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テイルズテイル ~Tale's Tale~  作者: 天雪キョウ
クレスエント王国編 ~誓いの騎士と十年の清算~
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序奏の章《喧騒(シアワセ)を呼ぶ明星(うぶごえ)》 3

 勇輝とアーティアは木々の隙間からその存在を主張する光と勇輝の記憶を頼りに、歩き難い獣道を進んでいた。

「おかしいな……道は間違ってないと思うけど、こんなに遠かったか?」

 光を目指して歩き始めて三十分は経過しただろうか。それでも目的の光には一向に近付いたという感じはしない。自分たちが進んでいると確信できるのは姿を変える木々くらいのものだった。

「大丈夫。目指してる樹っていうのは神樹のことでしょ? なら、もうすぐだよ。ちょっと上り坂になってるから時間がかかるだけ」

 三十分も歩き通しだというのに、アーティアは涼しい顔で薬草や木の実などを拾い続けている。出発前にサーベラスで最もこの森に慣れていると自慢していたのは、本当らしい。

「それなら、もう少し頑張るとしようかな……っと、見えてきた。あれか」

道を遮る大きめの木を避けると光の眩さが増す。どうやらこの木が光の直進を遮っていたようだ。

 足早に光の下――勇輝がこの世界で目覚めた場所でもある神樹へと走り寄ると、二人は神樹の洞を中心として渦巻く響素の奔流を見上げた。

「なんだ、これ……この感じ……」

 以前にも感じたことのある感覚に自らの記憶を探る。この純粋な力を感じさせる不可思議な感覚は……。

「……響鳴現象?」

「それだ!」

 アーティアの言葉に疑問が明確な形となった。これは勇輝が初めてファーレシアに来た時と同じ、聖剣が放っていた力やラティス・マグナとして自身が発動する力と同じなのだ。

「だけど、なんだ? アストネリアの響鳴とは違う……響素を取り込むんじゃなくて、響素が集まってる?」

 勇輝の使うアストネリアによる響鳴現象は響素を身体に取り込むことで、身体能力を飛躍的に上昇させるための術だ。しかし、眼前の現象は取り込むというよりも、響素が自分自身の意思を持って集まっているように見える。

――ィィンン!

 透き通る鈴の音のような響きを発しながら、光の奔流はその形を徐々に変えていく。始めは柱から多面体に、続いて球体、そして小さな人間の形へ。

 人の形をした響素は次第にピントのズレた漠然としたものから鮮明な生命へと存在を変えて……。

――!

 そして、唐突に光と音が弾けた。

「――くっ!?」

 咄嗟にアーティアを腕の中に庇う。爆ぜた光は甲高い音が霧散するのと同時に拡散していった。

「……今のは一体?」

「勇輝、見て!」

 アーティアの言葉に彼女の指差す先へと目を向ける。

「え……」

 その視線の先――勇輝がこの世界を訪れた始まりの場所の前に、一人の子供が眠っていた。

 雪のように白く、しかし剣のような銀を印象付ける白銀の髪。勇輝の知る限りでは、キリストのような聖人が身につけている、清潔な布切れとしか言いようのない服に身を包み……。

 泰然と佇む神聖な雰囲気を放つ大樹。その洞から生まれ出でたように胎児のようにその身を丸くして、宙に浮いたまま。

――ィィン!

 まるで、その子供の誕生を言祝(ことほ)ぐように、響素が一際鳴り響く。

 その旋律すら持たない清らかな音はまるで、その子供が世界に生まれた産声のようだった。


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