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史実の惨状

 一通り、フロアを見て回って、私は頭も心も少し疲れを覚え始めていた。

 それは横を歩くトリスも同じみたいで。ちょっと表情が強張ってしまっている。

 フロアを出て、今度は長い廊下をマルク先導で歩いていく。

 点々と天井のライトが廊下を照らしている。廊下には壁にチラホラとベンチが備えつけられていて、疲れた人はここで休んだりできるんだと思う。そのうちの一つのすぐ側に、廊下側に面しているところが光っている四角い機械が聳え立っていた。アレなんだろう? と思っていると、マルクが頭をクルリと回して振り向いて、そのベンチへと私たちを促してくれる。


『少し休憩にしましょうか。皆さま、お疲れでしょう』


 ベルも私とトリスにベンチを譲って、座らしてくれる。

 私とトリスはベンチに座りながら、ほっと一息を吐く。

 座ってみて、気づく。途端にドッと疲れが出て、体が重い。思ったよりも疲労があった。

 私は、一度に色んな知識を詰め込んでパンク寸前だったのだ。

 ロマの授業よりも平易な知識ばかりで、難しいことなんて何もないのに、やっぱりショッキングな内容が続いたからかな……。

 正直、マルクがこのタイミングで休憩を言い出してくれて、ありがたかった。

 そして、私とトリスを座らせてくれたけど、ベルはいいのかなと見上げると。


「自動販売機があるな。マルク、ここの飲み物は──」

「ええ、防腐処理の魔法が掛けられております。飲食しても問題ないかと」


 ベルはマルクに何かを確かめて、マルクも察しよく答えた。ベルは私たちから離れて側の四角い機械──じどうはんばいき? の前に立つと、その機械にお金を入れてポチポチと指で光っている面を押した。すると、ガコンガコンと音が二回鳴って、ベルは機械の下の方、押し戸みたいに開く箇所に腕を突っ込んで何かを取り出した。

 多分、自動で商売してくれる機械だから、自動販売機って言うのね。

 で、ベルは買って来てくれたものを私とトリスに持ってきて渡してくれる。


「ヒャ、冷たい」


 私は手渡されたそれを受け取って、冷たさから驚いてしまう。

 途端にベルは『しまった』って顔をした。


「あ、すまない」

「ううん、驚いただけだから……、これは?」


 ベルに謝られて、『気にしないで』と首を振りながら尋ねる。

 手渡されたものは缶詰に似てて、円柱の金属で、カラフルな水飛沫の絵が描かれてる。それでいてすごく冷たい。私の手の中で中身が揺れてチャポチャポ言ってる。


「炭酸飲料だ。スッキリする」


 たんさんいんりょー? 私はよくわからないまま前にベルに教えてもらった缶詰の開け方の通り、プルタブに指をかけてカシュっと開ける。途端に甘い、けど、爽やかでもある匂いが鼻をくすぐった。

 コップは辺りに見当たらないし、私はフォークとスプーンの時に我儘を言って困らせたことを覚えていたのですぐに缶に直接口をつけた。

 缶の中身を口の中に流し込む。

 あ、美味しい。

 一口飲んで、すぐに気に入った。

 シュワシュワしてて、ちょっと喉に刺激があるけど、甘くてスッキリする飲んだことのない飲み物だった。こんなのニュムパエアじゃ飲んだことない。私とトリスは基本的に水ばっかり飲んでたし、大人たちが赤ワインを飲んでいるところを見たこともあるけど。そのどれとも違う。

 トリスも気に入ったのか、「おいしいね」ってニコニコしながら目を輝かせてる。

 ……武器じゃなくて、こんな風に誰かを喜ばせるものばかり作ればいいのに。

 缶詰だっておいしかったし、この飲み物だって美味しい。

 人を不幸にするだけじゃなくて、幸せにすることだってできたのに。

 そんなことを思ってしまう。

 私とトリスが甘い炭酸飲料にすっかり夢中になっていると、ベルとマルクが話し込んでいた。


「展示はまだ続くのか?」


 どうやらベルはあとどれくらい展示があるのか確かめているようだった。


『ここから先は、ホログラム展示となっております。次で最後です』

「ホログラム?」


 聞きなれない単語に口を挟んだ私にベルがすかさず補足を入れてくれる。


「立体的な映像だ。実際にその場にいるような体験ができる。確か水の魔法で幻を作る魔法があるだろう? それによく似ている」


 ああ、と思った。確か水分子を操作して光の屈折をどうたらこうたらする魔法ね。なんか虹を作る魔法の応用だったっけ。

 はいはい、それは私も創れる。ロマに習った。けど、その魔法は魔法の腕以外にも結構イマジネーション? 作る幻を思い浮かべ続ける想像力が必要でちょっと私は苦手だった。

 幻を作ることはできてもぼんやりとしたものになったり、思い通りに動かせなかったりしてしまいがちで、一応できると上手にできるには大きな差があるのだった。

 なるほどねー、と私はフンフン頷いて新たな知識を咀嚼していく。

 で、ホログラムがどういうものなのかは別にいいんだけど。

 ベルが島に来て以来の険しい顔をしていた。そういや戦争の博物館とマルクから聞いた時も顔を顰めてたっけ。


「マルク、この子たちはまだ子供だ。あまり衝撃的なものを見せるのは──」

『ああ、そう、ですよね』


 ベルが途中で言葉を濁すとマルクも察したように私やトリスの方を見て、カメラ横の顔の光を点滅させた。心なしかションボリしているように見える。

 ベルやマルクが私たちを気遣ってくれてるんだと察することはできた。

 多分、ホログラムで戦争の何かを見るんだろう。それは立体的な分だけこれまでよりもっと衝撃が大きい。それをベルとマルクは危惧しているんだ。

 ベルはニュムパエアを逃げ出すとき追っ手を殺さないようにしてくれたし、死体をあまり見ないようにと忠告もしてくれた。きっと、その延長線なんだと思う。

 それはガラス細工を触るような、優しい扱いで。

 けど、そんな子供の私にも考えがあった。


「私、大丈夫だよ」

「シャスカ」


 甘い炭酸飲料とベンチで一息つけたのもあって、気力は回復しつつあったし。

 それでもベルが心配そうな顔で私のこと見てくるもんだから、私は一度ニコリと微笑んで見せた。


「大事なことなんでしょう? だったら、どんなに酷いことであっても、私、受け止めるよ。私、水の巫女だもん」


 水の巫女として世界を担うつもりでいるのなら、目の前の現実をきちんと受け止めなきゃいけない。

 それはニュムパエアで、巨漢の火竜族と戦った時に自覚したことだった。

 それに、人間のことならなんでも知りたかった。

 私は、ずっと自分以外の人間と出会うことを夢見てきたから。

 人間そのものじゃないけど、でも、同じ人間が遺したものなら私は知りたい。


「僕もシャスカの従者だから、シャスカが行くなら僕も行きます!」


 トリスも私の言葉に元気よく続いてくれて。トリスは私の背を押すようにそっと手を握ってくれる。

 うん、トリスがいてくれる。それに気遣ってくれるベルとマルクもいる。

 なら、きっと大丈夫。

 ベルは逡巡するようにしばらくその場で固まってしまっていたけれど、一度私の目を見て、それに私が静かに頷くと頷き返してくれた。


「分かった。でも、嫌な気分になったら二人ともすぐに出るんだ。いいな」


 ベルは念を押すように私たちに言い聞かせる。


「うん」


 私とトリスは神妙に頷いた。


「行こう」


 そして、私はトリスと手を繋いだまま立ち上がる。

 もう缶の中身はすっかり空っぽになっていた。

 十分休息はできた。


『では、こちらに』


 マルクは私とトリスの手から空になった缶を受け取ると、体の前の部分をパカッと開けて缶をしまい込んでしまう。それからさっきと同じように私たちを先導してくれる。

 そして、廊下の終点。

 そこには大きなドアがあった。これまでと違ってドアのある壁がなんだか丸みを帯びている。


『この先、当時の戦争の記録を上映するドームとなっております』


 マルクが重厚なドアを開け放ってくれて、「どうぞこちらへ」と、中に入れてくれる。

 マルクに誘われるまま、私たちはドームの中へと足を踏み入れて行った。

 

  ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 ドームの中では凄惨な光景が広がっていた。

 いま私の目の前で大砲で体が吹き飛んでいった兵士がいた。

 また次の瞬間には銃弾の雨に蜂の巣になって、血煙を上げながら倒れていく人。

 また次の瞬間には──。

 それは、勿論、ホログラムの立体映像で、幻で、現実の光景じゃなくて、何かしらを喚きながら生き残ろうと銃を抱えて走っていく兵士が私たちの体をすり抜けていくことからも明らかなんだけれど。

 でもマルクは記録って言ってた。だからこれは実際に起こったことなんだ。

 私は、固唾を飲んでホログラムを見ていた。

 幸いと言っていいのか、配慮されているのか、人が死ぬ瞬間は目まぐるしく流れていくけれど、死体をマジマジとは映さないから思ったより心労はなかった。

 ただただパッパッと目まぐるしく場面が変わって、人が死んで、それがある意味戦場での命の軽さを指し示しているようでもあった。

 私はふと気になって横で腕組みしながらホログラムを見ているベルに小声で尋ねた。


「(……なんでああ言った武器を使うの?)」


 戦場を走る人たちは、大体みんな銃を手に持っている。

 体を守る装備や服装は色々時代によってまちまちだけれど、みんなあつらえたように銃ばかりを持っている。

 けど、遠距離攻撃手段ならもう一つある。

 魔法を使えばいいんじゃないの。確かに銃も遠距離から攻撃できているみたいだけど、魔法だったら広範囲も一気にまとめて攻撃できる。実際、最初の方は魔法を使ってる人も見受けられた。けど、のちの時代になればなるほど減っていく。

 ベルは私に合わせて顔を寄せて小声で耳打ちしてくれた。


「(原初の光の祝福を受け取れず魔法の才がないものでも、ああいった道具なら使い方さえ覚えれば誰でも使えるからさ。人を殺したいだけなら魔法なんていらないんだ)」

「(……そっか)」


 それは単純な答えだった。

 高度に発展した技術は、祝福によって行使できる魔法よりも平等に恩恵を与えた。

 ……なら、それでよかったんじゃないのかな。祝福を奪い合わなくたって。

 私はモヤモヤとしたものを胸に抱え始めていた。

 それからも銃という武器を撃ち合って、銃弾に人々が倒れていく様がホログラムではひたすらに上映されていった。

 銃だけじゃない、大砲や火炎放射器、地雷、戦車、手榴弾、毒ガス、ミサイル、ドローン、ビット。

 時代を経ていくごとにそれまで聞いたこともなかったような名前の武器の数々で、たくさんの人々が死んでいく様を私はホログラムで見た。魔法がなくたって、人間は色んな物を使って人を殺す。

 そして、ホログラムでは場面が変わって。

 急に遠景の画面になった。どこかの都市が映し出されている。

 それはいま私たちがいる都市の昔の姿と同じぐらい、ううん、それよりもっと高度に発展して。天にも届きそうな建物がいくつも建ち並んでいた。

 なんなんだろうと思っていたらその都市を、一瞬のうちに光が飲み込んで。

 それは、その光景は。

 重なった。リフレインする。


『っ! シャスカ様!』


 トンと私の胸を押して、焦った表情を浮かべている水竜族の騎士。

 私の近衛騎士。

 水竜族の騎士が私を庇って豪火に飲み込まれていく瞬間が、私の中でホログラムと重なって、私は胸から競り上がるものを感じて、口を抑えた。

 口の中にさっき飲ませてもらったジュースを酸っぱくしたような味が広がって、喉が焼けるような痛みに涙目になりながらうずくまる。


「シャスカ!」


 ベルはすぐに気づいてしゃがみ込んで、うずくまる私の背中を摩ってくれる。


「マルク、もう──」

「大丈夫!」


 ベルはマルクに腕を振ってホログラムを止めるように指示しようとするけど、私はベルのその腕にしがみつくようにして、待ったをかけた。

 けど、ベルは私を心配する表情を崩さない。


「だが──」

「大丈夫だから」


 繰り返す。

 私は水の巫女だから。

 ううん、違う。

 私と同じ人間がやったことだから、竜であるトリスやベルと違って私だけは目を逸らしちゃいけないんだと思った。

 私は人間が知りたくて、人間に出会いたくて、それで旅に出たくて。いま旅をすることができてて。

 なら、人間の嫌なところだって見つめなきゃいけないはずで。

 人間のいいところだけ見たい、だなんて、そんなの虫が良すぎると思うから。

 だから。


「大丈夫」


 繰り返す度、三度。

 それでベルも観念したのか、深く頷いて腕を下ろしてくれる。

 そして、ベルに支えて貰うんじゃなくて、フラフラとしながらも私はしっかり自分の足で立ち上がる。

 自分で言ったことには、責任を持たなくちゃ。

 それに、私は尋ねなければならなかった。

 どうしても知らなきゃいけない。

 私は声を落とすことなく、真正面から問いかけた。


「何があったの」


 目の前のホログラムでは、街の全てが壊されていた。

 あんなに発展していた都市だったのに、全てが瓦礫の山で。動くものは誰もいなくて。あたりに黒い煙が幾重にも立ち上がっていて。それから街に黒い雨が降り注いだ。

 直接映されなくたってわかる、そこには死の空気が充満していた。

 いま私たちがいる廃墟の都市よりもっと荒れ果てていた。

 それは火竜族によって燃やされた式典の会場の被害ともまるで比べものにならなかった。

 その問いには、ベルじゃなくマルクが応えてくれた。


『核戦争が勃発したんです』

「核戦争……?」


 またわからない言葉が出てきて、おうむ返しをしてしまう。

 ベルが頷いて補足してくれる。ベルも私に合わせて、もう声を落とすことはなかった。


「広範囲を光で焼き尽くし、大量の汚染物質を撒き散らしその土地を不毛の大地に変える核爆弾という兵器を各国が撃ち合ったんだ」


 なにそれ……。

 私は、一瞬、呆気に取られながらも声を荒げた。


「そんなの、ひどいじゃない!」


 そんな武器を使ったら、戦争が終わった後でも誰もその土地に住めなくなっちゃう。

 それは戦争がいつまでも終わらないのと同じだ。


「……そうだな、ひどいことだ」

『ええ、もう二度と繰り返してはいけないことです』


 口々にベルやマルクが賛同を示してくれる。

 誰が見たってひどいこと。

 なのに。


「なんで、そんなことしちゃったの?」


 私の素朴な疑問。

 しばらく、重い沈黙が辺りを包んだ。

 酷いことだって誰が見たって分かることなのに、色んなことを知ってるマルクですら簡単には答えが出せないみたいで。

 ダメなことだって分かってるはずなのに。

 長い沈黙を切り裂いてベルが口を開いた。


「そうだな、強いて言うなら──」


 ベルはそう前置きを入れて、口にした。

 ベルは不確かなことを口にする時は、強いて言うならと前置きを入れる癖があるみたいだった。


「魔法や科学の合いの子で瞬く間に技術が発展したんだ、この世界は」


 確かに、さっきのフロアの映像やホログラムで見せてもらった感じ。

 ニュムパエアでの暮らしからは想像もできないほど、外の世界、人間社会は発展していた。

 武器でさえそうだ。人間たちが使っていた武器と比べてしまえば、竜たちは強力な魔法が使えるとは言え、竜が使う剣だとか刀だとか槍だとかの武器はおもちゃみたいなもので。とても前時代的な代物にも見えてしまう。

 ベルの言葉をマルクが言継いだ。


『ええ、ですがそれに応じた倫理観を育むにはその進歩はあまりにも早すぎるものでした』


 早過ぎる発展に、人間自体が追いつけなかった。

 やっちゃいけないことを平気で行って。

 そして。


「旧世界の人類史は未だ千年しか経っておりませんでした。人類という種が産まれ千年で核戦争が起き世界は滅びの危機を迎えたのです」


 マルクの言葉に、私は呆気に取られて何も言えなかった。

 黙りこくったままの私を置いて、マルクは続ける。


『それからのことはシャスカ様もご存知でしょうか。人間が核戦争の中で原初の光の一つである火の光を竜たちから盗みそのせいで火の氾濫が起き、それを水の巫女が水の氾濫を起こし制することでどうにか世界を救ったのです。その代わりほとんどの大地が水没し旧世界の文明は滅んでしまいましたが……』


 マルクはまるで当たり前かのように、この世界の常識かのように言う。けど、その中に一つだけ聞き捨てならないワードがあった。


「水の氾濫!?」


 水の巫女が水の氾濫を起こしたですって!? 世界を救ったけどその代わり大地が水没した!?

 とんでもないワードに私はたまらず声を上げてしまう。

 横にいたトリスも戸惑った様子でなにも言えないでいる。


『シャスカ様どうかなさいましたか?』


 私の驚きようにマルクも驚いた声をあげる。

 そんなマルクに詰め寄って、私は問い詰める。


「水の巫女が火の氾濫を収めたってだけじゃないの? 水の氾濫を起こしたってどういうこと!? そのせいで大地が沈んだって、私そんなこと初めて聞いた!」


 だって、ロマは水の巫女が水の氾濫を起こしたなんて一言も言っていなかった。

 二度と原初の光を不用意に扱い暴走させてはならない。原初の光の氾濫は二度と起こさせてはいけない。ロマは何度も口酸っぱく私に言い聞かせていたのに……。

 なのに、水の巫女も水の氾濫を起こしていたってどういうこと?

 水の巫女が世界を救った。そこまでは同じでも細部がまるで違っていた。

 

『……お前はどうせ何も知らねえくせに、一丁前な口を叩くものだなぁ』

 

 あの巨漢の火竜族が私を蔑むように見ていた理由。

 その答えにもう少しで手が届きそうだった。私はマルクのその体をガタガタと揺さぶった。平静でいられなかった。

 私に揺さぶられているマルクが助けを求めるように、ベルに頭のカメラを向けた。


『ベル様……?』

「この子たちはまだ大人たちから詳しくは教えられていないんだ」

『ああ、なるほど……』


 マルクは納得したように声を落とした。

 けど、私は納得できてない!


「ベルは知ってたの……?」


 新たに矛先を向けられたベルは、観念するように口を開いた。


「ああ……、というより、君たちが色んなことを知らないことに驚いていた感じかな」


 知らなかったのは、私とトリスだけ……?

 私は、マルクの体を揺さぶる手を止めて、すっかり項垂れて床ばかりを見つめてしまう。

 幸い、ホログラムの映像の主な内容は核戦争が最後だったみたいで、今は多分、このホログラムを作った人たちの名前の文字が立体的なホログラムとなって床から天井へと昇っていくところだった。

 そこに、マルクが付け加えた。


『──そして、この世界を創ったとされる竜神アストラは原初の火の光を人間に盗まれて以来、姿を隠し、二度と現れることはなかったと言われています』


 マルクのその言葉を締めにして、ドームのホログラムが終わった。

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