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陽の下、揺ぐ  作者: カナメ
九章 夜半の風
28/31

助ける

※本作はすでに完結済みの長編ファンタジーです。現在、連載形式で投稿中です。物語は最後まで投稿される予定ですので、安心してお楽しみください。


あたりには、無惨に押し潰された家屋と、同じように潰された住民たち。

一人、二人……それでもまだ息のある者がいた。血を流しながらも、必死に助けを求める声が届く。

その姿に、喉の奥がひゅっと冷たくなる。


「…くそ……っ!」

だが――

ミナトの目には、もう別のものしか映っていなかった。

 

「今はシズクを…!」

そう思い直して走り出そうとした、その時だった。


視界の隅、崩れた家屋の脇。

ヒヨリがいた。


「……!」

彼女は今落ちてきた巨大な岩を押していた。

そこには確かに助けようという意思が宿っているように見えた。

 

「ヒヨリ……」

ミナトの胸に、何かが刺さるように震えた。


周囲の空気は悲鳴と爆音で満たされていた。

崩れた家屋、落ちてくる岩、煌の咆哮。

誰かの泣き声。誰かの絶叫。誰かの、最期の声。


その喧騒の中で、ほんの一瞬。

刹那の静寂のような空白が、ミナトの耳に入り込んだ。


「……タ……スケ……ル……」

小さな、か細い声。


最初は聞き間違いかと思った。

だが――

 

「……タ……スケ……ル……タ……スケル……」

確かに、ヒヨリがそう言っていた。

爆音と悲鳴と、風の唸りが満ちた世界の中。

それでもミナトの耳に、その声ははっきりと届いた。


ミナトの心臓が大きく跳ねた。

さっき、自分が言った言葉を思い出す。


『ヒヨリ、住民を助けるぞ』

その言葉を、ヒヨリは覚えていた。

あの半妖異の身体に宿ったわずかな意志。

 

「……ヒヨリ…」

胸の奥が熱くなる。

状況は絶望的で、町は崩れ、煌は空を覆っている。

けれど、その中で、彼女は、たった一人の命のために立ち向かっている。


その瞬間、恐怖が、少しだけ遠のいた気がした。


ミナトは息を呑んだ。

手の震えが止まる。


自分は、何を選ぶ?

誰を、守る?


「俺は…」

その言葉の先を、飲み込んだまま、ミナトはヒヨリのもとへと駆け出した。


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