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怪談屋  作者: 伊藤修平
徒桜の怪
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4

「世の中の全てには理屈がある」

 それが、喫茶店「すたぁげいざぁ」の上階に事務所を構える怪談屋の主、森須 八雲の口癖。

 だから俺は、なるべくその理屈ってのを追求出来るように心がけてる。偶然だとか、「そういうものなんじゃ」って言ったら、あの人はいつも鼻で笑う。そうして、決まって「阿呆め」と言う。


 この伊坂 虎太郎は生まれてから今までの二十三年の大半を何となくの成り行きで生きてきた。だけど、先生(森須さんのこと。)と出会ってからは自分でなるだけ人生の行き先を、選択の責任を取れるよう頑張ってるつもりだ。

 流されて生きて、ノリのまま選択して、散々な目にあったから。いくら俺が馬鹿でも、あれは相当効いたなぁ。そこを先生に救われたって訳よ。

 あの時、先生が居なければ今頃俺はボーリング大の肉片だった。


 それから先生に半ば強引に弟子入りして、今こうして助手として聞き込みだったり調査を請け負ってる。

 体力にだけは自信があるんだ。

 今回の案件は「枯れない桜」があるとかなんとか。

 先生はあだばな(?)とかそういう類のもんだろうけど一応調べておいてって俺に頼んでくれた。

 今は情報をくれた人の近所で聞き込みをしてる。


 そうして聞き込みをしていくとある程度情報が集まってきたんだが、なんだかおかしい。

「枯れない桜」って表現が合ってないように思うんだ。

 うーん……なんというか、咲いてる時と咲いてない時がある?っぽいんだよ。

 あと、決まって見かけられるのが夜なんだ。

 あんまり植物に詳しくはないんだけど、咲いて萎んでを繰り返す桜なんてあるのかな?

 それも、四季に関係なく見かけられてる。

 怪奇現象の類なのだろうか。

 先生はいつも「怪奇現象には必ず人の作為が付きまとう」って言ってるけど、この場合ってどんな作為なんだろう。

 四季に関係なく桜を楽しみたい……とか?

 もしそうだったらなんだか平和でいいな。


 桜は蜃気楼のようで掴みどころがなく、大きさもまちまち。ビルの背丈を越すほどの大きさになることもあるそうだ。

 それに、その影響で証言からどこに咲いてるのか特定するのは難しそうだった。だけど、大体の位置は判明した。


 とりあえず、ある程度情報も集まったことだし、先生のところに戻るか。

 とは言っても徒歩で十数分もあれば着く。今回はご近所案件で良かったな。この前の雪女騒動の時は北海道まで駆り出されたから。


 昼の14:00頃、怪談屋の事務所にたどり着いた。

「ただいま戻りましたっす」

 と、ドアを開けると、そこには中学生くらいの小柄なおさげの女の子が先生に首輪をつけられて縛られていた。

 今にも泣きそうな目でこちらを見てきたので、とりあえず先生にチョップをして縄を解いてあげた。

 先生が頭を抑えてうずくまった。ちょっと強くやりすぎたかな……。

「こんの阿呆が!話くらい聞いてから殴れ!」

 涙目で先生が怒鳴った。

「いやぁ、どんな事情であれ女子中学生に変なプレイを要求するのはダメっすよ」

「誰がこんな陰毛天パのアバタ面とそんなことをしなければならんのだ!」

 すかさず女の子が返した。

「アバタじゃない!!そばかすです!」

「同じことだろ」

「全っ然違います!!」


 とりあえず2人を宥めて事の顛末を聞くことにした。

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