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魔法設計士  ― この世界の魔法、全部バグってます  作者: 有松
第4章 避けられぬ戦い ― 代償の始まり
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第32話 開戦 ― 王都


「結局、急いで王都に戻るのね」


ミレイアの声に森の穏やかな朝が現実に引き戻された。

アリソンは荷をまとめながら答える。


「今ならまだ間に合うはずだ」


もし帝国が竜を使えば。

魔石に近づいた瞬間――竜は自由になってしまう。


「もし竜の使役が解けたら、どうなっちゃうんだろ?」


「…」

「想像もつかない」


「帝国の人たちはそれを知らないの?」


「だから今、戦争になりかけてる」


その時、背後から声がした。


「準備は整いましたか?」


振り返るとルナシールドが立っていた。

いつもと雰囲気の違う白い外套姿。


「まさか、ルナシールドも来るんですか?」


彼女は静かに頷く。


「この件は王国上層部に直接伝える必要があります」


「エルフ側の使者ってことね」


「巨大魔石は森だけの問題ではありません」

「竜が暴走すれば、この世界全体に関わります」


アリソンは小さく頷いた。


「それなら説得力も増しますね」


三人は里の外れの小さな桟橋へ向かった。

そこには一隻の船が停泊していた。


「私たちが乗って来た船、ちゃんとあったね」


この森へ来るときに使った船だ。

ミレイアの重力魔法のおかげで帆も櫂も要らない。

ルナシールドが船を見て呟く。


「不思議な船ですね…」


「まあ、普通じゃないです」


アリソンは苦笑する。

ミレイアが船に乗り込みながら声を上げる。


「帰りは下りだから」

「王都まであっという間よ!」


アリソンは里に来たときの異常な船の速さを思い出していた。


(前回は上りで今回は下り…)

「ミレイア、無理に飛ばさないでくれよ」


「大丈夫、ちょっと疲れるけどね」


「そうじゃない、こっちの身が心配なんだ!」


ミレイアが船に魔力を集中させる。

魔法陣が光った、次の瞬間。

船は水面を滑るように加速した。


両岸の森が一気に遠ざかる。

あまりの速度にルナシールドは船にしがみつく。


「…すごく速い、ですね」


「でしょ!」


ミレイアは額に汗を滲ませながら、誇らしげに胸を張る。


アリソンは懐中時計の蓋を開き針を確認する。


「この速度なら、今日中には王都だ」


その日の夕方。

王都の河港が見えてきた。

だが――

アリソンは違和感を覚えた。


絶え間なく続く怒鳴り声と、金属を叩く音。

荷車が列を作り、武器や物資が絶え間なく運ばれている。

ミレイアも気づいた。


「なんか町が慌ただしくない?」


岸に降りると、たくさんの人で溢れ、誰一人立ち止まるものはいない。

鍛冶屋では武器が打たれ兵士が行き交っている。


ミレイアは、人だかりができている場所を覗き込む。

その中心には王国軍が貼りだした掲示板。

その紙を読んだ瞬間、彼女の顔色が変わる。


「ねぇ、アリソン!」

「もう始まってる」


「何が?」


「……宣戦?」


ミレイアの声が少しだけ掠れた。

アリソンも掲示板を覗き込む。


 王国の紋章

 国王の印章

 そして一行


 ――ザルカーン帝国へ宣戦を布告する


その下には続きが。


 ――南方軍はすでに出撃しアル・ザハル砦を包囲した


アリソンは、しばらく文字の意味を理解できなかった。

周囲の喧騒が、遠く感じられた。


「まさか… 間に合わなかったのか」

(こんなはずじゃ…)


ルナシールドがアリソンの肩をつかむ。


「アリソン!」

「王立学院へ急ぎましょう!」



ー学院長室ー


アリソン、ミレイア、ルナシールドの三人は、ことの経緯を報告をしていた。

学院長は腕を組んで話を聞いている。


「巨大魔石の由来……か」


アリソンは説明を続けた。


「もし帝国が竜を出したら、森で大惨事になります」


ルナシールドも頷く。


「これは森だけの問題ではありません」

「放置すれば取り返しがつかなくなります!」


学院長はしばらく沈黙していた。

やがて口を開く。


「この話は王国上層部へ伝えよう」

「早速、軍関係者をここへ呼ぶ」


窓の外では兵士たちが慌ただしく行き交っている。

その動きは、もはや止まることを許さない何かに駆り立てられていた。

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