第7話 新たなスキル
ドッペルウォリアーの輪郭が、ぐにゃりと崩れた。 腕が太くなる。肌が緑色に染まる。
身体が一気に膨れ上がる。
「ホブゴブリンか…」
棍棒が振り下ろされた。地面が砕ける。
「ルナ、後ろに回り込め!フィン、足元に風を!」
「ワウッ!」
「ピィッ!」
ルナが背後に回り、フィンの風が足元をすくう。
ホブゴブリンがよろめいた。
ベルは、その動きを見て眉を寄せた。
(…おかしい)
棍棒を振るたびに、足運びが半歩遅れる。
本物のホブゴブリンなら、踏み込みと一緒に体重が乗るはずだ。 図鑑にあった一文を思い出す。
――ドッペルは、姿を写せても、動きまでは完全に写せない。
「大振りのあと、足が遅れる!そこを狙え!」
ルナの爪が脚を裂き、とどめの一撃が胸に入った。 ホブゴブリンがどさりと倒れた。
【レベルアップ Lv6 → Lv7】
「やった……」
ベルが息をついた、そのときだった。
倒れた巨体が再びぐにゃりと歪んだ。
「また変わるのか!?」
皮膚がさらに厚くなり、額に太い角が生える。
森を揺らす咆哮。
「グオオオオオッ!」
「嘘だろ?……ゴブリンキングか?」
声がかすれた。
Cランクの冒険者が、パーティで挑む相手だ。
(でも本物じゃないんだ。さっきと同じで癖があるはず)
ベルは自分に言い聞かせた。
ゴブリンキングが棍棒を振るう。
ルナが懐へ入り爪を走らせる。浅い。
フィンの風の刃が足元を切る。それも浅い。
「効いていないのか…」
キングの動きが、少しずつ速くなる。
「ルナ、下がれ!」
横薙ぎの一撃が、ルナを吹き飛ばした。
「ルナッ!」
ベルが駆け寄ろうとした瞬間、巨大な影が頭上を覆った。 棍棒が、ベルめがけて振り下ろされる。
(間に合わない)
――そのときだった。
視界に、新しい文字が浮かんだ。
【リンク対象が二体に達しました】
【派生スキルを解放:ウェポンチェンジ】
「……ウェポンチェンジ?」
説明がすぐに続いた。
【リンクした魔物を武器へ変える】
【武器科した魔物はダメージを受けない】
【使用者のMPを消費し続ける】
人間のスキルは、生まれたときに決まっている。
新しいスキルが増えるなんて、聞いたことがない。 けれど、ルナが仲間になり、リンクエッジが生まれた。そして今、フィンが仲間になった。
(……リンカーは仲間が増えるほど力も増すのか?)
迷っている時間はなかった。
「ルナ!力を貸してくれ!」
倒れていたルナが顔を上げ、目が合う。
「ウェポンチェンジ、ルナ!」
光がルナを包んでいく。
脚が、胴が、尻尾が、三本の鋭い爪に変わり、 光となったルナが、ベルの両腕に吸い込まれた。
ガキンッ!
両手に、獣の爪を思わせる銀色の武器が装着された。
次の瞬間、棍棒が振り下ろされた。
ベルは、爪で受け止めた。
ガキィィィンッ!
足が、地面にめり込み、 腕が軋む。
けれど――止まった。
「……受けられた!」
だが、キングの口元が、にやりと歪んだ。
もう一方の腕が、ベルの頭上に持ち上がっていた。




