助ける
※本作はすでに完結済みの長編ファンタジーです。現在、連載形式で投稿中です。物語は最後まで投稿される予定ですので、安心してお楽しみください。
あたりには、無惨に押し潰された家屋と、同じように潰された住民たち。
一人、二人……それでもまだ息のある者がいた。血を流しながらも、必死に助けを求める声が届く。
その姿に、喉の奥がひゅっと冷たくなる。
「…くそ……っ!」
だが――
ミナトの目には、もう別のものしか映っていなかった。
「今はシズクを…!」
そう思い直して走り出そうとした、その時だった。
視界の隅、崩れた家屋の脇。
ヒヨリがいた。
「……!」
彼女は今落ちてきた巨大な岩を押していた。
そこには確かに助けようという意思が宿っているように見えた。
「ヒヨリ……」
ミナトの胸に、何かが刺さるように震えた。
周囲の空気は悲鳴と爆音で満たされていた。
崩れた家屋、落ちてくる岩、煌の咆哮。
誰かの泣き声。誰かの絶叫。誰かの、最期の声。
その喧騒の中で、ほんの一瞬。
刹那の静寂のような空白が、ミナトの耳に入り込んだ。
「……タ……スケ……ル……」
小さな、か細い声。
最初は聞き間違いかと思った。
だが――
「……タ……スケ……ル……タ……スケル……」
確かに、ヒヨリがそう言っていた。
爆音と悲鳴と、風の唸りが満ちた世界の中。
それでもミナトの耳に、その声ははっきりと届いた。
ミナトの心臓が大きく跳ねた。
さっき、自分が言った言葉を思い出す。
『ヒヨリ、住民を助けるぞ』
その言葉を、ヒヨリは覚えていた。
あの半妖異の身体に宿ったわずかな意志。
「……ヒヨリ…」
胸の奥が熱くなる。
状況は絶望的で、町は崩れ、煌は空を覆っている。
けれど、その中で、彼女は、たった一人の命のために立ち向かっている。
その瞬間、恐怖が、少しだけ遠のいた気がした。
ミナトは息を呑んだ。
手の震えが止まる。
自分は、何を選ぶ?
誰を、守る?
「俺は…」
その言葉の先を、飲み込んだまま、ミナトはヒヨリのもとへと駆け出した。
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