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23話 ザイデル皇国ご一行様


 enがここまで強くなると、他国からの隠密行動に留まらず、武力行使に出られる危険性(ヴァルータにとっての危険ではなく相手方にとって危険)があったので、1日だけスプレーマ7人に魔力制御を止めて解放するよう指示した。

 これでさすがに武力行使はなくなるだろうと期待した。

(但し、テフヌト教国を除いて、だが‥‥)


 数日後、ザイデル皇国の国務省と商務省(それぞれヴァルータの外交庁と産業庁に相当)から、マーキュリー商業国のジラルデ商業大臣を通じて、アルベルト商会との会合を希望する旨の連絡がきたので、3日後を指定した。


 当日やってきたのは国務長官・商務長官と部下・護衛の計10人。


 財務庁の会議室にて、アルベルト、ウリヤーナ、ルシフェル、ウピオルという意地悪なメンバーで対応することとなった。

(どうせロクでもない要請だろ‥‥ と予想したからだ)


 商務長官が「我が皇国において、複合娯楽施設なるものの営業を許可する。但し、enの使用は認めぬ」


 国務長官がその横で尊大に頷いている。


 4人は思念伝達でやりとりする。

 ウリヤーナ「こいつらの上から目線、ほんま笑えるわ!」

 ウピオル「横柄が服を着て歩いているような汚物ですね」

 ルシフェル「いますぐ皇国を蹂躙しちゃうか」

 アルベルト「もうどういう対応してよいのやら‥‥」

 

「何だ、そなたら、名誉なことではないか。我が皇国での営業許可を出しているのだぞ」


 アルベルトは「えーと、enの使用を認めない理由は何でしょうか」と訊いた。

「決まっておろう。国ではない一貴族(辺境伯)が発行した金など使わせるわけにはいかないからだ」


「そうですか‥‥ では残念ですが、同施設の設置はお断りせざるをえません」

「何を言っておるのだ。そのようなことが許されるわけがないであろうが」

「(ふぅ‥‥) 貴殿らがヴァルータに施設設置を強制できる理由をお伺いしてもよろしいでしょうか」

「そなたが平民だからだ。おまけにそなたの魔力量の小ささもな、くくっ」


「なるほど。交渉は決裂という結果に終わってしまいました。双方にとって残念なことです」

「何を言っておるのだ。交渉ではない。皇帝陛下による命令と心得よ」


「あー、いえ、ですから、貴国の皇帝陛下が他国の平民に命令を出せる根拠をお示しくださいと申しているのです。例えばベクレラ王国の国王陛下が貴国の平民に命令を出せるのでしょうか」

「貴様、さきほどから失礼にもほどがあろう!」

「いえ、失礼かどうかよりも、まず私の質問にお答え頂けますでしょうか」


 背後に立っていた護衛の部下が「おい! 貴様! 皇国の長官に向かって何たる態度か!」と勢い余って抜剣した。


(きた。まさにこういう事態を発生させるために、通常は許されない帯剣を許したんだよなあ。おちょくった甲斐があったなあ)


「貴国では交渉の場での抜剣が許されているのでしょうか。国務長官、いかがでしょうか」

 さすがに外交を担当する国務長官は、困惑した表情で「失礼に‥‥あたろう‥‥」と述べた。


「では、これにて会合は終了ということでよろしいですね」

「やむを得ませんな‥‥」


 商務長官が「貴様ら、覚えておれよ!」と怒って出て行き、その他も彼に続いた。


(大丈夫ですよ。私が忘れても、この部屋での一部始終を記録した映像は残りますので)


 ウリヤーナは「いやー、おもろい阿呆を見せてもろたわ」と大爆笑していたが、ウピオルは「いえいえ、まだまだですよ、長官2人には情報送信術式を埋め込んでおきましたので、皇帝にどう報告するのかまで楽しめますよ」と満面の笑みを浮かべた。

 ルシフェルは「あいつらも超大盛りカレー全部乗せでも食ってりゃもう少しまともになるだろうに」と言ったが、それはちょっと違うと3人は思った。


 後に2長官による皇帝への報告動画を見たのだが、こちらがめちゃくちゃ悪者になっていて、いっそ清々しかった。

 ただ、公式の抗議がなかったのが残念ではあった。録画映像を公開したかったのに‥‥



---



 ヴァルータ公開式典から2年が経過した。 


 マイヤは10歳となり、予定より1年早く大学を首席で飛び級卒業して、希望通り、ヴァルータで仕事をすることになった。様々な職を経験できるよう、特に任務は決めていない。


(姉ソフィアは11歳で飛び級卒業した。それは従来の最年少記録を5歳も縮めたものだったが、マイヤはさらにそれを1年縮めたことになる。当時のソフィアは天才と騒がれたが、マイヤはそれ以上の扱いを受けた。ただ、兄アルフォンスとしては、当時のソフィアには目標がなかったが、マイヤには「とにかく早くヴァルータで仕事を早く」という明確な目標があったからだと思った)


 これで、「クルー」は、アルベルト(アルフォンス)、スプレーマ7人(ハイエルフ「シルヴィ」、大精霊「ウリヤーナ」、熾天使「ミカエル」、悪魔・堕天使「ルシフェル」、ヴァンパイア真祖「ウピオル」、神龍「テュポン」、神獣「ヨルム」)・バルガス(ドワーフ)・姉ソフィア(17歳)、妹マイヤ(10歳)の、計11人となった。


 この時点で、世界中のen専用両替所は、以前の1万箇所から3万箇所に増えていた。(アルベルト商会の支店、複合娯楽施設に設置されているものも含む)


 さらに、5大商会の支店や中小規模の商会の支店などの多くでも、タプレでのenとの両替が可能となっていた。


(タプレに両替機能はなかったのだけど、マジックボックスを使えば「貨幣と貨幣」の両替は容易だし、財布アプリはあるのでenを購入しておけば「貨幣とen」の両替も可能だ。ただ、迂遠であるのは確かなので、タプレに両替アプリを無償追加した。既に購入済みのタプレも含めて)


(en専用両替所では「貨幣をenに両替」できるだけだが、両替商や商会のタプレでは「貨幣をenに」「enを貨幣に」の両方向の両替が可能だ。さすがに両替商や商会のタプレに「一方向のみ両替可能」な制限をつけるのは不便を押し付けることになるので避けた。それが後に有効な結果を生むことになるのだけど‥‥)


 なお、タプレでは、両替、アプリ販売のみならず、今では多くの動画・音楽なども購入できるようになっている。


 中小規模の商会でのタプレ導入が進んだのは、enとの両替を望む客が増えたこともあるが、動画・音楽の購入を目当てに入ってきた客が、店舗でいろんな商品も同時に購入してくれるからという理由も大きいようだ。


 両替所が増えることによって、さらにenへの両替が加速した。


 現時点までの、金貨での為替レートの推移は以下となる。


・ヴァルータ公開前。3大国1枚=ベクレラ王国1.1枚=エング辺境伯領1.2枚


・2年前(公開後)。3大国=ベクレラ王国=エング辺境伯領 (同価値に) 


・1年前(公開1年後)。3大国1.1枚=ベクレラ王国1枚=エング辺境伯領1枚=100万en (価値が逆転)


・半年前(公開1.5年後)。3大国1.2枚=ベクレラ王国1枚=エング辺境伯1枚=100万en。(逆転差が拡大)


・現在(公開2年後)。3大国1.3枚=ベクレラ王国1.1枚=エング辺境伯領1枚=100万en。(逆転差が拡大。「en高」だ)


 公開式典から2年、公約通り、世界中のアルベルト商会店舗とヴァルータ認可店(複合娯楽施設や料理店など)ではスマポ決済のみ可能としたことも影響を及ぼしている。



 為替レートは、為替市場において異なる通貨が交換(売買)される際の交換比率を意味する。変動相場制において、為替レートは、国家が恣意的に決めるわけではなく、為替市場における需要と供給のバランスによって決まる。

 例えば、前世での「ドル円」相場では、2011年では1ドル76円台(「円高」)、2021年では1ドル115円台(「円安」)まであった。

 つまり、2011年には76円を払って1ドルと両替(購入)できたのに対して、2021年には115円も払わないと1ドルと両替(購入)できないということで、つまり円の価値が3分の2にまで下がったということになる。10年でこれほど変化するのが通貨である。(実質実効為替レートではないけど)



---



 ヴァルータ公開の時、テフヌト教国は、「ドワーフ1,000人を掠っていった」のがヴァルータだと知り、教皇らが激怒していたこともあり、アルベルト商会・複合娯楽施設の受け入れには消極的で、en専用両替所の設置は拒否していた。


 しかし、テフヌト教国が国境を接するマーキュリー商業国と自由都市連盟を通じて、教国内でヴァルータの料理や商品が流通するようになると、多くの国民の強い要望に応えて(というのは半ば建前で、教会上層部が娯楽と贅沢を求めて)、いまや多くの商会支店・複合娯楽施設、そしてen専用両替所が設置されていた。


 国民も料理や娯楽を楽しんでいる。





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