第36話 予備校の体験授業
「――そうっ! そのとおーり。ええよええよー、よう勉強してるッ!」
ミカと一緒にやってきた予備校の体験授業。
思ってた以上に広い教室。横にながーい黒板の前で、女の先生が関西弁で英語の授業をしている。
「――ほんなら……、はいっ! そこの金色の!! リベンジや。次は答えてみー??」
「分かりませんッ!」
「ダメ元でええねん。まずは答えてみよっか?」
慌てふためくミカが何だか可哀そうになってきたので、私は隣からこっそりと答えを教えてみたんだけど。
「……金色のお嬢ちゃん。受験の時には隣のお姉ちゃん、おらんからな?」
「申し訳ッ!」
ミカは両手をパンッ!と合わせて元気に平謝りをしていた。
* * *
授業が終わって、これまた広いラウンジスペースでミカと一休み。吹き抜けから見える二階はガラス張りになっていて……なんか凄い。
「なんかさっ! ミカ達ばっかり当てられてなかった!?」
お茶でエネルギー回復をしたミカが、金髪おさげを元気に揺らして話しかけてくる。――む、少し毛先が傷んでるな?
「金髪だから目立つんじゃない?」
私はミカの、おさげの先を弄りながら答える。
「でも最初は葉月が当てられてたじゃん? 『そこの別嬪さんッ』って!」
「や、最初に声かけられたのミカだし。『帽子は脱いどきやー』って」
「む~。目をつけられたのかなぁ……?」
「いや、むしろ当ててもらえる方がお得じゃない? 勉強しに来てるわけだし、気合も入るじゃん?」
「……葉月、受験生マインドに染まっちゃ……ダメだよ?」
「染まらなきゃダメでしょ」
本格化するのはまだ先なのに、ミカは既に戦意喪失してるらしい。私はツッコミを入れつつも、ちょっと笑ってしまった。
しばらくミカはジトーっと私を見つめた後、口を尖らせて体験授業のパンフレットを開く。
「……あ。さっきの英語の先生、難関講座なんだって! もう受けなくて良いかもっ!」
「そうなんだ? じゃあお世話になるのかな。授業も面白いし分かりやすかったから楽しみかも」
「……えっ?」
……何故かドン引きみたいな顔をされる。良い授業を受けたいのは当たり前じゃん?
「葉月の志望校って……どこなん?」
さっきの講師の口調が映ったのか、何故か関西弁。
「とりあえずは、地元の国立目指してみようかなって」
「地元の国立って言うと……」
ミカはスマホを開いて、大学のHPを無言で見せてくる。最初に出されたのは国立の中でも結構特殊な大学だった。……さすがにそこは受けないって。
私は画面に対して何度か首を振って……最後の大学で頷いた。
「……マジ?」
「うん。……や、目指してるだけだからね?」
「……マジ?」
「うん」
ミカは「ほぉぉおお~」みたいな相槌を打ちながら何度も頷いて――。
「授業は別でも、行き帰りは一緒にしようねっ!」
と何故か納得した顔で、笑った。……や、英語の授業だけ一緒に受けても良くない? 授業面白かったじゃん?




