第二章 深淵の怒り
日が暮れると、暁の風は港の黒い水面に揺れる静かな影だった。ケールはタラップを上り、ブーツの下のわずかな揺れを感じた。
―準備は整ったか?
―ああ ―マルクスが答えた。―飲み過ぎた連中もいたが、出発に必要なものはすべて積み込んだ。
―出発だ ―ケールが命じた。―夜のうちに進む間、少し休ませろ。二、三日は問題ない。
最初の四十八時間は平和という名の蜃気楼だった。
だが二日目の夜、海がその代償を求めた。激しい衝撃が暁の風を揺さぶり、カップや道具が床に転がった。
―全員備えろ! ―ケールは船が傾く中、甲板に駆け上がりながら叫んだ。―何かが暁の風にぶつかっている! 手をこまねいていたら大事になるぞ!
―こんなに早く来るのか? ―マルクスが綱にしがみつきながら聞いた。
―そうらしいが、備えには自信がある。
新入りの何人かがパニックに陥った。砲が闇の海に向かってでたらめに放たれる轟音が響いた。
ケールは戦慄した。爆発は水面下の巨大な影を怒らせ、船体をさらに激しく叩かせるだけだった。
―馬鹿ども! 砲を撃つなと言っただろう! ―ケールは騒音の上から怒鳴った。―買ったあれを使え! あれはただの飾りじゃないんだ!
―はい、船長! しかし、あのバリスタの使い方を知らない者が多いのです!
ケールは白髪の男を探した。熟練の目で波を見つめている。
―だから老水夫を連れてきたんだ! あの人にやり方を教えてもらえ!
壮絶な戦いだった。巨大なバリスタが弦の張力で軋み、放たれた矢が海と巨大魚の肉を貫いた。
永遠に続くかと思われた格闘の末、怪物は動きを止めた。ずぶ濡れで疲弊した乗組員たちが月明かりの下で祝い始めた。だがその歓喜は、見張り台からの叫びに喉元で凍りついた。
―船長!……五十くらい……いや……百はいます!
ケールは海水とは無関係の寒気を感じた。
―何だと! こんなに近くにこれほどの数がいるなんて、聞いていないぞ!
老水夫が油灯に照らされた顔を向けた。
―この時期にあいつらがいる海域を行くのは良くないと言っただろう。それに、バリスタ一台では足りない。
―面舵いっぱい! ―ケールが声を張り上げた。―全速力だ!
暁の風は必死の操船で反転し、あらゆる方向から木材を叩く影から逃げた。奇跡的に、肋材は持ちこたえた。
―あらゆる海で最速だというのに、危なかったな ―一人の水夫が危機を脱してから言った。
―そんなことを言うな ―別の者が小声で答えた。―ケールが怒るぞ。
彼らは知られた海岸――断崖に守られた入江――に身を隠し、被害を確認した。暁の風は傷ついていた。板は砕け、浸水もあった。
―あの老水夫の言葉を甘く見ていた ―ケールがマルクスに打ち明けた。―海の神に感謝だ。暁の風がかつてないほどの速さで造られていたおかげだ。
マルクスが乾いた笑いを漏らした。
―いい冗談だ ―マルクスは声を上げて笑った。―お前が神を信じていないことぐらい知っている。
―その通りだ ―ケールは微笑んだが、視線は船体の亀裂に留まったままだった。―だがこれで出発が少し遅れる。
―災難には笑って向き合うしかない。暁の風を改良しなければ。




