31話 S級冒険者達の来訪
ある日、S級ソロ冒険者5人がアルベルトとの面会を求めていると、外交庁から連絡があった。(用件を問うても答えなかったらしい)
S級ソロ冒険者は世界に5人(女性1人、男性4人)しか存在しないので、勢揃いということになる。
5人は各国の王家や上級貴族との親交が深い。
そこで、アルベルトは情報庁に「今回の面会の件で、どこかの国の王族は関与している可能性は?」と確認したところ、「いえ、王族の関与は一切ありません。ザイデル皇国を含む、いくつかの国の上級貴族の関与のみです」とのことだった。
(ひとまず安心した。しかし面倒だなぁ‥‥ 用件を伝えないで公爵に面会を求めるなんて明らかに礼を失する。それだけで拒否するには十分だ。もう公爵位なんて全く役に立ってないじゃないか! ふぅ。おまけに、どうせ上級貴族たちがヴァルータの技術を入手して自国での地位を上げるなどの功名心から、S級ソロ冒険者に僕を屈服させるためだろうと容易に予測できるし‥‥)
と、アルベルトが考えているとき、ウリヤーナから「ええやんか、ちょっとアタシが軽く揉んだるわ。ウピオルもやりたいっつーとるし」と思念伝達がきた。
ということで、指定した日時に、S級ソロ冒険者5人のみならず、S級パーティー20人(5人×4組)がヴァルータにやってきたとの連絡が入った。
(え? どういうこと‥‥?)
入都係員に「じゃあ、そこから一番近い北区の第13サッカー場に案内しておいて‥‥」と伝え、アルベルトも少ししてから行くと、フィールドのセンターサークル付近に、25人と、ウリヤーナとウピオルがいた。
20代後半と思われる男(フリヴォラスという名前らしい)が、「貴殿が『実質的S級ソロ冒険者』といわれている、ヴァルータ公爵であるか」と、あのザイデル皇国のアレな長官のような尊大な態度で突っかかってきた。
他の24人は常識を弁えているらしく、伏し目がちだ。
(上級貴族たちからの依頼で、やむを得ずといったところなんだろうなぁ。それにしても「フリヴォラス」って、前世で「軽薄な、浅薄な」という意味だよ。出来すぎで怖いんだけど‥‥)
「はあ、私ですが‥‥」
「はっ! そんなゴブリン以下の魔力量で何が『実質的S級ソロ冒険者』だ! どうせ貴殿ではなく、別人の実績だろうが、この偽者が!」
「あ、そうなんですよ、実は。ええ、まったく。で、ご用件は?」
「ふざけるな‥‥ 勝負しろ!」
(うわー、ウリヤーナは爆笑を堪えてるし、ウピオルは例の汚物を見る目つきで今にも殺してしまいそうだ‥‥)
思念伝達で「ダメだよ、ウピオル、この人たちは強い魔物を討伐してくれるから、必要な存在なんだよ」と2人に伝えたら、「承知しました。フルボッコにしてから治癒魔法を施し、心が折れたことも記憶改変して忘れるようにしておきます。あ、お気づきの通り、芝が痛まないよう結界を張ってあります」と薄笑いを浮かべている。
「あのー、勝負して、仮に私が勝った場合、何かメリットはあるのでしょうか?」
「は? 勝つわけないだろ。俺が勝ったらこちらが要求する技術を寄越せ。仮に貴殿が勝ったら、名誉が得られる」
「名誉? 本気ですか? そんなもの食べられないじゃないですか。もっと実利的なものはないのでしょうかね?」
「じゃあ俺が負けたらS級ランクを返上してやるよ! 負けるわけないがな!」
「実利的の意味、ご存知です?」
ウリヤーナは内心で「若って、皇国の阿呆長官のときもそやったけど、微妙な匙加減で相手をおちょくるんよな。自身は気付いてんのかいな? まあ、ワタシはそういうとこが楽しいんやけどな」とニタニタしていた。
フリヴォラスの後ろにいる24人は「まずい、あの公爵、殺されるぞ‥‥」と心配していた。
「てめぇ‥‥」
(「私の戦闘力は53万です」って、「機内にお医者様はいらっしゃいますか?」くらい、言ってみたいランキング20位に入るんだけど、通じないからなぁ‥‥)
とアルベルトが考えているうちに、フリヴォラスは強烈な魔法をいくつも放っていたが、全てアルベルトの結界に弾かれていた。
フリヴォラスが激昂して魔剣を抜いた瞬間、その魔剣はアルベルトの手元に渡っており、「この魔剣は希少ですね。オークションには出さず、個別取引で売却しますから、あなたの名誉?は傷つきません。あなたはまだこのクラスの魔剣を4本所有しているようですから、魔物討伐に影響はないですよね」とアルベルトが言い終わらないうちに、ウピオルが飛びかかって「アンコンダチョーク!」と、フリヴォラスを失神させていた。
アルベルトは後に知ることになるが、この頃、ウピオルはアルフォンスの前世の格闘技を習得中であった。
(いや、スプレーマに格闘技は必要ないでしょ‥‥)
突然の乱入に驚いた後ろの24人も臨戦態勢に入ったが、ウリヤーナが一瞬のうちに「10往復ビンタ」を全員にかましていた。
そして、何が起きたのか分からないまま、様々な技の名前を告げられながら、ウピオルに関節技を次々に極められている‥‥
怪我をすると直ちに治癒魔法がかけられ、「ローキック一発で沈んでたらアカンやろ!」とか「まだまだ関節技はありますよ!」などと理不尽な扱いをされ、1時間ほどS級さん達は遊ばれていた。
(阿鼻叫喚ってこういう時に使うんだろうな‥‥)
「よっしゃ、ちょっとだけええ汗かいたわ。きみたち、A級・S級魔物討伐に必須の武具を除いて、一番高価なものを置いていきや。修行代や。嘘ついてもすぐ分かんでー」と恐喝され、完全に心を折られた25人はアイテムボックスやマジックボックスからそれぞれ武具を取り出して置いている。
ウピオルが「若、この者たちは完全な健康体に戻しています。あとは記憶改変して心が折られたことは忘却させておきます。武具は若に献上したという記憶に」と。
アルベルトは特殊な身体鑑定(2時間前と現在の身体状況の比較)をしてみた。
・25人(歴戦の猛者)全員の古傷が完治している
・虫歯完治が数人、水虫完治が数人、背骨歪曲の矯正済みが数人、悪性腫瘍が無くなっているのが1人。
(来たときよりめちゃくちゃ健康になってる‥‥ 機内にお医者様がいらっしゃったということでいいか‥‥)
「うん、任せるよ。丁重にお送りしておいてね」




