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怪談屋  作者: 伊藤修平
雨師の遣い
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幕間

275:本当にあった怖い名無し 2027/6/4


 2、3年くらい前の話。今みたいに雨でジメジメした午後だったんだけど。

 久々に部活が無くって友達と一緒に帰ってたんだ。しばらくずーっと雨が降ってたからちょっと低気圧で頭が痛かったのを覚えてる。

 その時友達がさ、こんだけ雨降るのはなんかが起こる予兆かもよ、とか言って。そんな他愛ない会話しながら帰ってたんだよ。

 そしたらさ、なんか後ろから視線を感じんの。じーっと見られてる感じ。でも振り返ってもなんもいないんだよ。


 気のせいかと思って無視して家に帰ったんだけどさ、家に帰ってからやっぱり気になってきたんだよ。だって、本当に誰かにつけられてたら家がバレたってことじゃん。


 段々不安になってきて、2階にある自分の部屋からそっと家の門の方見たのね。

 そしたら、なんかいんの。

 多分、馬鹿みたいに背の高い女。雨ん中傘もささずに。なんか汚い茶色っぽいドレスを着てた。多分、泥とか土で汚れただけで、元々は真っ白なドレスだったんじゃないかな。めちゃくちゃ長くてボサボサした髪のせいで顔はよく見えなかった。けど、なんとなく視線の正体はこいつだったんだろうなって分かったよ。


 死ぬほどビビって咄嗟に窓から離れてさ。相手に見られたらどうしようって思って。とりあえず警察でも呼ぶかって部屋から廊下に出た途端



 ピンポーン



 って呼び鈴が鳴ったんだよ。

 1回。

 チャイムの音の残響が聞こえなくなって静かになったら、もう一回


 ピンポーン


 ピンポーンピンポーン



 って鳴ったのね。

 絶対アイツだ。やばいやばい。不審者でもおばけでも怖い。ってなってさ。


 その間もずーっとチャイムの音は鳴り続けてんのね。そしたらなんか、だんだん腹立ってきて。うるっせぇなってなってさ。

 とりあえず顔みてやろうって思ってインターホンのとこ向かったの。


 そしたらさ、インターホンの画面。

 なーんも写ってないんだよ。

 向かいの家の壁とか道路が見えてるだけ。

 人が写ってない。


 でもまだ鳴り続けてんの。

 ピンポーンピンポーン、ピンポーンピンポーンって。

 そん時さ、しゃがんで姿が映らないようにしてビビらせてんだ!って思って。もう一回自分の部屋に行って窓から見たんだよ。そしたらあの女普通に立ってんの。インターホンの位置から考えたら腕とか体が見えてないとおかしいんだよ。


 そこで気づいたんだけどさ。その女、だらんと脱力した感じの腕しててさ。インターホンなんて触ってないんだよ。それなのにまだチャイムは鳴ってる。いよいよこの世のもんじゃ無いって思って、布団に包まりながらガタガタ震えてよく知りもしないのに南無阿弥陀仏なんて心の中で唱えててさ。

 そしたらピタ、って止んだんだよ。チャイム。

 どっか行ったのかなって思って布団から出ようとしたらさ、頭のすぐ上の方で


 バン!


 って窓を叩く音がしたんだよ。

 あーともうーともつかない変なうめき声も聞こえてきてさ。

 やばいやばいやばい。今動いたら殺されるって、そう思ったんだよ。そんで息殺してたら眠ってたみたいで、気付いたらあたりは真っ暗。夜になってたんだよ。

 窓には何もいないし変な音もしない。


 夢だったのかなとかそう思って。とりあえず晩御飯食べようって思って起き上がったんだよ。

 そしたらさ


 ぴちょ、ぴちょって水音がする。

 どっかで水が滴ってるんだよ。

 どこかの蛇口の締めがゆるいんだなって思ってリビングに飯食いに行くがてら確認しようと思って部屋を出た。

 そんで1階に行くと音がしない。

 風呂もキッチンも全部1階にあるから、音がするならここなんだよ。

 あれー……おっかしいなぁって思ってもう一回2階にあがるとやっぱり音がする。


 こう、よく耳をすますと俺の部屋から聞こえてんのね。雨漏りならやばいと思って扉開いたらさ、頭に水滴がぽつんって落ちたんだよ。

 こう、上向いたらさ。


 いたんだよ。


 あの女。


 天井に張り付いてさ。


 多分、家族の誰かが帰って来た時に一緒に入って来たんだろうね。窓の外に姿が無かったのも、変な音が止んでたのも、中に入ったからだったんだよ。


 そっから俺の記憶は無い。

 気付いたら病院だった。

 家から1、2キロ離れた場所で倒れてたみたいでさ。それも、自分の体をこう、引きずりながら移動してたみたいで背中の肉がボロボロになってたんだよ。


 もしかしたら引きずられてたのかもな。

 あの女に。


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