クエスト開始 《画像 未来》
「なに100円なんか拾ってるんだよ。ほら早くっ」
半ば呆れながら、近くまで来たミーニャを引き上げどっかりと腰を落ち着ける。
うん、これなら数十メートル先まで疲れることなく観察出来る。あとはウサギの方から現れてくれるのを待つだけだ。
『お兄ちゃん、ちょっと身体替わって』
『ん? 別にいいけど……どした?』
『ほら、今回の狩りだとお兄ちゃんより私の方が有利だし。私の射撃の腕、忘れた訳じゃ無いよね?』
確かに、妹の射撃能力は伊達ではない。
元の世界の近所のゲーセンには数多のシューティングゲームが設置されていたが、それらは全て挑戦者を嘲笑うかのような鬼畜難易度。確か製作者側からの挑戦だっただろうか。
「5年以内にクリア出来た先着一名にはその5年間で得た筐体の売上金の半分をやる」
当然町のゲーマーは挙ってそれらに挑戦。膨大な金を投じてまで日夜シューティングゲームに没頭した。
噂を聞き付けたゲーマーが周りの県から集まり、一時的に町の人口密度が跳ね上がったとも聞く。
挙げ句の果てには破産する者も。
だが、誰一人クリア出来なかった。
そのシューティングゲーム群は設置されて以降誰にもクリアされることなく、ただ時間ばかりが過ぎていった。
その間に売上は莫大な金となり、その金額は年末宝くじの数倍とまで噂された。
製作者はさぞ喜んだ事だろう。
懐にある金を眺め、物欲に酔いしれた事だろう。
そして、期限の5年が翌日に迫った。
製作者の思惑──クリア不可能寸前のクソゲーを遊ばせ、それをクリアせんとするゲーマーを格好のカモとした大規模な作戦。
それがまさに成就しようとしていた時だった。
妹はそれらを全て最高ランクでクリアした。しかもたった一人で。
ゲームをオールクリアして御満悦の妹の顔を見た製作者の顔は今でも忘れられない。
そして、約束通り売上金の半分──53,176,700円が妹に譲渡された。
その時の金は生活費分の20,000,000円を差し引き、残りは募金。これが正しい大金の使い方だ。
ちなみに他にも、妹はエアガンで数十メートル先のナットの穴に填められた大豆の11回連続狙撃を成功させたり、教室を襲撃したオオスズメバチの大軍を全て撃墜したり出来る程度の狙撃力と動体視力を持っている。
故にこのウサギ狩りは妹の領分。俺の出る幕ではない。
『んじゃ、ちゃんと稼げよ美羽』
『分かってる分かってるっ』
ほへー、久し振りの生身の身体……。やっぱりいいなぁ……。
でも、そんな悠長に構えてる暇は無いよ。
私は腰のホルスターに手を伸ばすと、ショートライフルを両手に握り締めた。
いつでも撃てるように、安全装置を外して準備万端! さぁウサギよ、どこからでも出てこいっ!
「あっ、ウサギいましタっ!!」
「えっ!? どこどこ!?」
後ろで叫んだミーニャさんの指差す方向を見ると、何かが飛び跳ねながら移動している。
それは、長い耳に赤い眼、発達した後ろ足を持った可愛い白い生き物。間違いない、ウサギだっ!!
「ミライ、早く追いかけまショ!!」
「あ、大丈夫だよ?」
バシュ!
私がショートライフルの引き金を引いた刹那、飛び跳ねたウサギの胴体から血が噴き出す。
ウサギはそのまま墜落して、二度と飛び上がる事はなかった。




