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先生と禁断の恋、始めません。  作者: 五月雨恋
高校2年3学期

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第25話 白石先輩リターンズ

 この辺りでは珍しく雪が積もった朝。

 バスの運行スケジュールが大幅に狂ったため、いつもよりも遅く、学校の最寄り駅へと着いた。

 駅の階段を下っていると、見慣れた金髪とヒョロっと長い男の姿が見えた。


 ミカと……三山(みやま)先生?


 二人は改札を抜けたところで野球部の田中(ハゲ)と遭遇し、三人がひと盛り上がりしたところで私も追いついた。


「おはよ」

「葉月おはよー!朝に会うなんてレアだねぇ~!」


 両手を振りながらピョンピョン跳ねるミカが駆け寄ってくる。

 ミカや田中(ハゲ)は部活の朝練、先生は車通勤なので普段会う事のない四人が集結した。


 ハゲのニット帽はどうでも良いとして……三山(みやま)先生のチェスターコートに少しグッと来たのは内緒である。

 だって、見た目はまぁまぁ好きだし……。


「バス、遅れてたのか?」

「あ、はい。あっちこっちで車が動けなくなってて大変でした」

「あの辺、坂多いもんなぁ……」


 教師の(つら)をした三山(みやま)先生が話しかけてくる。何故私の自宅住所を知っているのかと不信に思ったけど……いや住所くらい把握してるかと思い直した。年賀状も来てたし。


三山先生(ミヤマン)もバス遅れ?」

「いや、私と|先生は駅近セレブだから」


 田中の問いに、ミカが代わりにフフンと答える。


 「じゃあなんでこんなに遅いんだ?」


 電車は定刻通り運行。駅から徒歩圏内の二人が遅刻する事はないはずである。


「ゆっくり来て良いよーって言われたら、ゆっくりするじゃん?」

「堂々と遅刻出来る機会を、無駄にしてたまるか」


 ミカと先生は同時に、ドヤ顔で胸を張った。


 * * *


 数時間遅く始まった授業は滞りなく終わって、あっと言う間に昼休みになる。

 外ではまだ雪がパラついていた。

 私は弁当をつつきながら、向かいのミカに話しかける。

 

「……帰るまでに雪、溶けるかなぁ」

「うぅ~ん……もうちょっと降ってくれないと遊べないかもだねぇ」

「……ん?」

「へ? どしたの??」

「いや……私は溶けてほしいかな。バス遅れるの嫌だし」

「ええええぇぇぇ!? せっかくの雪だよ? 遊びたくない!?」


 ミカの家は正月だけでなく、雪遊びもガチらしい。

 天気予報を確認すると、午後からは気温も上がるようだ。……仕方ない。進路指導室で少し、時間を潰そうかな。


 * * *


 放課後。

 進路指導室へ向かうと、ドアの前には『相談中』の札が掛かっていた。……む、珍しく先客が独占中らしい。

 どこで時間を潰そうか、と思考を巡らせ始めたところで扉が勢いよく空いて飛び出してきたのは――。


 「シルエット的に(ひいらぎ)ちゃーんッ!!」

 

 超絶美少女、白石(しらいし)萌先輩だった。……や、それドッキリの勢いなんですけど?

 


 私たちは進路指導室の中ほどに、向かい合って座る。

 

「ってな訳でー、春から大学生になります」

「おめでとうございます」


 今日は様々な人のドヤ顔を見ているけど、白石(しらいし)先輩レベルの美人が放つドヤ顔はまた威力が違う。

 ……これが尊いとかいう感情なのだろうか? 先生はケトルで沸かしたお湯で、コーヒーを作っていた。


 「いやーそれにしても。一般入試全部落ちるとは思ってなかったなー」


 白石(しらいし)先輩は腕を組みうんうんと唸る。そこに3人分のコーヒーとお菓子をお盆に乗せた三山(みやま)先生がやって来る。


「毎日のように、笑顔で爆死報告されるとも思ってなかったけどな」


 先輩は律儀に先生へ報告してたらしい。


「落ちたら三山(みやま)(あきら)のせいだー!って圧かけようと思って。……てかここ飲食禁止じゃなかった?」

「落ちたのは白石(しらいし)の実力不足だから俺には関係ない。あとこれは合格祝いだ。少しくらい見逃してもらえるだろ」


 白石(しらいし)先輩は「んふふー」と満足気に笑うと、コーヒーをふーふーと冷ます。

 ……いや、カップの水面を見つめる睫毛の長さ、ヤバいんだけど?


「でもホントに(あきら)のおかげだよ。(あきら)の言う通り、共通テスト受けてなかったらたぶん無理だった」

「現代文の点数聞いたときは眩暈したけどな。本番で過去最低点叩き出しやがって」

「過去問だとそこそこ良かったもんね。逆に英語はボロボロだったのに、本番で奇跡起きちゃった」

「共通テストは意外と奇跡起きるからな。受けといて損は無いんだよ」

「おっしゃる通りでした。な~む~」


 先輩は、大仏に拝むように三山(みやま)先生に手を合わせる。


「あ、でも二次試験の小論文と面談は私の力だから」

「小論文対策、俺の方が頑張ったと思ってる。一日潰れたんだぞ」

「や、面談の方が配点高いらしいし? やっぱ私の美貌で受かったのかなって」


 白石(しらいし)先輩の冗談は、ひとしきり続いた。このルックスなら本当に、面談の加点とかあるのかも。

 

「という訳で。本音を言うと、ほぼ先生のおかげだと思います。三山(みやま)先生、本当にお世話になりました」


 最後は、白石(しらいし)先輩の丁寧なお礼で締めくくられた。


 * * *


白石(しらいし)先輩、汐京(しおきょう)行っちゃうのかー」


 汐京(しおきょう)の地は、ここから結構遠い。距離が遠くなると、何となく寂しくなる。


「……白石(しらいし)の行く女子大、汐京(しおきょう)大学の近くでな」

「うん」


 汐京(しおきょう)大学は、名前を聞くだけで少し身構えてしまうような、全国でも指折りの国立大学だ。


汐京(しおきょう)大生を何人か捕まえてみるらしい」

「あー」


 白石(しらいし)先輩は汐京(しおきょう)大生図鑑完成を目指して、汐京(しおきょう)へと旅立つのかもしれない。

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