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怪談屋  作者: 伊藤修平
雨師の遣い
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プロローグ

「ねぇ、知ってる?朝(あさ)凪(なぎ)」

 いつも通り昼休みに、図書室で適当に選んだ本を読みながら暇を潰していると、クラスメイトの太田が声を掛けてきた。時折、僕がこうしていると、向かいの席に座って話しかけて来る。

 特に大切な用があるとかではなく、他愛ない会話を気の向くままに話すのだ。

「ミミズっているじゃん」

 本から目を離し、彼女の方を向いた僕に言った。彼女は指をくねらせて、ミミズに似せて動かしている。

「あれってさ、たまーに地面の上で干からびてるじゃん?干からびる様な場所に出てくんなよ~って思わない?」

 特に思わなかったが、話に乗ってあげようと思って「まぁ」と答える。

 そんな僕の方に、指をミミズの様にうねうねと動かしたまま、伸ばしてくる。

「あれってさ、実は雨上がりによく見られるんだって。って言うのも、ミミズっていつも土の中にいるじゃん?雨が降るとさ、水が土に染み込んで溺れるんだって」

 とん、と僕の胸に指を到達させて言う。

「溺れないように逃げたらさ、アスファルトばっかの現代じゃ、雨が上がっても地面に戻れないんだ。だから、太陽に炙られて干からびるんだってさ」

「上は洪水下は大火事の真逆だね」

 と僕は返した。

「五右衛門(ごえもん)風呂じゃん!」

 と言って軽く笑った後、彼女は


 なんか悲しいよね。


 なんて言った。


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