対決 巨大蛇
ジャイアント・スネーク。
それは、規格外の大きさを誇る蛇に対してUMAファンから名付けられた巨大蛇の総称である。
有名なのは1997年8月、南米はアマゾンのジャングルに出現した個体だろう。推定体長40メートル、胴回りだけでも5メートルはあったというそれは、見たものを驚愕させ、這った後にはトラックが通れる道が出来たとも聞く。
他にも、100年程前にブラジルで捕獲された体長60メートルのボア、ブラジル陸軍が仕留めた体長55メートルのアナコンダなど、その記録は絶えない。
今、俺達の目の前にいるのは、それと同クラスの化け物だ。
余りの巨大さにしばらくの間、身体の主導権が妹から自分に移っていたことに俺は気付けなかった。
『ど、どどどどどどうすんのお兄ちゃんっ!?』
「ははは、何を言う妹。そんなの決まってるだろう?」
くるり。
「逃げるに決まってんだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ジャイアント・スネークに背を向けると、俺は一目散に逃げ出した。
"シャアアアアアァァァァァァァァッ!!"
当然ジャイアント・スネークも追ってくる。
『お兄ちゃん逃げて! 超逃げてっ!!』
「分かっとるわ!! 俺は逃げる! 逃げる! 必死で逃げる! 今だけは逃げる! この先の人生一生走れなくなってもいいから今だけは逃げるっ!!」
何ゆえ俺らは逃げるのか。絶叫しながら走るのか。答えは至極単純。後ろから巨大蛇が追っ掛けてきてるから。
逃げるしかない、このジャイアント・スネーク。
正直こんな化け物とは正面切って戦える気がしない。どう足掻けど、この体格差。冒険者始めたばかりの俺らには太刀打ち出来そうにもない。
「てか美羽! お前、シューティングゲーでこんな化け物倒しまくってるだろ!? こんなやつ簡単に倒せるんじゃ無いのか!?」
『こんなリアルRPGで倒せなんてクソゲーにも程があるわよっ!! こういうのはお兄ちゃんの領分でしょ!?』
「確かにこういう戦闘は俺の方が向いてるのかも知れんが、性能が未知数の《覇龍》を易々と使うわけにはいかん! 俺が逃げて牽制するから、お前が落とせ!」
『結局私かいっ!!』
取り合えず妹を説得(丸投げ)し、俺はひたすら逃げ続ける。ジャイアント・スネークの方も執念深く、未だに後方から這いずる音が豪快に聞こえてくる。こいつも追っ掛けて疲れるだろうに、いい加減諦めて貰いたい。
『あっ!! お兄ちゃん、目の前に川!!』
「だにぃ!?」
それを聞いて進行方向を窺うと、なだらかな坂道の下、前方50メートル程先に川が流れていた。川幅もあり、それなりに大きい。
その刹那。
俺の脳内で何かがピカンときた。
蛇の習性、行動、身体の構造、感覚器官。あらゆる情報を高速演算、組み上げていく。
そのプロセスの先に見出だした物は──
──奴を倒す方法。
「美羽! 今からお前に身体の主導権渡すから、俺の言う通りに動け!!』
『え? ってはわっ!?」
突然お兄ちゃんにそう言われ、身体の感覚が切り替わる。
って、すんごいの後ろからキターっ!?
「な、なにいきなり主導権渡すのよ!? 私、長距離苦手なんだけど!!」
『んなことはどうでもいい!! まずは川に飛び込め!!』
「か、川? 一体なんで?」
『いいから早く!! 死にたいのか!!』
た、確かにそんなこと言ってる余裕はない。ジャイアント・スネークはすぐそこまで迫ってる。なら、お兄ちゃんの言葉を少しでも信じないと!!
私は足腰をフル稼働させ、川に向かって全速前進。そのままの勢いで川に飛び込んだ。
『よし、美羽! 奴の両目を潰せ! お前なら鼻クソほじるより楽だろ!!』
「誰が鼻ほじるかっ!!」
お兄ちゃんに突っ込みを入れながら、指示通りショートライフルを両手に構える。
けど、あんなジャイアント・スネークの眼を撃ち抜けだなんて……。
──楽勝すぎて欠伸がでる。




