表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/57

反撃開始!!

 ベルは突破口を見つけられないまま、それでも銃弾の雨の中飛び出して行く。

 何度繰り返しても、その度に押し戻されている。

 マルクがビットで歩兵たちを倒してくれていても同じだった。

 どうも戦況が芳しくない様子なのは明白だ。

 なにより天井に渦巻く魔力の膨大さが、私の危機感を募らせる。


「トリス、どうしよう。私たちも何かしなきゃ」

「何かって」


 トリスは思わぬことを言われたかのように絶句してる。

 私はそんなトリスを叱咤する。


「ベルとマルクにだけ戦わせるわけにはいかないでしょ!」

「無茶だよ! 遮蔽から出たら危ないって言われたじゃないか!」


 こんな時でもトリスは優等生だ。

 いつだって大人たちの言いつけをちゃんと守る

 でも、いまはそんな場合じゃない。


「……同じだよ、遮蔽から出なくたって」


 そう言いながら、私の頭の中にあったのはホログラムで見た光景だった。


「アレが爆発したら、みんな死んじゃう」


 核兵器。

 光で全てを焼き尽くす大量破壊兵器。

 もしそんなものが爆発したのなら、誰も彼もタダじゃ済まない。

 ここにいる私たちだけじゃない、きっと街のロボットたちも──。

 そんなこと、させない。


「シャスカ!? ──もう!」


 背中越しにトリスが慌てる声を聞きながら、私は意を決してベルが作ってくれた岩の盾を飛び出した。

 途端に、館長さんは私の方を向いた。


「機関銃の照準が動いて──、シャスカ!? 不味い!」

『いけません! 戻ってください!』


 ベルの慌てた声やマルクの制止を振り切って、私は練り上げた魔力を解き放つ。


「開け、水の回廊!」


 私の魔力に呼応して、グランドホールの広い空間のあちこちに巨大な水のアーチが幾重にも立ち上がる。

 水の回廊。

 水でできた通り道を作る魔法。この中を通れば走るよりずっと早く動ける。

 私は、単身水の回廊に飛び込もうとして──、浮遊感。

 ひょいと後ろから誰かに担ぎ上げられる。

 気づいた時には背負われていた。

 その水色の背中は、翼は、乗せてもらったことがある。


「一人で突っ走っちゃダメだよ! シャスカの魔法だけじゃ、銃弾に追いつかれちゃうでしょ!」


 トリスだった。

 トリスは顔を強張らせながらも無理に笑顔を作っている。


「僕なら翼でシャスカよりずっと早く水の回廊を泳げる。水の回廊を開くなら僕のことも頼ってよ」


 トリスの言葉の通り、私よりずっと早い。

 翼のおかげか、トリスは抵抗なく滑るように水の回廊を進んでいく。

 気づけば、私たちがさっきまでいた空間を銃弾の雨が通り過ぎていた。そのまま銃弾の雨が私たちをその毒牙にかけようと後を追い縋ってくる。ドドドと水の回廊が撃ち抜かれて、水飛沫がひっきりなしに上がった。

 ゾッとする。

 トリスがいなければ、私は間違いなく銃弾の雨に撃ち抜かれていた。

 私の行動は不正解だったと早速突きつけられて、トリスの背中にしがみついたまま私は素直に頭を下げた。


「ごめん」


 けど、トリスの返事は思いがけないものだった。


「ごめんじゃなくてありがとう! でしょ!」

「あ──」


 それは式典の日のやりとり。私が巨漢の火竜族に殴られて傷ついているトリスに言おうとしたこと。

 そうだ。そうだった。私たちはずっとこうだった。

 トリスの思わぬ意趣返しに、笑みが溢れてしまう。

 銃撃に追われてるのに、二人でならなんだって平気な気がした。


「そんなことより、水の加護を絶やさないで人間のシャスカは溺れちゃうから!」

「分かってる!」


 トリスの言葉に気を引き締める。

 まだ勝ったわけじゃない。どうにかやり過ごしてるだけだ。

 状況は芳しくない。ベルたちも手詰まりだ。

 なら、私たちが突破口になるしかない!


「で、どうするの! 僕たちが館長に突っ込む流れだよね、これ!」


 トリスが私の指示を仰ぐ。

 トリスも勢いで飛び出しただけで、なにか考えがあるわけじゃないみたい。

 でも、その答えなら私はもうとっくに持っていた。


「言われたでしょ! マルクに弔ってって!」


 そう、私たちは館長さんが魔物になってしまっていたから倒すんじゃない。

 このままじゃ私たちが死んでしまうから倒すのでもない。

 マルクの、願い事だから。

 それに──。


「私が浄化する!」


 水の巫女として。

 そして、シャスカ・ランドハート一個人として。


「私が館長さんを助ける! 館長さんに私が伝えなきゃいけないことがあるの!」


 誰かに歴史を伝えるために館長さんが残って、それを私が受け取ったんだから。

 なら、私はそれに応えなければならなかった。

 人間として。


「オッケー! シャスカはそういう子だよね!」


 トリスは私の言葉に文句も言わずに明るく寄り添ってくれる。

 私の従者がトリスで本当によかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ