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38話 主権。信用。


 世界代表者会議の約3年後、(ヴァルータ公開式典から7年が経過)、長男ヴィルフリートは24歳(ベクレラ王国外務省勤務)、ソフィアは22歳、アルフォンスは17歳、マイヤは14歳を迎える。


 世界では、既に貨幣はほぼ存在していない。

 全ての種族の、ほぼ全員が、スマポ・タプレを利用している。


 アルフォンスの最終目標が実現された。

 貨幣が存在しないことによって、無駄なコストが大幅に節減され、職業訓練などによることもあり、世界はより楽しく豊かになった。



 これが最後になるだろうが、金貨での為替レートの推移は以下となる。


・ヴァルータ公開前。旧3大国1枚=ベクレラ王国1.1枚=エング辺境伯領1.2枚。


・7年前(公開後)。旧3大国=ベクレラ王国=エング辺境伯領。(同価値に)

 

・6年前(公開1年後)。旧3大1.1枚=ベクレラ1枚=エング1枚=100万en。(価値が逆転)


・5.5年前(公開1.5年後)。旧3大1.2枚=ベクレラ1枚=エング1枚=100万en。(逆転差が拡大)


・5年前(公開2年後)。旧3大1.3枚=ベクレラ1.1枚=エング1枚=100万en。(逆転差が拡大。「en高」だ)


・4.5年前(公開2.5年後)。帝国・皇国1.7枚=ベクレラ1.3枚=エング1.2枚=ヴァルータ100万en。(大幅に逆転差が拡大)


・4年前(公開3年後)。帝国1.9枚=皇国2.1枚=ベクレラ1.4枚=エング1.3枚=ヴァルータ100万en。(皇国がいい感じに香ってきた)


・3年前(公開4年後/アルベルト声明発表後/世界代表者会議の「直前」)

 帝国50枚=皇国16枚=ベクレラ7枚=エング6.5枚=ヴァルータ大公国100万en。


・3年前(公開4年後/アルベルト声明発表後/世界代表者会議の「翌日」)

 帝国150枚=皇国500枚=ベクレラ19枚=エング10枚=ヴァルータ大公国100万en。


・そして、現在(ヴァルータ公開7年後/世界代表者会議から3年後)

 既に貨幣はほぼ存在していない。



 なお、世界代表会議で発表された概案のうち、「各国は、貨幣ではないenのような通貨を独自に発行できること」については、事前打ち合わせでも様々な意見が出た。

 特に「各国に独自通貨を発行させず、ヴァルータが多くのenを発行して、各国に配分したらどうか」という考えだ。


 しかし、アルフォンスは、各国の「主権」を重視した。自立・自律と言ってもいいだろう。

「主権」とは、簡単に言えば「自国のことは自国が決める」権限のようなものだ。


 仮に、ヴァルータがenを配分するとなると、ヴァルータの権力が強くなりすぎ、各国は事実上、ヴァルータの属国扱いになりかねない。

 それは、アルフォンスが望むところではない。あくまで「主権」が必要だ。自国のことは自国で決めるべきなのだ。

 これから数百年以上のことまでも考慮すると、絶対に必要だと考えていた。



 なお、各国が発行する通貨は、「en」である必要はない。

 例えば、ベクレラ王国が発行する通貨は「bq」でもよいのである。

 しかし、各国は、例えばベクレラ王国は「ベクレラen(表記:BQ en)」を、マーキュリー商業国は「マーキュリーen(表記:MC en)」の発行を選択した。


(必然的に、区別化のため、ヴァルータのenは「VL en」と表記されることになった)



 貨幣がなくなり、地金の含有量が問題とならなくなった現在、各国の通貨価値は、「人々による通貨発行国に対する信用度」のみによって決められることになる。


 各国の通貨発行量は、公式発表されることになっているため(ヴァルータが全て把握しているので虚偽発表はできないことを世界中が知っている)、不当に発行量を増やすと、途端にその国の通貨価値は下がる。


 ヴァルータ大公国を含めた多くの国は、各種情報から算出した「各国の適正な通貨発行量」を、あくまで自国の「見解」として、事前発表している。

 世界がどの国の「見解」を信用して参考にするかも、その国の信用度にかかっている。


 現在はヴァルータ大公国の「見解」が最も信用されているが、ヴァルータ大公国の信用度が低くなれば、別の国の発表が信用されることになる。

 ヴァルータ大公国もその他の国も、通貨の信用度を維持するため、常に自国を律していく必要があるのだ。

 

 このような、各国が自国の信用度を維持するようになる傾向は、アルフォンスが「主権」を重視した理由でもある。



 なお、現在から2年前(世界代表者会議の約1年後)に起こった事件により、各国がますます自国に対する信用度を重視するようになった。


 それは、ゲデック帝国で起こった。


 新たに就任した総帝(無人島で指揮官に任命された、人望が厚く優秀な元伯爵)は、二度と他国を侵略することがないよう、軍部を縮小することにした。

 それに反発した一部の軍人達が暴走し、旧帝国領土だった、ある王国に侵攻したのだ。

 それに対して、周囲の王国が協力して撃退したが、このことで帝国の発行通貨の価値が大幅に下落した。


 このことによって、各国が「世界に信用されない国の通貨価値は下落する」との事実を改めて確認したのだった。


 また、帝国通貨の価値が、侵略行為前の元の価値に戻るまでに8年もかかることになる。

 このことも、後々、各国において「ゲデック帝国の一部軍人達の暴走に起因する通貨価値下落と、同価値が回復までに要する期間」が、歴史的経験として忘れられない痛烈な教訓として残り続けることになる。



 参考までに、現在の為替レートの一例は以下のようなものだ。


(マーキュリー)MC en 3.5 = (ベクレラ)BQ en 2.5 = (ヴァルータ)VL en 1.0



 ようやく実現したのだ。

 アルフォンスが、3歳時に転生と女神ペルーサーとのやりとりを思い出し、5歳までの2年間での術式構築や計画立案を経て、5歳時に「アルベルト」として冒険者登録をし、この最終目標の達成まで、17歳の現在まで、そう、12年かかった。


(あ、まあ、前世で29年生きたので、計46歳になるんだけどね、ええ‥‥)



 テュポンはよく思うのだった。

「若の前世の職業は、金融・通貨・銀行など、お金とは全く無縁のものだった。なのに、なぜ貨幣を無くすといった発想に至ったのだろうかと、私には不思議だった。そこで若に訊いてみたところ、『将棋と同じだよ。興味をもったから多くの本を読んだんだ。貨幣を無くしたかったのは、テュポンも映像共有で知っているように、コンビニで弁当を買ったりするとき、レジに長蛇の列ができているのに、財布から小銭を出して時間をかけるような人が結構いたんだ。後ろの人達はもうみんなイライラ殺気立っててね‥‥ だから僕は、貨幣も紙幣もなければいいのになぁってよく思ってたんだ』と答えてくださった。この世界の人々は、若の動機がそのようなものだと知ったら、どう思うんだろうか‥‥ 結果的にはスマポ・タプレが普及し、貨幣が無くなったことで、様々な面でコストが大幅に削減されたとはいえるのだが‥‥」



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