初めての食事 その3+α
今回、後半でアブナイ描写があるので耐性ない人はご注意願います。
「あ、はい私です」
私がカウンターに向かうと、ウエイトレスの人が皿を差し出した。
「こちら、ご注文のスパリーライッシュとオレンジドリンクです」
カウンターに差し出された皿の上にあったのは──
カレーライス。
『カレー…………だよな?』
『うん、カレーだね』
私達がそう思うほど、皿の上に注がれていたのはカレーライスその物だった。
食欲をそそるスパイシーな香り、ご飯にかけられた赤茶色のルー、それに絡んだ野菜や肉、極めつけはご飯の横に添えられた福神漬け(らしき物体)。
100人に見せれば100人がカレーって答えるよこれ。
「あの……どうかされました?」
ふと我に返ると、ウエイトレスの人が心配そうにこっちの顔を覗いていた。
「え? あぁ、いえ、何でもないです! で、では……」
慌ててトレイにスパリーライッシュとオレンジドリンクを乗せてスプーンを受け取ると、早足でミーニャさんのところに舞い戻った。
「オー、やっと戻ってきましたネ!」
「はい、何とか……。名前からじゃどんな料理か分かんなかったから選ぶの大変でしたよ」
「そうですよネ。私もこっち来たばかりは大変でしタ」
あ、やっぱりミーニャさんもそうだったんだ。この名称だとどこかの和菓子喫茶並にメニューが分からないから困るよね。
ま、そんなことより今は食事だ食事!
「いただきまーす!」
合掌すると、早速カレーを口に頬張ってみる。もちろん福神漬けも込みで。
「……お、おいひいっ!!」
「Really!? ミライ、私にも一口Please!」
「あ、はいどうぞ」
もぐもぐ。
「Oh!! とてもとても美味しいでース!」
『おい、美羽! 俺にも食わせろ!』
『分かったよ、しょうがないんだから……』
『それじゃあ、早速一口っ!!」
ぱく。もぐもぐ。
「んんっ!? 革、命、的っ!!」
口の中に運ぶ度に広がる程よいスパイシーな刺激、それでいて本来の味をその中で保つジャガイモに人参、そしてなんといってもコクの深いルー。
まさに、素材が調和した宝石箱だ。
これを究極のカレーと言わずして何とする。
「やっぱカレーはいつどこで食っても美味いな!」
「ところデ、またミライさん性格変わりましタ? さっきと違って男っぽい気ガ……」
「細けぇことはいいんだよ! 今はどんどん食べようぜ!」
食欲全開で胃袋が光って唸り、カレーを食い尽くせと轟き叫んでるようだ。カレーを口に運ぶ腕が止まらない。
これほどカレーを美味しく感じた事があっただろうか。いや、ない。
人間界での家でカレー作りを担当していたのは美羽だが、林檎が丸々入っていたり食えないもない程よい不味さだったりと失敗が多かった。
そんな事があったから、今この瞬間のカレーが美味しく感じるのだろう。
『お兄ちゃんズルい! 私にも食べさせてよ!』
『あー、はいはい』
妹がこう言い出したので交互に交代して食べた結果、すぐに皿の上からカレーは消え去った。
みるとミーニャの方も皿が空っぽになっていた。これで二人とも食べ終わったので、さっさと部屋に戻るのが得策だろう。
「じゃあミーニャ、部屋に帰るぞ」
「…………………………ヒック」
が、俺が呼び掛けてもミーニャは身動き1つせず、ぼんやりとしてしゃっくりを上げるだけ。顔を覗き込むと、ほんのり赤く染まっている。
「おーい、ミーニャ。部屋に帰るぞ」
「らめぇ……もう一杯……もう一杯だけぇ……」
腕を引いて強引に連れ出そうとすると、舌が回っていない口調で反論してその場を動こうとしない。どうやら完全に酔っているようだ。
こうなることは若干予想していたが、まさか実際に酔うとは思いもしなかった。
『どうすんのお兄ちゃん?』
『大丈夫だよ。この位なら部屋に戻って水飲ませて寝させれば明日はスッキリだ』
「アハハー、なんかミライの顔がぐーるぐーるぐーぐルー」
『この状態がスッキリねぇ……』
確かにテンションが上がりかけてるミーニャはそう簡単には寝ないだろう。暴れさせれば疲れ果てて寝るかも知れないが、ここは宿屋。他の客に迷惑をかけるわけにはいかない。
まぁ、部屋に帰ったらシャワー室にぶちこんで冷水ぶっかければいいだろう。
「ミーニャ、酒なら部屋で飲ませてやるから早く戻るぞ」
「にゃにぃ、おしゃけぇ? もどるもどるぅ!」
そう言ってミーニャは俺の手を掴んで立ち上がった。この程度の嘘で釣れるとはチョロいものだ。
取り合えず肩を貸してやり、ふらふらと3階目指して歩き出す。
『えっと、部屋番号は何番だっけ?』
『753よ。ちゃんと覚えといてね』
『てか、お前身体の主導権取り返さなくていいのか?』
『いいのいいの。力仕事はお兄ちゃんの方が適任でしょ?』
『丸投げしてんじゃねぇよ……』
そうした妹との会話を続けている内に、どうにか部屋にたどり着くことができた。
「ミライー、部屋についたんだらぁ、おしゃけのみゃせてぇ……」
「はいはい。でもそのまえにシャワー浴びないと。今日は浴びて無いんだろ?」
「アー、そうだったワスレテター。じゃあミライがー、わたしをあらってぇ?」
「何でそうなるんだよ……。いいからほら、入った入った」
文句を言いまくるミーニャを宥め、何とかシャワー室に押し込む。
押し込んでも中でブツブツ何か言っていたが、特に気にしないようにした。
「そんじゃ、まず浴衣に着替えるか」
『着替えるのは私がやるから、お兄ちゃんは引っ込んでて」
「わかったよ、ったく』
主導権を取り返すと、服を脱ぎ捨てて浴衣を着込んでいく。でも、やっぱり大きい……。この部屋、このサイズしか置いてないからこれ着るしかないんだけど、ほんとにブカブカ。明日にでもクレーム入れようかな。
『ミライー、シャワー浴びおわったんですけどぉ、浴衣くださーイ』
私が着替え終わるのと同時に、ミーニャさんが風呂場から私を呼んだ。
なんか早い気がするけど、酔い冷ますくらいなら丁度いいのかな?
そんなちょっとした違和感を抱きながらも、ミーニャさんの分の浴衣を持ってシャワー室の前に。
「ミーニャさーん、浴衣持ってき──」
がちゃ。
がし。
「──え?」
確認のためドアを開けたら、腕を掴まれた。
ぐい。
そんで中に引き込まれた。
「え、ちょっとミーニャさ──はわっ!?」
状況確認しようとした矢先、突然ミーニャさんが壁に私を押し付けた。
えっと、これって俗にいう壁ドン?
「あ、あの……ミーニャさん?」
呼び掛けても、目の前で私の後ろの壁に手を突いたまま、ミーニャさんは返事すらしない──
と思ったら。
「…………ふひひ」
ぺろ。
「ひぅっ……!?」
いきなり首筋に顔を埋めてきたかと思ったら、舌で嘗められた。
その瞬間、身体が一気に熱くなって火照ってきた。
「ミ、ミーニャさん!?」
「もぅ、そんなに抵抗、し・な・い・の」
なでなで。
「ふぁっ!?」
今度は太股の内側を撫でられた。濡れた手が肌をなぞる度に、あられもない声をあげてしまう。
『むぅ、どうやら酔いが最高潮に達して暴走してるみたいだな』
『そんなに悠長に構えてないで……はんっ! 早く助けてよぉ……』
『こうなった以上、俺にはどうすればいいのか分からん。ミーニャが収まるまで相手してやってくれ』
『ちょっとお兄ちゃん? お兄ちゃーーんっ!?』
ちょっと、ミーニャさんが収まるまでって私耐えられないよ!
って今度はミーニャさんの手が私の浴衣に……。
「もぅ、こんなの邪魔ねぇ。脱いで直接触れあいましょ?」
「ちょっと、何言って……!?」
「ミライこそ何言ってるのよぉ?」
するり。
ミーニャさんが帯を引っ張ると、ブカブカな浴衣はシャワー室の床にずり落ちた。
つまり、今私達はお互いに素っ裸な訳で。
「ひ、ひぇぇぇっ!?」
「何恥ずかしがってるのよぉ? あ、そうだぁ、私が恥ずかしくなくして上げるからぁ」
え、何言ってるんですかこの人。
すると、ミーニャさんの手が私の腰と後頭部に。
しまった! これじゃ逃げられないっ!!
しかも徐々にミーニャさんの顔が近付いて……。
「ミ、ミーニャさん……一体何をする気で?」
「ほら、キスしちゃえばお互い恥ずかしくないじゃない?」
「その理屈はおかしいです!」
「そんなこと言わないで、私に身を委ねなさい?」
そう言うミーニャさんの顔が更に近付く。
逃げようにもミーニャさんのホールドがキツすぎて身動き取れない……。
私、こんな形で大人の階段昇っちゃうの?
「んー」
「あーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」




