プロローグその4-今河 翔
「……いちゃん」
何だ、女性の声がする。
「翔に……ん」
体を揺すられ、僕は、完全に目を覚ました。
「翔兄ちゃん!」
ここは……どこだ? 確か、神聖石を探していて、天使界でいろいろ、調べてい
た時、地面に穴があいて、落ちて……それからの記憶が、ないな。辺りを見渡す
と、機械だらけで、白衣を着た人達がたくさんいる。機械を操
作して、何をしているのかな? 僕はベッドで眠っていたようだが。超至近距離(
目の前)にいた眼鏡の女性がいきなり抱きついてきた。
「翔兄ちゃん!」
僕は倒され、なすがまま、ほおずり攻撃をくらい続けていたが、能力の盾を出し
、女性を元の位置に戻すと、ようやくひと息ついた。女性は始め、何が起こった
のかとキョロキョロしていたが、
「あ、翔兄ちゃん、能力使ったなぁ~」
と、にじり寄ってくる。僕は下がるものの、ついに、後ろは壁となった。そこに
、頭の良さそうな人が来て、
「静博士、そのくらいにしたらどうですか?」
静、博士? 妹と同じ名前だ。
「はっ、あまりにかわいかったんでつい。そうね、今日はこれくらいにしとくわ
」
といい、その白衣を着たロン毛の女性は眼鏡をとった。わけのわからない僕にそ
の女性は説明した。
「そう、ここはお兄ちゃんにとっては未来なの。そして私は今河静。お兄ちゃん
の妹よ?」
「はぁ~~!?」
どうやら、彼女が未来の静、というのは本当のようだ。家族しかしらないこと
も知っていたし。しかし、どうみても、二十歳くらい、だよな? 中身が成長し
てないってのが怖い。静はまず、目的を教えてくれた。
「お兄ちゃんの時代は特別なの。私達は決定点の時空間、と、よんでいる。本来
なら、未来は魔王に倒される未来しかなかった。それを変えたのは、美智子さん
の変化の真意を持つ、勾玉、お兄ちゃんが首から吊り下げている、それよ? 何
故、美智子さんが運命から逃れ、勾玉を渡せたのかは、恐らく、美智子さんの能
力に深く、関わっている。変化させる能力、それを常時コントロールしている彼
女は、彼女自身の運命も変化できるんだと思う。まあ、意識してないと思うけど
。それは置いといて、お兄ちゃんの時代の一年前の魔王にはどのパラレルワール
ドの翔も勝つ、という事柄に変わった。それは、ちょうど、お兄ちゃんの時空間
から。調べたところ、歴代の勾玉の中で、一番、効力を発揮しているみたい。い
つ、その効力が薄れるか、とかはわからないけど、これを利用しない手はない、
と私たち(科学者)は考えた訳。どういうことか、分かる、お兄ちゃん。……つま
りね、勾玉の効力が下がるまでに、お兄ちゃんを魔王としない未来を作ることが
出来れば、どのパラレル
ワールドのお兄ちゃんも、魔王にはならない! こういうことなの。神聖石の欠
片を探してっ! 神聖石の一部は何者かによって、三つに分けられた。本体にそ
の三つを戻せば、願いは叶う。欠片の一つは持ってるの。だから、あと二つ。そ
して、願って、僕が魔王にならない未来をっ! て。次に阻止する方法は邪影石
を探して破壊すること。お兄ちゃんが魔王となりうるには、邪影石が関係してい
る。……わかった? 今度は静がお兄ちゃんの力になるんだからっ!」
だいたい、理解した。つまり、勾玉の力が消える前に、神聖石に願う、または、
邪影石を破壊すれば、どのパラレルワールドの僕も魔王にならずにすむ、という
ことか。
静の説明はまだ、続く。
「目的はそんなところ。次は、今のこの時代の状態について。今、この時代は一
年後に現れる、お兄ちゃん、つまり魔王に対抗する為にいろいろ考えているとこ
ろ、なの。この時代にはグランドマスターとなった美智子さんがいない。何故か
はわからないけど、だから、若い美智子さんが残りのグランドマスターによって
この時代に呼ばれたんだと思う。そこまではわかっている。出来れば心強いから
、怜さんと、光秀君もお兄ちゃんの時代から呼びたかったんだけど、光秀君は失
敗。怜さんにいたっては別の誰かによって先に呼ばれたみたいね。誰かってのが
気になるけど……。ちなみに、この時代の怜さんと光秀君は力を失っている。デ
スブライタ―、簡単に言えば悪い奴らね。目的はわからないけど、そいつらに戦
いを挑んだ二人は、負けて、無結晶を飲まされ、力を失った。這々の体(ほうほう
のてい)で帰ってきたという話よ。その時、源史郎さんは殺されたわ。奴らは何故
かはわからないけど、新しい技術、マジックウエポン、を持っていた。話による
と、武器に能力を付加
できるらしいわ。つまり、能力者なら、自分の能力以外の能力を使えるし、普通
の人でも、能力を使える、らしい。グランドマスター達も独自の技術、スキル、
を持っている。これは能力者同士で発動する強力な技、のようなものね。個々の
能力とは全く別の力が使えるらしい。そして、私達にも、最近、出来た新技術が
ある。それは、バースト化。相手の能力を弱化し、こちらの能力の制限をはずす
。それには、縛る必要があるんだけどね。これは、以前、グランドマスターの美
智子さんから神聖石の欠片とともに託されたものでね。有効に使えば、かなり有
利にたてるわよ? 私は能力者じゃないから、実際、どうなるかなんてわからな
いけどね」
静はニッコリ笑うと、はい、お兄ちゃん、質問は? と聞いてきた。
「バースト化って、どうやるのさ?」
静はそれはですね~、と白衣のポケットから、何かを取り出した。
「これは?」
「そう、ボールペンと紙。ボールペンはただのペンだけど、紙が特殊でね、これ
にサインするだけ」
ただの薄っぺらい白い紙に見えるけど……僕はさらさら、とサインした。静は、
よし、これ、私の宝物にしよっと。と、紙をしまった。
「おいおい、それがないとバースト化できないんじゃ……」
それがですね、と静。ボールペンを指先で回しながら、
「これからは縛るものをかけば、相応の力が手にはいるわ、空中に指で描いても
、発動するわよ?」
僕は嫌な予感がしたが、一応聞いた。
「縛るって?」
「あ、兄ちゃん、やぁーだぁ。そんな想像するなんて」
と、手をふりながら、照れている。元気になったもんだな、静。僕が、そんな想
像はしてない、というと、
「そう? まあ、いっか。縛れるのは二つ。まず、能
力、次に行動。まあ、一度、試してみるといいよ? ちなみに、この技術はでき
たばかりで量産化はできなかったの」
僕はわかった、と頷いた。と、その時、静に電話が来た。静は携帯電話をとり、
話をしていたが、やがて、きった。
「翔兄ちゃん、光秀君も、この時代に来たみたい。さ迷っているみたいだから、
むかえに行きましょう」
やれやれ、光秀の巻き込まれ体質は健在のようだ。ん? それは僕も同じか、と
か思いながら、彼をむかえに行くことにした。
うん、静、しゃべりすぎですね。
前回活躍できなかったから、今回……というのが裏目にでたか。
次からが本編です。
お楽しみあれ!




