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私と先生が付き合ったら退職になるので、禁断の恋は始めません。~清楚ギャルJKと眼鏡教師のラブコメ~  作者: 五月雨恋
高校3年2学期

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第55話 文化祭の買いだし

 文化祭を間近に控えた日曜日の朝。私は海沿いのショッピングモールへとやって来た。

 待ち合わせ時間まであと十五分。集合場所にいたのは――。


「おはよう」

「おはようございます」


 三山(みやま)先生、ただ一人だった。

 薄手のオーバーサイズのニットが主体の綺麗めコーデ。そして何より――。


「……眼鏡、どうしたんですか?」

「一応持ってるよ。でも、コンタクトの使用期限が切れそうだったから。使わないと勿体ないだろ?」

「あー……」


 そう言って柔らかく微笑む三山先生の姿は私の好みど真ん中だったけど……恥ずかしくて褒める事が出来ない。

 『好きが溢れる』とは、こういう事なのだろうか?


 私たちは二人、建物中央の吹き抜け一階のベンチに腰かける。傍から見たら恋人同士のように……なんか最近、そればっか考えてない? 別に見えていても良いや。もう知らない。

 ただ、私たちの関係は一歩進んだわけでもなく、今日はデートでもない。

 

「ところで(ひいらぎ)。ミカって、あと何分ぐらいで着くんだ?」

「あと二十分くらいで着くらしいです。……車に乗せてあげたら良かったのに」

「駄目に決まってるだろ」

「私は乗せたくせに」

「校長に言われたからな。やむを得なかった」

「ふーん」


 基本的に教員が乗る車に生徒を乗せる事は出来ない。けど、先生と家が近いミカは「乗せてもらえば楽じゃん!」と自宅マンション前で待ち伏せしていたそうだ。


三山先生(ミヤマン)に置いて行かれたんだけどっ!!!』


 当てが外れたミカは結局電車で行くことになり――今回の大遅刻の原因となった。

 道中の電車内から立て続けに送られてくるミカからのLIMEを私は先生に見せる。


「ミカが、『駅まで車で迎えに来て』だって」

「だから駄目だって。ていうか駅からここまで、歩いて10分かからないだろ」


 先生はため息交じりにそう言って、立ち上がる。


「……何だかんだで先生、行くんだ?」

「いや、駅まで歩いて迎えに行こうかと思って」

「なるほど」


 私も先生に(なら)って歩き出す。

 

「……帰りだけでも乗せてあげたら?」


 私の提案に、先生は眉をひそめて笑う。

 

「駄目。それに……あの車の助手席には、もう二度と他人を乗せないって決めたんだ」

「え、なんで?」

「俺の宝物になったから」

 

 私が座った助手席だから? だとしたら……ちょっと気持ち悪い。私だからギリギリ許されてる感じだし。


 ……今日は文化祭の買い出しだ。


 * * *


 プンスコ怒るミカと駅で合流し、私たちはショッピングモールを回る。ジュースを奢ってもらい、早くも機嫌が直ったミカはニマニマと笑いながら話しかけてくる。


「ミカが来るまで二人で何してたの? デート??」

「ううん、ベンチ座って待ってた」

「えー? 恋しちゃおうよ?」

「いやいや。相手、先生だし」

「先生は眼鏡が本体じゃん? 今日眼鏡ないから、アリじゃない?」


 そんな私達の話を聞いた先生は、胸ポケットから眼鏡を取り出す。


「お前たちのいう『先生』とは、これの事か?」

「先生!? この癖毛野郎めっ! 先生をどうしたのっ!?」


 よく分からない恋のススメは、そのままミカと先生の因縁のバトルへと発展した。私にはちょっと分からないノリだったので静観しておく。なんか凄いパンチとか出せば良いのかな?

 

 ……いや、それより。

 うちのクラスの出し物はたい焼き屋。必要なものはだいたい食品売り場と百円ショップで揃うと思うんだけど。


「ミカ。これ今どこに向かってるの?」

「うん? 最後の文化祭だし、せっかくだから皆で可愛い衣装とか着たいじゃん。何か無いかなーって探してるんだよ」

「え? たい焼き屋なのに?」

 

 たい焼き屋と結びつく衣装が全く思いつかない。ミカはアレコレ提案してくるけど、どれもピンとこない。

 サブカル臭が強めのちょっと不思議な雑貨屋にいた時、ミカは先生に意見を仰ぐ。


「たい焼きの被り物とかで良いんじゃないか?」

「えっ、全然可愛くないんだけど……」


 先生が私を見る。「ミカを何とかしろ」その目はそう言ってるような気がしたけれど。

 

「とりあえず、先生は被り物で良いんじゃない?」

「いや、三山先生(ミヤマン)はそれで良いけどさー。ミカは葉月(はづき)と一緒に可愛い格好がしたいんだよねぇ」


 そう言って、ミカはスカート丈の短い衣装を提案してくる。

 短く「()だ」と断りを入れつつ、先生にたい焼きの被り物をさせる事だけ決定しておいた。


 * * *


 たい焼きの材料、包装紙、その他諸々。たっぷり買い込んだ私たちは先生の車へとその荷物を運ぶ。

 

「ミカと葉月も乗せてくれればいいのにぃー」

「文句は校長とかその辺りに言ってくれ」

「バレなきゃ良いじゃん」

「いや。もしもの時に責任取りたくないもん、俺」


 ギリギリまで駄々をこねるミカと、それを(たしな)める三山先生。

 そんな二人のやり取りを見ながら、私はふと思う。


 前の台風の日。先生は私を車に乗せてくれた。

 ……って事はあの時、先生は責任を取る覚悟があったのかな?


「そもそも一人だけ車で来るのズルくない!?」

「いやいや。荷物が多くなるから車出してくださいっていったの、お前だろ」

「むきー!」


 二人の喧嘩は、先生がお昼を奢ってくれるまで続いて。

 皆で食べたステーキランチは、格別の味だった。


 ……奢りだったからかな?

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