ギルド申請完了
その瞬間、ギルドの中の空気が凍りつく。
ギルド内で今まで談笑していた人々は一瞬の内に言葉が止まり、全ての視線がこちらに注がれていた。
ざわ……ざわ……。
そして一気にどよめきが辺りを支配し、ギルド内が先程とは違った意味で騒がしくなる。
「ラグナノヴァに19工しか存在しない刀……。本当にこれがそうなんですか?」
「はい……。本来、超級大業物は1000年前に50人の伝説的刀鍛冶によって1本ずつ産み出され、その魂が刀自身に宿っていると伝えられます」
「ちょっと待て、50人が1本ずつってことは超級大業物は全部で50工あるんじゃ……」
「いえ、1000年という長い月日の内に破壊されたり行方知れずになるといった事で殆どが失われ、今現在存在が確認されているのが19工という訳なんです」
「なるほど……。つまり海の底とか秘境とか探せばまだ見つかるかもしれないってことか」
もっとも、人間界の中世並みの技術力のこの世界では秘境はまだしも海底探査はまだまだ先になりそうだが。
一段落ついた所で『覇龍』を鞘に納めると、鞘に掛かっていた紐を肩に提げた。
「それと、最後に1つ申し上げます」
「何ですか?」
「伝承では、『覇龍』を使った剣豪は一人も居りません。……ですから、その刀に秘められた力は未知数。呉々も使い方を誤らないように」
「…………分かりました」
受付嬢の言葉を胸に刻むと、中サイズの箱からショートライフルとホルスター付きベルトを取り出し腰に巻き付け、ショートライフルを装填した。
しかし、『覇龍』を使った剣豪がいないとはどういう事なのだろうか。刀が作られたのだから、少なくとも1000年間で何回かは剣豪の手に渡っているはず。
誰にも使ったことを知られないまま、手にした剣豪がこの世から消えたとでも言うのか。
まぁ、そんなことは今は考えないようにしよう。
なんだかんだで時間は潰せたので、そろそろ申請も完了するはずだ。
「あノー、ミライ」
と、ミーニャが袖を引っ張ってきた。
「ん、どしたミーニャ?」
「さっきから私、存在がAirだったんですケド……」
「あー、そういやそうだったな。まぁ、ミーニャが介入する余地も無かったし、我慢してくれ」
「デスヨネー」
正直言うと横目でずっと見ていたが、ミーニャは受付嬢の話に全く追い付けていない顔でこのイベントをやり過ごしていたようだった。
まぁ、刀鍛冶とかはアメリカには存在しない職業なので付いていけないのも当たり前だが。
「にしても申請完了まで長すぎないか? もう何だかんだで20ぷ」
てん、てん、てけてん。
その時、俺の言葉を遮るように軽快なリズムが流れた。何故だか昔から遊んでいたRPGゲームでモンスターを回復させる時を彷彿とさせる。
「はい、これで申請完了致しました。では、お二方が冒険者となった印にこちらを差し上げます」
奥から出てきた受付嬢が俺達に手渡したのは、長方形のプラスチック製とおぼしき板切れ。下の方には棒状のボタンらしきパーツが3つ付いており、左から、4つ集まった正方形、家のような形の記号、折り返した矢印のマークが描かれていた。
上の方には小さなスピーカーと思われる穴、側面には半円形のボタン。
どう見てもスマホである。
「あの……これって……」
「はい、スマホですが?」
発音どころかアクセントまで同じときた。最早ファンタジー設定は遠いお空に飛んでったようだ。もう呆れるしかない。
「一体これ何に使うんですか……?」
「簡潔に申し上げると、登録した冒険者同士の通信や所持している冒険者のパラメータ表示、モンスターの討伐履歴のギルドへの送信及びデータ保持ですね。冒険者の必需品です」
「なるほど……。それならファンタジー設定ぶち壊さずに済むな」
早速横のボタンを押して起動させると、ホーム画面が映し出された。
《パラメータ表示》と書かれたアプリがあったので、タップして確認してみる。
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ミライ・ニノミヤ
・冒険者ランクG
・MP 75/75(+上限25)
固有スキル
☆剣士の神眼
・動体視力と反射神経を通常の3倍に強化。剣類を使用してでの戦闘時に発動。冒険者ランクC以上で任意発動が可能。それまではランダム発動。
取得スキル
☆剣術Lv5
・このスキルが高いほど、剣術の腕がアップ。
☆体術Lv2
・このスキルが高いほど、体術の腕がアップ。
☆
☆
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今のところはこれだけしか表示されていなかった。
しかし、これは俺のパラメータ。妹の場合はどうなるのだろうか。後で試す必要がある。
美羽は未だ未来の脳内でおねむですが、次で起こします。




