表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私と先生が付き合ったら退職になるので、禁断の恋は始めません。~清楚ギャルJKと眼鏡教師のラブコメ~  作者: 五月雨恋
高校3年2学期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
63/70

第63話 進路指導室の空気

 違和感は今日も続いている。

 ……っていうか、違和感とかそういう次元じゃない。


 朝教室に登校して、皆と挨拶を交わすところまでは、いつも通りだ。

 机に座って、私が鞄から勉強道具を取り出すと……皆が示し合わせたみたいに自習を始めた。

 隣のミカを睨むと、その身体がビクっと震えた。


「……発案者っぽい」

「へぇっ!? 違う違うミカじゃない!!」


 ミカは両手と頭をバタバタと振り否定すると、田中を指さした。


「ていうか最初に始めたの田中だし」

「……おん?」


 田中は参考書をめくる指を止める事なく、話を続ける。


「……柊が勉強してる間だけでも自習すれば、ちょっとはマシになるかなって思ったんだよ」


 そう言って頭を掻く田中は、何となく恥ずかしそうだ。


「え、違うよ。『頑張ってる柊のためにも、俺達も勉強して受験ムード作らねえか?』って言ってたじゃん」

「いや、速攻バラすなよ! ミカってやっぱアホだ!!」


 お礼を言いながら頭を撫でたら、田中の坊主頭まで真っ赤に染まった。

 ……ちょっと、可愛い。

 

 * * *


 昼休み。弁当を食べ終えた私は、机に頬杖をついてスマホを眺めていた。

 教室のざわめきはいつも通り。……今私が参考書出したら、どうなるんだろう。


 そんな中、ガラッと扉が開いてミカと田中が戻ってくる……と、同時に。

 何となく視線を外へ向けると、廊下の向こう側。ピータン(ミカの彼氏)が、無言で二人を睨んでいた。

 ……私は目を逸らして、何事もなかったかのように二人へ声をかける。


「どこ行ってたの?」


 ミカは借りてきた参考書を机に置くと、ひらひらと手を振った。


「進路指導室だよー。てか聞いてっ!? 田中、志望校のレベル上げるんだって! 田中のくせに!」

「なんでバラすんだよ!? 俺のプライバシーどこ行った!?」


 田中の抗議は、ミカの耳には届かない。私も一緒に、田中のプライバシーを補足しておく。


「前から相談してたよね。放課後、赤本借りてたし」

「……見てたのかよ」


 小さく呟く田中に、私は笑っておく。

 最近は、先生に質問している姿もよく見かける。ノートとワークを抱えて、真剣な顔で話を聞いていたりもする。


 ――なら。


「……せっかくだし、二人も進路指導室で勉強したら?」


 自然と出て来たのは誘いの言葉だった。


「三山先生、国語以外も結構教えるの上手いよ。小テストも作ってくれるし」


 二人きりの時間が減るのは、ちょっとだけ寂しい。でも、あそこは私だけの場所じゃない。

 そう思っての提案だったけど、ミカと田中は顔を見合わせて、ほぼ同時に……微妙な顔をした。


「いや……先生と柊、二人の空間にいるのは何というか……」


 田中が歯切れ悪く言葉を濁す。そのまま視線をミカに投げると、ミカも苦笑いを浮かべた。


「まぁ、田中の言いたいことは……ミカにも分かるよ」


 その表情を見た瞬間、胸の奥がザワついた。


 ……え?


「……そんなに変な空気になってる?」


 自分の声が少しだけ硬くなる。私の言葉に、二人はゆっくりと頷いた。


「空気がピリついてて、居心地悪いんだよ……あそこ」

「そう! 先生と葉月、全然喋らないもん!」

「ヤバいよな。無視するゲームでもしてんのかって思う」

「そうそう! 葉月が先生の机に行ったと思ったら、無言でプリント渡されててさ!」

「で、柊が顔しかめて、それ受け取るんだよな」


「「……無言で」」


 最後は綺麗にハモって、二人とも私の顔を見る。……そんなふうに、見えてたんだ?


 進路指導室で過ごす時間。コーヒーの香りと静かな空気、そしてたまに交わす言葉。

 私にとっては――。


 少しだけ特別で。

 少しだけ甘い。


 ……。


 ――どうやら、そんなふうには見えていなかったらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ