獣の数は明らかに増えていた。


 スライム

 ゴブリン

 時折、トロール


そこら中から次々と襲い掛かってくる。


「キリがないわ!」


ブリッタが前に出て大斧を振る。


「下がってろ!」


一撃で二体。

叩き潰し、吹き飛ばす。


「こういうのはな、考える前に削れ!」


全員が動き続けている。

ミレイアの重力魔法で魔獣を足止めし、ブリッタの攻撃で仕留める。

ターニャとイリスが援護する。

グラムベルクとアリソンが次に進む道を探す。

それでも、敵の数と疲労でじわじわと押されはじめていた。


下層への階段を降りるごとに空気が変化していくのがわかる。


「今、何階かしら」

「……暑い」


ターニャが額の汗を拭う。

壁を流れる魔力の光がどこか赤みを帯びている。

下から伝わってくる熱。

アリソンが呟く。


「あきらかに温度が上がってる」

「魔力も濃い……」


濃密な魔力。

戦闘のたびに魔力と体力が削られ、消耗が激しくなる。

ターニャが槍を支えにして歩く。


「ちょっと、きつくなってきた」


ブリッタも舌打ちした。


「この階層は嫌いだ」

「魔獣も多いし、暑いし、最悪だ」


「まずいな…」

(終わりが見えない)


そのとき、グラムベルクが口を開いた。


「一旦引くべきだ」

「このまま進めば帰れなくなる」


皆の疲労と消耗を考えた冷静な判断だった。


「……戻る?」


「仕方ねぇな」


アリソンは皆を見渡し、頷こうとした――その瞬間。

洞窟の先から熱風が流れ込んできた。

そして、わずかに赤い光。


「……なんだ?」


意識とは逆に、足が自然と前へ進んでいた。

その先にあったのは――

今までの迷路とは明らかに違う巨大な空洞。

そして、その中央を流れる赤く輝く川。


「……溶岩流」


その光と熱が空間全体を覆っていた。

壁には無数の通路が等間隔に連なり、そのすべてに魔力が流れていく。


アリソンの目が見開かれる。


「……これが」

「この世界を動かしてるものか」


頬を焼く熱風を前に、誰も言葉を発さなかった。


それは、

大地の奥で脈打つ――

世界の心臓だった。

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